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Rの軌跡 第十二話「幽霊の奏でる音」

大盛況に終わった「もとお」のライブ。中学の体育館とは違って観客も自分たちのノリたいように乗る。先生の邪魔は入らない。視聴覚室という閉じた空間がライブハウスを彷彿とさせる(窓から光が差し込んでますけど)

高校に入って最初のライブは大成功に終わった。ただ少し気になったのは視聴覚室の隅にいたちょっと派手な集団である。明らかにほかの人達とは空気が違う。おそらく上級生、バンドをやってる。

:おい、あそこにいる人らってなんなん。

ヒョロガリモジャ頭:ん?ああ、あれうちの幽霊だよ。

:そうか。この高校にもそういうトイレの花子さん的なものがあるんだな。確かに時々見える力が俺にある事は薄々気が付いていたのだがな。

ヒョロガリモジャ頭:は?何言うてんねん。軽音部の部員だよ。籍だけあって出てこない幽霊部員。

:あ、そういうこと。どうりて奇麗なおみ足があると思った。

ヒョロガリモジャ頭:幽霊に足がないっていつの時代の話だよ。

:そこ突っ込むとこ?

軽音部の幽霊部員(2,3年生)は特に何も言わずに我々の横を通り過ぎて行った。

「ともお」のライブの後、ヒョロガリモジャ頭のガールズバンド「blossom」が登場し、そのあとにもいくつかバンドが演奏したが、我々に勝てるバンドはなかった。視聴覚室の観客も次第に減っていき、演者の方が多くなってきた。

:つまんねーなー。もっとこう骨のあるバンドはおらんのか。

T君:まあ、見ててみ。えらいのが出てくるで。

:ん?そうなん。

そして次のバンドが機材の転換を始めるとほぼ同時に、視聴覚室には怒涛の人だかりが押し寄せた。

さっき横を通り過ぎた軽音楽部幽霊部員のバンドだった。

:え?でるん?あの人らでるん?

ヒョロガリモジャ頭:そりゃ出るでしょ。軽音部に籍あるし。

:え?会議とか出てこないじゃん。普段活動してないのにライブだけってずるない?

ヒョロガリモジャ頭:バンドマンがそんな形式ばった考え方してたら大成せーへんぞ。

お前が言うなや。

そんなやり取りをしていると幽霊部員達のステージが始まった。それは、、それは俺の自信を見事に打ち砕き、実力の違いを見せつけるには十二分の演奏とパフォーマンスだった。

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なんせステージが狭く感じる。さっきまで同じステージに立っていた。人数も同じなのに、なんであいつらのステージは狭く感じるんだ。観客のあおりもうまい。無駄がない。ポイントを心得ている。

冷静なんだ。表情は感情的だけど耳は冷静なんだ。

T君:ここだけじゃなくて外のライブハウスにも出てるみたいやな。

:外?自分たちでチケット売ってってこと?

T君:ああ。俺もここまでとは思わんかったが、えらいバケモンやで。

演奏が終わり、幽霊部員のバンドが俺たちの横を通り過ぎる。

幽霊部員のバンドボーカル:お前ら、ええ演奏やったで。

T君:先輩こそ。すごかったっす。

幽霊部員のバンドギター:よかったら今度一緒にライブやろうぜ。

T君:あざっす、考えときます。

幽霊部員のバンドボーカル:はは、考えとくか。楽しみにしてるで。

僕はT君の隣で茫然としていた。自分たちが出している音を10としたら、幽霊部員のバンドは50、いや100ぐらいに感じる。何だあの音圧。まとまりの良さ。同じステージなのに。楽器がいいのか?

T君:先輩たちは周りの音をよう聴いとる。

:周りの音?それなら俺たちも、、

T君:聴いてるだけじゃなくて理解してるんや。

:理解?なにを?

T君:なぜその歌詞なのか、なぜその音なのか。なぜそのフレーズなのか。すべてに理屈があって、それを最大限に引き出すように音楽は作られてるんや。

:それはなんとなくわかるけど。

T君:あいつらはそれを自分たちなりにちゃんと理解してるんや。せやから俺らよりもいい音が出せるんや。

:で、でも理解だけでそんなにちがうもんなんか。。

ヒョロガリモジャ頭:F君、俺らと始めてジャムったときギターの音調整してたやろ?あれとおんなじやねん。

俺とT君:、、、お前には言われたくない。

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