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グリム童話ATM (毎週ショートショートnote)

「うわっ!」

お金を取り出そうとした手に、硬く冷たいものが触れた。赤いずきんをかぶった小柄な女性が駆け寄ってくる。

「お客様、お怪我はありませんか。」
「大丈夫です。」
「申し訳ありません。少々お待ちください。
 …ぴったりなら落とさないでしょ。
 ま、私も狼に食べられるしな…。」

女性はガラスの靴を取り出し、モニターを数箇所触り、デスクへ戻って靴を梱包し始めた。
ATMでも係員が常駐するのは、このためだ。特に夜間や休日は誤作動が増える。

「わー!お菓子の家!」
「え、金髪長っ!」

そんな声に、ここでは優秀且つ善良な、様々な人間や動物が対応する。

誤作動も、そのお詫びも運次第。

「お待たせいたしました。
 城へ向かう落とし主の代わりに、毒林檎を食べた者からです。いかがですか。」

赤いずきんの女性の手には引き出そうとしたお金、横には女性より小柄な7人の男性たち。

「何でもお申し付けください。」

私は明日の仕事内容を男性たちに伝え、帰省を前倒しすることに決めた。

(418字)

たらはかにさんの企画、毎週ショートショートnote 参加記事です。

題名を知っているグリム童話が少なすぎたのに加え
読んだはずなのに内容をすっかり忘れていたものもあり…。
各種童話を読みなおしたいです。
こうして、リアル積読本に加え、脳内積読本まで増えてまいります…。

日々の買い物はキャッシュレス決済が大半となりましたが
それ故か、現金を手渡しで頂くときに、一層ありがたみを感じるようになりました。

ちなみに、何歳のときのものからか不明ですが
お年玉やお小遣い等の入っていたポチ袋を
捨てずに取ってあります。。。

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