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痛い外気、ブラックコーヒー

仕事帰り、バスを待っているときのスマホを持つ手が痛くなってきた。「今日は寒いですね」じゃなくて「今日は痛いですね」の方が正しいかもしれない、とか考える。
子どものころ、吐く息が白くなるのが楽しかったから何度もハァーっと息を吐いては自分から出た水蒸気を眺めていた。

家に帰って、お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。
コーヒーの湯気を眺めて、冬を受け入れている。

ブラックコーヒーを飲めるようになったのは26だったか27だったか、とにかく結構大人になってからだった。
それまでブラックコーヒーはただの泥水だった。
泥水がコーヒーになったのは、転職した先の職場の休憩室に立派なコーヒーメーカーが置いてあり、コーヒーを淹れてくれる秘書さんがいたからだった。休憩時間、「コーヒー飲むでしょ」と聞かれて、飲めませんとは言えず、無理矢理飲んだブラックコーヒーがほんとうに美味しくて、それ以来冬になるとホットコーヒーを水分代わりに飲んでいる。

苦手だったものが好きなものへ変わった瞬間だった。

何となく苦手だったものが、時を経て好物になることが大人になるにつれて多くなった。これを成長と言うのか、変化と言うのか解らないが、

痛いほどの寒さの中で飲む熱いブラックコーヒーで心まで温めることができるようになったから、真冬が私はわりと好きだ。


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