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カンナビノイド大百科

*はじめに*

今回はカンナビノイド、すなわち大麻草についてまとめてみた。
カンナビノイドに含まれている104種類の成分の内、代表的な成分とその作用について、医療用と娯楽用の種類、なくてはならない歴史についても掘っていく。
そんなカンナビノイド大百科を制作してみた。
膨大な量になることを前提にして目次ごとにトピックを分けているので自分の好きなトピックのみ楽しむのも良いだろう。
筆者の好奇心を込めて楽しみながら執筆に取り組んだのを感じてもらえると尚、嬉しい。
(本記事はあくまでも様々な研究や歴史的、宗教的背景を元にまとめ上げたものであり、宗教や大麻を勧めている事ではないことを冒頭に理解した上でご一読いただきたい。)


*大麻草の生態*

大麻 学名:Cannabis sativa
雌雄異株
でアサ科アサ属の1年生草本植物、雌雄異株である。
中央アジア、ヒマラヤ山脈の北西山脈地帯が原産地といわれていて、近年の研究によるとチベット高原の青海湖周辺が原産であることが推定され、次第に世界各国へと広がったとされている。

アサは約4ヶ月弱で2.5m以上成長し、生育環境により更に高く成長する。
環境順応性が非常に高く、熱帯から寒冷地まで世界中のほとんどに生息しており、花、葉、皮、茎、種子、植物全ての部分を使用することができる。

雌花と雄花で成分の濃度が異なり、大麻製品で主に使用されているのは雌花で雄花は雌花に比べ成分の質が落ちる為、雑草と同じような扱いをされている。
インドではこの雄花を利用したバング(葉をすりつぶした団子)が娯楽用で普及している。

引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Cannabis_sativa
 雌花
引用:https://lotusnutrients.com/blogs/news/male-cannabis-plant 
雄花


引用:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/インドにおける大麻文化 インドのバングショップ。

*大麻の歴史*

・縄文時代〜3000年前・
人類が大麻草栽培していたのは一万年以上前の旧石器時代まで遡る。
日本でも縄文時代初期にの遺跡から麻の実が発見されており、この頃からすでに麻と人類が共存していることがわかる。
紀元前2700年前の古代中国では神農の教えを伝える本草書の『神農本草経』で薬用として大麻が記述されている。
ウイグル自治区では占いや精神作用の用途で大量に保管された大麻が発見されたり、ヒマラヤで栄えた密教でも瞑想に大麻を用いている。

・日本での麻歴史・
かつて、日本と麻は深い繋がりを持っている。日本古来の宗教”神道”にヒントがある。スピリチュアルや宗教のイメージはよろしいものではない認識が近代の日本社会に定着しているが、第二次世界大戦前までは正反対の世界だった。

   日本=精神世界である。と筆者は考える。

引用:https://www.iseasa.com/hemp 
 麻の加工過程の一つ、床ぶせ・床まわしの様子

そんな神道の最高峰である伊勢神宮のしめ縄は全て麻から作られている。
巫女さんの髪を纏める紐も精麻でできていたり(髪の毛は神が宿るとして最も神聖な部分)、日本の神事にはが必要不可欠なのだ。
1950年代までは約2〜4万人の人々が大麻を様々な用途で栽培していたが、戦後のGHQの政策により60年代には1万人を下回り、2021年では27人まで減少した。
現在、麻農家の高齢化による後継者不足が深刻な問題といるのだが、その背景には大麻栽培に関する大麻取締法、免許取得、高度な技術が必要な事から担い手の確保が難しくなっている現状に直面している。特に政府が定める栽培に関するルールの壁が高いことも理由の一つに挙げられる。

引用:https://www.dailyshincho.jp/article/2021/02190601/?all=1 
収穫の様子


*カンナビノイドの種類*

カンナビノイド(大麻)は炭素数21の化合物であり、104種類の成分が含まれている。

カンナビノイドは、さらに細かく分類すると、Δ9-THCタイプ(18種類)、Δ8-THCタイプ(2種類)CBDタイプ(8種類)、CBNタイプ(10種類)、CBCタイプ(8種類)、CBGタイプ(17種類)、CBTタイプ(9種類)、CBEタイプ(5種類)、CBLタイプ(3種類)、CBNDタイプ(2種類)、未分類なもの(22種類)が存在しています。

引用:http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=19134 一般財団法人日本臨床カンナビノイド学会 HPより 

Δ9-THCタイプ

*THC(テトラヒドロカンナビノール)
大麻の主な有効成分で向精神薬として利用されている。
脳に直接作用されず中枢神経系を除く全身の受容体に作用される為、
様々な健康効果がある。

作用:陶酔感・多幸感・鎮痛・食欲増進・鎮痙


*THCV(テトラヒドロカンナビバリン)
大麻の成分の中でも希少性の高いレアカンナビノド。
すべての大麻草に含まれているのではなく、THCVを含む品種が生育しているのは、中央アジアやアフリカ南部のみ。
低用量では精神作用は発揮されないが、一定量以上摂取すると精神活性作用が
引き起こされる。

作用:抗炎症・神経保護・血糖値の調整・食欲抑制・抗痙攣


*THCH(テトラヒドロカンナビヘキソール)
半合成カンナビノイド
強い精神作用を持つ。炭素の数がTHCよりも多いため強い効果があると言われている。

作用:多幸感・リラックス・目の渇き・幻覚・めまい・眠気・吐き気

*THCB(テトラヒドロカンナビブトール)
半合成カンナビノイド
THCに似た作用を持つ2019年に発見された成分。

作用:睡眠の質の改善・鎮痛・抗炎症

*HHC(ヘキサヒドロカンナビノール)
半合成カンナビノイド。CBDやTHCを水素化した成分。

作用:多幸感・エネルギー向上・陶酔感、中程度の幻覚作用


*HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)
THCHを水素化した合成カンナビノイド。
THCの10倍から15倍の強力な精神作用があるといわれ、水素化されたことで光や熱に強い。THCHと同程度の作用がある。

作用:多幸感・気分の高揚

*HHCP(ヘキサヒドロカンナビホロール)
レアカンナビノイドの一種。
摘出される量が少量である為、研究が進められていない。
HHPの1.5倍〜2倍の作用があると報告されている。

作用:食欲促進・抗不安・多幸感・抗炎症


CBDタイプ

CBD(カンナビジオール)
大麻に含まれている主成分の一つで”依存性””危険性”がない。
日本では合法大麻成分として化粧品や食品等、幅広く活用されている。

作用:鎮静・抗菌・抗がん・抗うつ・抗炎症

CBN(カンナビノール)
CBNにはTHCの10分の1程度の精神作用があり、CBDと比べて特に鎮静作用や睡眠補助といった働きが強い。

作用:抗炎症・鎮痛・抗うつ・抗不安・抗菌

CBP(カンナビホーロル)
PACCAN(パッカン)と呼ばれるタイの大麻産業グループが開発した
合成カンナビノイド。THCと似た働きをするが、その効果はTHCの3分の2程度だといわれている。ボディハイによるリラックス効果がある。

作用:睡眠改善・気分高揚・食欲促進・集中力向上


CBG(カンナビゲロール)
カンナビゲロールは成熟した花の中にごく僅かに含まれている成分で非常に希少なカンナビノイド。
抗炎症作用があることから肌荒れやニキビの改善など肌を整える効果がある。
神経痛や筋肉痛、うつ病や不安障害にも有効。
CBGに関する研究が始まったばかりのためはっきりとした効果のエビデンスがまだ数少ない。

作用:抗炎症・抗菌・鎮痛・腫瘍の成長抑制・骨形成・抗うつ


CBC(カンナビクロメン)
現在、研究発展途上の成分。THCやCBDとは異なる構造を持っており、痛みの軽減や骨の成長促進などの効果が。最近の研究では神経の新生にも関与していることが発見され神経変性疾患の治療に期待されている。

作用:抗炎症・鎮痛・腫瘍の成長抑制・骨形成・抗うつ


CBDV(カンナビジバリン)
前駆物質した精神作用がない。GW製薬会社の研究によると、てんかんやパーキンソン病の治療に効果があることがわかった。ネパールに自生する野生の麻に多く含有されている成分であるそうだ。

作用:発作や震えの軽減・吐き気予防・食欲増進

〜マイナーな成分〜

マイナーでまだ薬用としての効果が実証されてない成分。
以下、一般社団法人 日本臨床カンナビノイド学会HPより引用させていただきます。

CBL:カンナビシクロール(Cannabicyclol)

天然のアサにCBLを生成する品種があり、精神作用はない。CBLはCBCに対して光や酸化によって生まれる副産物でもあります。薬理作用はまだよくわかっていない。

CBND:カンナビノジオール(Cannabinodiol)

CBDから派生した化合物であるが、薬理作用は知られていない。

CBE:カンナビエルソイン(Cannabielsoin)

植物体内のCBDAやCBDに対して光や酸化されるとCBEがつくられます。また生体内でCBDの代謝によってもCBEがつくられます。薬理作用は知られていない。

CBT:カンナビノトリオール(Cannabitriol)

日本在来種、ジャマイカ種などの天然のアサで生成する品種があるが、植物体内の生合成の経路や薬理作用は知られていない。

http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=19134 一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会HPより

上記を踏まえ104種類もの成分の内、まだ解明されていない成分が大多数であることがわかる。
今後、研究が進んでいくにつれ、新成分が解明されて様々な病気を改善する手助けになることは間違い無いだろう。

*世界各国での大麻の使用法*

大麻を”娯楽・医療用”に合法化している国は12ヵ国(米国、オランダ、英国、スペイン、ドイツ、ベルギー、オーストリア、ポルトガル、フィンランド、イスラエル、韓国の一部地域)で合法に使用、所持することができる。
インドやネパールでは大麻とヒンドゥー教の繋がりが深く、シヴァ神の供物として大麻入りラッシーを多く消費する文化が定着しているのだ。
反対にマレーシア、シンガポール、スリランカ、中国では所持、使用するだけで処罰される。(死刑を科す国もある)


大麻料理

主に大麻の娯楽用での消費方法としてはジョイント、エディブルが主流だろう。
特にエディブルは吸引よりも効き目が長くかつ強い為、特に摂取を慎重にする必要がある。
そんな中、アジアで最初に大麻を解禁したタイでは”大麻料理”というものが存在する。
大麻の研究がまだ進んでない昔のタイの人たちは大麻を生薬の一種で扱ってきた。そして冠婚葬祭の際や葬式等で振る舞う料理に特に活用していたという。
現在でも大麻を使用したカフェやレストランが数多く存在する。

引用:https://ushiom.com/6584/ 
大麻パン
引用:https://ushiom.com/6584/ 
タイ料理
引用:https://ushiom.com/6584/
 洋食にも


インド・ネパールでの大麻文化

一方のインドでは宗教的な背景がメインで大麻所用の文化が定着しており、
ヒンドゥー教の神であるシヴァは大麻を好んでいたと言われている。
そのシヴァ神を祀るインドの一大イベントで最も重要なお祭りとして
マハーシヴァートリ(Mahashivarathri)と呼ばれるイベントがある。

インドは国の法律としては大麻を違法としているが、宗教的背景での大麻使用の歴史が古く長い為、宗教や儀式で使用される場合は例外としている。
祭り期間中になると人々はシヴァ神を拝んだり、シヴァ寺院に集まって瞑想をしたり、そしてガンジャを多くの人が嗜み、シヴァ神にもお供えとして使用される。
冒頭にもあったバングラッシーもこの祭り期間中に嗜まれるのだ。

シヴァ神に捧げる植物
参照:https://neelkamal.exblog.jp/iv/detail/?s=32661998&i=201903%2F03%2F91%2Fc0338191_23465425.jpg


参照:https://visitsnepal.com/2020/08/17/maha-shivratri/ 
ガンジャを吸うサドゥー
 

マハーシヴァラートリに関して素晴らしいnoteを見つけたのでぜひこちらを
読んでいただきたい。
https://note.com/tokuwakako/n/na19918354a8a 
街じゅうが大麻でキメるシヴァ神フェス

〜最後に〜


いかがだっただろうか?5000字を超える記事となってしまったが、大麻使用の歴史はまだまだ深く、解明されていないこともある。今回は大麻の成分の話や歴史のほんの片隅を紹介したが、ヒンドゥー教のインドやネパールだけでなく東南アジアでの大麻の歴史も相当古く、奥深い。
日本では大麻に関する知識やニュースは色んなプロパガンダでタブー視されて
いるが、何故そういった歴史があるのか?偏見があるのか?真実を確かめるには自分なりにリサーチを行い、情報を選択する必要があると思う。(筆者もかつては大麻やサイケデリック(幻覚剤、精神発展剤)に関してマイナスなイメージを持っていた。)
情報が錯乱している現世に広い視野で入れることは大変難しいことではあるが、
筆者も常に脳の情報をアップグレードして学んでいきたいと思う。
次回以降からはサイケデリックス(精神発展剤)と先住民の歴史や、幻覚剤がうつ病治療対してブレイクスルーにもなるかもしれない趣旨を中心に書いていく。

ご一読いただきありがとうございました。

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