沖縄に自生する薬草植物や歴史とシャーマニズムのはなし〜後編〜
前編に引き続き、後編へ。
今回は話の重きを”沖縄”において話を進めていく。
沖縄での植物の生態系や歴史、植物や薬草がどのように人々の生活に彩りをつけたのかまとめている。
最後には総括として個人的に感じた植物を通じての共通点をゆっくり語っていこうと思う。
༄Ch3 沖縄の植物たち
沖縄は日本でありながらも特殊な気候分布に属している。
日本本土は温暖湿潤気候で北海道は亜寒帯気候、それに対して沖縄は亜熱帯気候である。本土から内地に来るとまるで別に国のように感じる。(歴史上、かつて沖縄は独立国だった。)
気候が違うと本土と内地の自生している植物も全くと言っていいほど違う。
個人的に感じるのは沖縄の雰囲気はどこかしらタイやインドネシアなどの東南アジアに近い雰囲気を持っている。これは気候や生態系に共通点がある為か食生活、野菜、果物、野草の加工の仕方も東南アジア諸国と似ているところが多々あるのだ。
沖縄の薬草文化
月桃
そんな自然豊かな土地では先人たちは自然を奏で、自然を活用していた。
中でも薬草を用いた治療や健康法が伝統民俗文化として今でも残っている。うちなんちゅーと薬草の関係は実に面白く身近に潜んでおり、代表的に旧暦の行事では”ムーチー”と呼ばれる月桃の葉に包んで蒸しあげた餅を食べる。
月桃の花、葉はお茶や食品等に利用でき、茎も乾燥させれば強度の高い紐になる。月桃の茎を使ったかごやコースターなどもある。
よもぎ(フーチバー)
フーチバー(よもぎ)も雑草のようにあちらこちら生えていて、JAなどのファーマーズマーケットには必ずと言っていいほど置いている。よもぎでも本土では目にかかれないリュウキュウヨモギ(ハママーチ)も地元民から愛されている薬草の一種だ。
ヨモギには様々な効能があり、日本だけでなく世界各地で民間薬として現代でも使用され続けている。
ヨモギの効能として抗炎症・デトックス・抗酸化・がん予防などに効くと言われていて内服薬として煎じて服用したり、切り傷や虫刺されには生の葉の汁を患部に塗ったりする。ハーブ全体に使える加工の仕方として『チンキ』、『オイル』などに
する方法がある。
モリンガ
モリンガは一度耳にしたことがある人もいるのではないだろうか?モリンガはインド原産の植物で世界三代医学の一つであるアーユルヴェーダでは300以上の効能があると言われているスーパーフードだ。効能の例を挙げるとざっくりこのようになる。
この生命の木と呼ばれる植物も沖縄の住宅街や道路などに生息しており、沖縄県産のモリンガ茶や化粧品など幅広く活用されている。
ワスレグサ(クワンソウ)
琉球王朝から親しまれた島野菜。
花や葉を食すことができ、ワスレクサの主成分であるオキシピナタニンが有効成分。
その効能として抗うつ・安眠・リラックスに効果があるとされている。
睡眠時に”グリシン”と呼ばれているアミノ酸を摂取することで体温を下げ睡眠の質が向上する研究結果が出ているのだが、このグリシンの100倍以上の効果がオキシピナタニンにはあると言われている。
まさに、沖縄の奇跡のハーブと言われているだけある。
༄Ch4 薬草、植物共に歩む歴史
沖縄では古来から薬草が親しまれている。知識を身につけ、外を出て歩けばほとんどの植物が薬草であることに気付かされる。
古代から姿を変えずに今でも生息している動植物を”生きてる化石”と表現されるが
”ソテツ”や”ヒカゲヘゴ”がその類だ。
ソテツ
ソテツは恐竜が居た1億年前以上前から地球に自生した植物だといわれている。
又、ジュラ期後期(1億5500年前)の化石には葉の形が現在と変わらぬ形で発見された。
沖縄本島では住宅街や道の至る所に生息してる姿を見れる。
一方、奄美大島では食糧難に陥った際にソテツの実を毒抜きして食し、島民の命を繋いだと言われている。しかし、ソテツにはサイカシン、β-Nメチルアミノ-L-アラニンなどの有毒成分を有していることから中毒に陥った人も多数いたことからソテツ地獄と呼ばれる経済恐慌が巻き起こったほどであった。
そんな中、現在でも文化を守り続け奄美大島では丁寧に毒抜きしたソテツを食している。
ヒカゲヘゴ
筆者が沖縄の中での植物でもっとも好きな植物。山道やちょっとした茂みに佇むその姿はいつも目を奪われる。
ヒカゲヘゴも”生きた化石”とも呼ばれ、1億年前から現在までその姿を変えていない。
ヒカゲヘゴの新芽(ゼンマイ)は食すことができ、茹でて灰汁抜きをして主に酢の物や天ぷらにする。大根のような食感になることから特に八重山諸島では欠かせない食材になっているそうだ。
〜名護の沖縄武田薬草園跡とコカノキ〜
名護市にある沖縄武田薬草園跡。
戦後まで一面コカが栽培された”コカ畑”であった。
麻酔薬の原料であるコカインのために、東京ドーム10個分の土地を使用していたという。
コカノキ
前編にも記述している通り、戦時中は薬草が薬の原料になっていることから軍事物資としての扱いだった。コカノキの主成分でアルカロイドの一種であるコカインは麻薬に使われるイメージが刷り込まれているが、中枢神経に強い興奮作用をもたらすことから麻酔薬としても使われている。その為、人類にとって非常に重要な薬用植物である。
南米の高山地域では高山病予防にコカの葉をガムのように噛む習慣がある。
薬草園が営まれていた当時は戦時下であった為、米軍の指示によりコカの増産を求められていた。その規模は想像以上のもので18万本以上のコカノキが栽培されていたという。コカのおかげで大儲けした軍と武田製薬なのだが、この薬草園がルーツで武田製薬が日本有数の製薬会社になったのではないかと想定している説もある。
だが、戦況の悪化に従ってコカ畑も攻撃され生産ができなくなってしまった。
༄最後に
こういった歴史を踏まえると製薬会社というものは一種の産業ビジネスであり、近年発生した疫病で世界の流れが急速に変わり、様々な事に気づいた人も少なからずいるだろう。
薬というものは本来自然のものから摂取するのが一番体に優しく、かつ効果もあるはずだ。政府や国という組織に耳を傾けるのでなく、先人たちが残した知恵で体を労われば良いのではないか。
色んな情報が錯乱しまいがちな今世だが、科学や理論ばかりを信じる”科学教”になるのではなく、体の中にある内なる声に耳を傾けることも重要なのではないかと個人的に考えている。
筆者の好奇心だけで書き上げた前編と後編に渡るnote。
まだまだ植物は奥深く、まだ表面の上澄みしか知らないと思っている。
最後までご拝読頂きありがとうございました。