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第64回講談社児童文学新人賞で佳作に選んでいただきました-児童文学の公募に投稿を続けた理由①-

この記事を読んでくださってありがとうございます!
五十嵐美怜(いがらしみさと)です。

もし日頃からわたしのXを見てくれている方が読んだら「今頃?」と言われてしまうようなご報告ですが、昨年、第64回講談社児童文学新人賞で佳作を受賞させていただきました。
審査員の先生方、編集部の皆さま、本当にありがとうございます。

第62、63回は二次選考止まりで、自分の作品に足りないものはなんだろう?と悩んで、いろいろな作品を読んで、講座を受けて……
どうにかいただくことができた賞です。
思い入れが強すぎて、最終に残ったというメールを読んだだけで泣いてしまいました。
選考結果のお電話をいただいた時も、編集さんは「佳作でした……」とどこか申し訳なさそうな声色だったのですが、それでも嬉しくて泣くという。(^◇^;)(笑)

上には「新人賞」があるので、「佳作」で満足してはダメなのかもしれないけど、賞を頂けたことが本当に本当に嬉しかったのです。
講談社児童文学新人賞へは5回目の挑戦でした。2作出した年も。

もともとわたしは児童文学作家を志し、毎年何件かの公募に投稿していました。
(ちゅうでん児童文学賞や、児童文学者協会の長編新人賞など。掌編などの短編も含む。ちなみにはじめての投稿は童話の賞でした)
ちゅうでんさんで2回ほど一次選考通過しましたが、最終には残れず。
そのほかの公募では特に結果は出ていません。
だから本当に「ようやく」でした。

そしてわたしは2019年より児童文庫を書かせてもらっています。
(児童文学の公募に投稿を始める→児童文庫に出会い文庫の賞にも投稿を始める の流れです。2019年以降は「プロアマ不問」の公募に限定しています)
ですが、小説賞の受賞経験はありません。
みらい文庫さんでは最終選考止まり、青い鳥文庫さんではプロット(企画書)の賞で拾っていただきました。受賞作家じゃなくてもわたしの本を出してくださる版元さん、読んでくれる皆様にはいつも感謝しています。
なので今回の講談社児童文学新人賞がはじめての受賞になるわけです。

 わたし自身としては「何回も挑戦してやっと賞を頂けた!」「悲願達成!」という感じなのですが、たまに「児童文庫を書いていたのに、どうして急に児童文学を書こうと思ったんですか?」という旨のことを聞かれることがあります。
 上記の経緯なんて自分と家族と一部の友人くらいしか知らないわけですから、そう思われても仕方ないですよね。
決して突発的な挑戦ではないのですが、やはりこれまでのことを説明すると驚かれてしまいます。

本気で、目標に向かって、何度も挑戦してきたこと。
できれば知ってほしいと思うのは自己満足だと思います。
わたしはとてもネガティブな性格なので、この文章も、「頑張ったアピール」みたいに捉えられてしまうのでは?とこっそり思っています。
 投稿時代も、「もしかしたら自分のやっていることは間違っていて、誰かにとっては面白くないことで、せっかくデビューできているんだから欲張りすぎではないか?」と思ったこともあります。

 そんな中ある講座を受け、たくさんご活躍されているベテランの先生が「(プロアマ不問の)新人賞はプロでもアマでも関係ない!」とおっしゃっているのを拝聴しました。「プロでも、『何冊か出してるから……』みたいなプライドは捨てないと、きっかけは生まれない」と。
 その時わたしは「自分はなんておこがましいことを考えていたんだろう」とハッとしました。
わたしは(今でこそ)児童文庫の世界ではプロと呼んでもらえるかもしれませんが、児童文学作品の単行本は一冊も出していないアマチュアです。
児童文庫と児童文学は「目的」も「書き方」も異なっている、と考えています。(わたし個人の考えであり、両方上手に書かれている先生方はたくさんいらっしゃいます)(「第一回みらい文庫大賞」の講評ページに掲載されている審査員の先生方のお言葉がとてもわかりやすいです)
児童文庫の編集さんは、もちろん文庫、エンタメ作品の書き方しか教えてくれません。
文庫の世界でだって、これまで一度も他の出版社さんからお声がけしていただいたこともないです。
そんなアマチュアのくせに、一時でも遠慮しようとしてしまったわけです。

子どもの頃から「人にどう思われるか」ばかり考えて生きてきました。
でも、怖くても、不安でも、本当に叶えたいなら、人の目は気にせずに挑戦しないときっかけは掴めないんだと気づきました。
働きながら、文庫のお仕事もやらせてもらって、個人的に投稿作も書く。
好きで選んだ道とはいえ、家族の通院などもあり時間的にはいっぱいいっぱいでした。
落選続きで悔しい思いもしたけど、「もうやめよう」とはならなかったです。(きっと皆さんもそうですよね)

「どうしてそんなに児童文学を書きたいのか?」というと「わたしには物語を通して今を生きる子どもたちに伝えたいことがたくさんあるから」です。その目標を諦めることができませんでした。
貧困、家族との関係、ルックス原因のいじめ、性自認のゆらぎ、コミュニケーション下手で他人とうまくやれない自分……
子どものころのわたしにはたくさんの悩みがあり、嫌なことばかりで、しにたくて。
その衝動を何とか踏みとどまらせてくれたのは「物語」でした。
「この話を読み終わるまで」「この先生の次の作品を読みたい」「いつかこの場所に行ってみたい」そんな小さな希望の積み重ねが、わたしにとっての生きる理由になっていた気がします。
どうにか、ぼんやりでも生きていたら、大人になって自分を肯定してくれる人と出会えたり、自分で働いて好きなものを買えるようになったり、目標ができたり、ようやく幸せを感じることができるようになりました。「生きていたらなんとかなった大人の代表」として、今悩んでいる子どもたちに「大丈夫、なんとかなるよ」と伝えることができたら……。
押し付けがましいかもしれないけど、そんなことを考え、児童文学作家を志すようになりました。


ネガティブで、コンプレックスがたくさんある自分のことが嫌いでした。
だけど、目標を叶えるまで努力できた今の自分のことは、ちょっとだけ好きになれました。
……と、いろいろ書いても、経験、体験、感情などを100%理解できるのは本人だけですよね。
公募、コンテスト、コンクール……賞をもらう人がいるということは、落選する人がいるということです。わたしも落選の度に落ち込んできました。
「自分はもっと頑張った」っていう人はたくさんいると思うし、そもそも挑戦する人は全員頑張っているはずです。努力や苦労の感じ方捉え方は人それぞれなので、正確に比べることなんてできません。

だからせめて、自分だけは言ってあげようと思います。「諦めないでよく頑張ったね!」って!


重ねてになりますが、審査員の先生方、編集部の皆様、この度は本当にありがとうございました。
講座をたくさん開いてくださっている児童文学者協会、児童文芸家協会の皆様、講師の先生方、「この作品が参考になるよ!」とたくさんの児童文学作品を進めてくださった司書の先輩方にも感謝の気持ちでいっぱいです。
サポートしてくれた家族にも、ありがとう。

……実は、第64回はわたしだけではなく新人賞を受賞されたまひるさんも児童文庫の出版歴があるということで、編集部のほうへ苦情があったそうです。
(まひるさんは文庫でも賞をとられているし人気シリーズが書かれていましたし、並べられるのが申し訳ないのですが……汗)
やはり、面白くないと思う方はいたんですよね。
その方はわたしのnoteは見ないと思うし、もし読んでくださっても面白くないままかもしれないけれど、
いつか作品を通して「五十嵐は本気で児童文学に向き合っていたんだ」とわかっていただけるように、頑張りたいと思います。

(その他)
SNSで見たご意見に
◎「児童文庫を書いていたら、わざわざ賞に出さなくても児童文学の編集さんと知りあったりお声がかかる機会があったのでは?」
という感じのものがありました。
→残念ながら(わたしには)なかったです。文学どころか、文庫のレーベルさんにもお声がけや紹介をしていただいたことはありません。

ちなみに、去年佳作入選のご連絡をいただいたあと、二ヶ月くらい経ってから編集さんに「青い鳥でも書かれていたんですか!?」と言われました。そのくらいの認識です(笑)
青い鳥の担当さんからは「投稿頑張ってください!」と言われたことがあります。
編集者さんとお知り合いになることに関しては、地方住みであることやコロナ禍だったことも影響していたかもしれません。
作家さんたちのすごい集まりにお声をかけていただけるようになったのも受賞させていただいた後です。
今思い返しても、公募に投稿することしか児童文学を出版していただく道はなかったなと思います。
この辺りのことは、また改めて記事にできたらと思います。 

◎「もう文庫は書かないの?」と聞かれることがありました。
→書かせてもらえる限りは、書きたいと思っています。
これまでのシリーズ、全て打ち切りの作家ですが……笑
なので「五十嵐の作家生活は順調」だと感じている方がいたら、それは大きな間違いです!作品を出版してもらっているのは「人気があるから」ではなく、「間髪入れず企画書を送りまくっているから」です。負けず嫌いだと編集さんに言われたことがあります。笑
(わたしの作品を好きだと思って読んでくださっている方はごめんなさい😢)
自分の作品に何が足りなかったか、最近になってようやくわかってきたような気がします。
文庫のオリジナル作品に関してはもう少しエンタメを勉強して再挑戦できたら嬉しいです。

◎投稿時のペンネームについて
これに関してはややこしいことをしてしまって本当に申し訳なかったなと思っています。
素性を隠したいなどの特別な意図があったわけではなく……
(62.63回の二次選考の欄の通り、それまでは五十嵐美怜の名前で投稿していました)
2年連続二次落ちだったので、「3度目の正直」と「2度あることは3度ある」の2つの言葉が頭をよぎり、後者のほうを信じて怖くなりました。後ろ向きな性格すぎますね。笑
なので形から流れを変えようと思い、ペンネームを変えてみたわけです……。
実際に出版するにあたって五十嵐の名前でOKしてくださった編集部の皆様には感謝しております。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
(村沢の名前も思い入れがあるのですが、やはり生まれたときからの名前を使い続けたいという気持ちが大きかったです。)


ここまで、長々とすみません!
また何かあればできる限りお答えできればと思っております。

そして、念願の児童文学デビュー作「15歳の昆虫図鑑」が11月14日に発売になりました!

・周りの目ばかり気にしてしまう
・同性の友人が気になって悩んでいる
・田舎の閉塞感に不満を募らせている
・母子家庭で寂しさを感じている
・人と違う自分に気づき、周囲から理解されることを諦めている
 
そんな5人の少年少女たちの姿を描いた連作短編小説です。
物語の鍵となるのは「虫オタク」の吉岡さんと「昆虫」。
悩みを抱えた4人が吉岡さんと関わっていくことで、新しい自分を発見していきます。
5つのお話すべて、自分が中学生のころ感じていたことを記憶から引っ張り出して書きました。あのとき苦しかったからこそ書けた物語です。賞をいただけて、本になって、苦しかったことも無駄ではなかったと思うことができました。

そして今、同じようなことで悩んでいる子がきっといると思います。
そんな10代のみんなの心を少しでも軽くすることができますように。
1人でも多くの人に届いたら嬉しいです。

↑講談社さんのホームページでは試し読みもできるみたいです。

ネガティブなくせに、エゴサはたくさんしてます!笑
ご感想などいただけたら、とても励みになります。

同じく佳作の福木はるさんの「ピーチとチョコレート」と同時発売です!

「ピーチとチョコレート」、力強くて、読むと元気が出て、でも女子同士の感覚とか考えがリアルで。福木さんの筆力に「悔しい」って感じてしまったくらい素敵な作品です。
わたしも自分を肯定したいと思うことができました。

福木さんもまひるさんも憧れの作家です。
わたしも、もっといろいろな作品を書けるように、ここで満足せず今後も努力を重ねていきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
五十嵐 美怜

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五十嵐美怜(いがらしみさと)
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