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大学卒業前に一人己の人生を省みる④就職活動

 出版業界への就活を志す現役就活生にも、そうでない就活生にも全く役立たない就職活動体験記になっています。

「ご縁」が大切だと聞いたので、就活中に出雲大社に行った。

大学3年生の12月まで

 夏、メールで案内が来たリクナビだかマイナビだかの合同説明会に数回だけ顔を出した。顔を出すと言ってもオンラインなので配信された映像を見るだけだった。今まで知らない会社の側面を見られたのでそれだけで楽しかったが、サークルやらバイトやらゼミやらが忙しく、就職活動に必要なほぼ全てのことをなおざりにしたまま年を越した。「就職活動に必要なほぼ全てのこと」とは、例えば以下のことだ。

  • 志望業界の決定

  • 自己分析

  • 就職活動の軸

  • ESの基本事項(自己PR、ガクチカ)の下書き

  • 対面(またはそれに準ずる形態)でのインターンの申し込み

  • 各企業へのエントリー    

  • OB訪問  等々…

 アホだ。2022年の年明けは、これらを爆速で仕上げるところから始まった。
 正確に言うと、冬のインターンは一社だけ出していた。それは「テレビ東京」だ。これは番組づくりを学びたい・会社について知りたいとか言うエンタメ志望就活生のような尊い動機からではなく、当時どハマりしていた佐久間さん(佐久間宣行P)と直接話ができるのではないか? という極めて単純・浅はかな動機からであった。(インターンでは自分達で番組の企画を立ち上げ、現役テレビマンに講評してもらえる、というような内容だったはずだ) というか、そもそもこの時点で佐久間さんはテレビ東京を退社していたのだから会えるわけもない。
 書類は奇跡的に通過するものの、面接で当然落選。ただ、志望度が高いということもなく(そもそも1社しか出していないしテレビ局を志望していたわけでもないのだから当然といえば当然である)、ここでは特に落ち込まず。この時、インターンに際しての提出書類で「番組の企画」を考えさせられたことで、「エンタメ系の企業は面白そう」という認識だけ抱いた。

大学3年生の1〜3月

 右も左もわからないので、とりあえず片っ端から「就活セミナー」に参加し続けた。参加すると言ってもオンラインなので配信された映像を見るだけだった。「業界分析のコツ!」とか「自己分析のやり方!」とか、あの類のヤツだ。本当に何も知らなかったので、今思えば最初の方に受けたものは受けてよかったと素直に思う。ただ、講師や人材企業はあくまで儲けるためにこうした仕事をやっているので過信は禁物、たまに「へぇ」と思える知識に出会えたらラッキー、くらいの期待をするのがちょうど良い。実際自分も途中からそんな心持ちで受けていた。
 並行して、ESで大体どこでも聞かれる定番の質問への回答を作り始めた。ここは自分一人ではどうすることもできなかったので、中学・高校時代の同級生やキャリアセンターの人に添削をお願いした。週に2、3回添削してもらって、自己PR、ガクチカ、志望動機のテンプレを150字、300字、450字、600字等字数にバリュエーションをつけて作っていった。20~21歳の人間は社会にとってみればまだまだ若輩者で、ここで周りの人を頼ることの大切さを学ぶ。(その節は、皆様本当にお世話になりました。)
 年末のテレ東落選を契機に、エンタメ企業が気になり始めていたので、思いつく限りのエンタメ企業に片っ端からエントリーし始めた。映画、音楽、テレビ、出版。「人気企業だし人いっぱいとってんだろー」くらいの認識だった。(大間違い)ここら辺で、ひとまず志望業界を「エンタメ系」とだけ決めた。この時点では具体的な企業を決められずにいたので、特に業界も絞らずとにかくいろいろな企業の説明会動画を視聴しまくった。

vs出版社①

 エンタメ系の中で最も選考が早いのはテレビ局だが、選考の時期は二極化している。TBSなんかは年明け前に選考を締め切っている一方、NHKは経団連のルールを遵守するので6月にならないと選考が始まらない。年明けから就活を始めたので、当然締切の遅い局を受けることになった。
 こうした流れから、最初に受けたのは出版社だった。その中でもいわゆる三大出版社(集英社・小学館・講談社)は2月上旬に早々に選考を締め切り、3月には内々定が出る。ここが最初の山だ。戦績を簡潔にまとめると、

  • 小学館 →  ES提出せず(1社のESに書く内容が多すぎて集英社に全振りした

  • 集英社 →  1次面接落選

  • 講談社 →  3次面接落選

 講談社に関しては、運の要素も大きかったが役員面接まで進んだ。ただ、2次面接でびっくりするほど話が盛り上がり、そこで調子に乗ったことで役員面接において文字通り「爆死」した。雰囲気に飲まれ志望動機やら自己PRやらの基本を蔑ろにし、うわべだけのアイデアやら個性(笑)やらを押し出そうとして失敗したのは、今思えば3年前の浪人時代と何ら変わらぬ轍を踏んでいたことになる。当時その事実に気づかなかったことを踏まえれば、こうして振り返って反省することは本当に大切だ。身をもって学んだ。基本が一番大事。
 流石に講談社に落ちたことはいろいろな意味でこたえたが、エンタメの中でも出版が特に面白そうだと思い始め、この落選を契機に出版業界が第一志望になった。企業研究で漫画やら雑誌やら読めるし。変に選考を進んだことで、「出版に全く向いていないわけではないのでは」、という根拠のない自信も芽生えてしまった。そして何より、自粛期間中に一番時間を割いていたアニメやらドラマやら、そしてもともと好きだった音楽の話もできるので、「就活対策」の時間が少なかった自分でも比較的有利に戦えると踏んだ。落ちたけど。(むしろ出版社の面接では本以外の話をする時間が驚くほど長いので、本だけ読んでると苦戦する)ここから就活終了まで、漫画喫茶と国会図書館と大学と自宅を行ったり来たりの生活を送る。

大学4年生の4〜6月

vsサイゼリヤ

 第一志望を出版業界に決めて、その選考を調べ始めると、採用人数があまりにも少ないと言う現実に直面する(業界最大手でも20人強)。そこで必要になるのが、言い方はアレだが第二志望となる企業だ。とはいえ、第一志望の特性上進む可能性は十二分にある。悩んだ。
 ここら辺で、自分は「同業他社を片っ端から受けていく」ことに向いていないことに気づく。時間を考えても、能力においても、全く知らない企業と全く知らない企業を比べて云々、というのがどうしても自分にはできないと思った。それよりかは、自分が本当に好きだったりいいと思った一社について喋る方が案外うまくいくことを、先の出版社の選考で体感した。落ちたけど。こうして、「量より質」戦法をとることにした。
 そんな中、選考があった日もそうでない日も外に出たら何かしらを食べて家に帰る生活をしていたが、大体立ち寄っていたのがサイゼリヤだった。なかでも、「チーズたっぷりミラノ風ドリア」と「エスカルゴのオーブン焼き」は特別に好きだ。ドチャクソ美味い。後者の比較的濃いめの味付けはたまらない。ドリアにはホットソース(辛いやつ)をたっぷりかけて、ちょっといいことがあった日にはエスカルゴにプチフォッカをつけて、デカンタで流し込めば日頃の小さな悩みは何とかなる。
 と、他の外食店に比べてサイゼリヤであれば詳しいメニューを知っていて、自分なりの愛着やら思いもあって、提供時間やらメニューについて改善案を要求されたとしても、何かしらを思いつけるのではないか?と思い立った。そこで、次に飲食業界、ではなくサイゼリヤだけを受けることにした。結果内々定。メンターのKさんが本当に親切でお世話になった。内定者の食事会に、大好きなホットソースの考案者の方がいて感激した。メニューは相変わらず美味しかった。

 ちなみに、現在のおすすめメニューは「チキンのシーザーサラダ(SA06)」、「バッファローモッツァレラ(AA20)」、「チーズたっぷりミラノ風ドリア(DG02)」、「たっぷりペコリーノチーズのポモドーロ(PA23)」です。「ドリンクバー(DB01)」をつけるとさらに贅沢に。ぜひオリジナルのホットソースも一緒に召し上がってください。

vsイオン

 先述のサイゼリヤの延長線上で、「家の近くのイオンモールにはよく行っていたし、イオンのプライベートブランドについてならある程度名前は知っている」と思い受ける。面接では「タスマニアビーフ」というイオンの肉ブランドについて熱弁。それだけでは飽き足らず、試食コーナーを早く復活させてくれと頼み込む。「プライベートブランドの鍋つゆ、どうしたら販売数を伸ばせるか?」というテーマのグループディスカッションで「コタツを店頭に出して鍋パイベントをする」という頓珍漢なアイデアを出して面接官から失笑されるも、結果内々定。「出版業界が第一志望です」と言って受からせてくれた懐の深い企業である。(「こいつ出版は受かんねえだろwww」と思われていた可能性も十分ありうる。)

 先日ニュースを見ていたら、イオンリテールが追徴課税されたというニュースが流れていた。ドンマイ。

vs出版社②

 こうしているうちに、他の出版社の選考も次々訪れる。当初の基本線は「マンガ」と「旅行」、その二点に関する書籍を出している出版社にESを出した。あと、そうした内容に関する書籍(新書とか)を出せる出版社も候補に入れた。
 出版社だけは「業界」じゃねーか! という指摘もありうるが、これにはいくつか理由がある。

  1. 他業界に比べ、会社ごとの強み・弱みがある程度はっきりしていたから

  2. 本棚を見ていたらいろんな出版社の本があったから(それによって、ある会社の面接で他社と比較して作品や会社のことを話せれば、説得力が増すと思ったから)

  3. 最も苦手なOB訪問をする必要が全くなかったから

  4. 出版社のESを書くのが楽しかったから

 一番の理由は4で、結局自分の好きなことができればよかったのかもしれない。

 面接練習や対策もほとんど出来ずだったので、当たって砕けろ状態の面接が続いたが、それでも徐々にコツを掴んできた。結果を簡単にまとめると

  • 中央公論新社 →  2次面接落選

  • 芳文社 →  2次面接辞退

  • 秋田書店 →  1次面接辞退

 (落選ではなく辞退なのは、その選考の前に別の出版社から内定が出たため。)

 芳文社の一次面接を通過したのは、個人的に就活における1番の山だったと思う。数百人が出すES、そしてその後の筆記、1次面接を通過できるのは一桁しかいないらしい。これは小さな自慢だ。ありがとう、芳文社。

 こうして6月、気がつけば就活は終わった。
 出版業界は斜陽だし、自分もそうだと思うが、当事者が危機意識を持っていればまだ何とかなるのかもしれない。(厳しいかもしれないが…)漫画なんかはその最たる例だと思う。逆に言えば、ベンチャーだろうと大企業だろうと、潰れる時は潰れる。

「就職活動」の反省

 自分は結局最初から最後まで同じ志望業界の人間が見つからず独りだった。それもあり、他の就活生がどういうやり方やらスケジュールで就職活動をこなしているか殆ど把握できなかった。(知ろうとしていなかった面もあるが。)それ故割かなくてもいい労力を割き、折らなくていい無駄骨を折り、つけなくていい傷を心につけた。省みるとすれば、同学年で似たような業界を志望している友人を早くに見つけておくべきだった。大いに反省。あと、流石に就活を始めたのが遅かった。ESを出したのは10社くらいしかなかったと思う。エントリーは100近くしていたと思うが、出さなかったのではなく、ほとんど時間がなさすぎて出せなかった。計画的に出せていたらもっと違う就職活動になっていたのかもしれない。大いに反省。
 ただ、頼らせてもらえた人がいたことは本当にありがたかった。重ね重ね、本当にありがとうございました。
 入社後は旅行雑誌を作るかもしれないということで、ちょこちょこ旅行に出掛けています。おすすめの観光スポットある方は教えてください。是非。
 
 これを読んでいる就活真っ只中の人。こんなノート読んでないで就活対策しろ!と言いたいが俺はそんな真面目な就活生じゃなかったので何も言えない。就活は何かと大変な場面も多いです。人によっては文字通り人生が決まります。ただ、悪いことや悪い出会いだけでもないと思うので不安7割、希望3割くらいで構えてみればいいんではないでしょうか。根拠のない情報に特に踊らされやすくなるので注意。顔・名前の見えない意見はとりあえず話半分で流しましょう。ネット掲示板とかLINEのグループチャット?やらは見るな!
 とはいえ、どんな企業を受ける時でも、自分が何をしたいか、は常に考えておいた方がいいと思います。当たり前だけど。商品開発でもなんでも、それがあればひとまず話は聞いてもらえます。頑張れ。


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