てるてる坊主のラブレター
赤い傘に青い紫陽花。
ペンの替芯を買いに来て、これからの季節にぴったりなレターセットを見つけた。
手書きの機会自体めっきり減ってしまったが、ギフトやファンレター用と言い訳をしては、つい買ってしまう。
夕飯の支度をしながら、誰かに書こうかな…と考えていると、実織が帰って来た。
「わぁ!かわいい!」
テーブルに広げた便箋を早速見つけたようだ。
「ねえ、おてがみかきたい!」
「誰に?」
「てるてるぼうずさん!」
空き教室に飾られたてるてる坊主に手紙を書くと、返事がくる。
同じクラスの子から、そう聞いたらしい。
「てるてる坊主さんが喜んでくれそうなことがいいね。」
「そうする!」
数日後。遠足の翌日の朝だった。
「『きって』ある?」
あれから何度か実織は手紙を書いていた。
今日は違う人宛だろうか。
「どこへ送るの?」
「てるてるぼうずさん。
今日からここへ送らないと。」
噂を教えてくれた子は、遠足後に引っ越すと言っていた。
宛名は、私の初恋相手と同じだった。
(410字)
※当記事は、下記2企画への参加記事です。