欲求の順番
おはようございます.こんにちは.こんばんは.
55回目のnoteを投稿します,とろたく軍艦です.
高校時代.当時,理系だった私は,センター試験で使う社会科目に倫理・政経を選択した.政経は,既に公民の授業を受けていたおかげで,とっかかりが掴めていたが,倫理は初めて知る世界だった.
倫理の授業はとても面白く,これがきっかけで哲学という分野に非常に興味をもつようになった.特に,興味深いものとして,アメリカの心理学者マズローが提唱した欲求五段階説がある.簡単に言うと,基礎的な生理的欲求をはじめとして,安全の欲求,愛情と所属の欲求,自尊の欲求などの欠乏欲求 (基本的欲求) が段階的に満たされることで,最上位の自己実現の欲求が現れるという説である.今となっては古い学説なので,色々と反論もあるようだが,概念的には今でも受け入れる余地のある学説だと考えている.
今回,私が書きたいのは,高尚な学術文章などではなく,もっとリアルな欲求の順番である.と同時に,現代に蔓延する欲求の捻れにも言及したい.
第一に,私の欲求として挙げられるのは,マズローの言うところの生理的欲求だろう.人の三大欲求とも言われるが,食欲,睡眠欲,性欲は私にとっても重要な欲求である.どれも大切だが,欲求の順位付けをするならば,睡眠欲→食欲→性欲の順だろう.当然,ある種の行為中は食欲や性欲が睡眠欲を上回ることもあるかもしれないが,基本的には睡眠欲を最上位に設けている.
では,生理的欲求の次に来る欲求は何だろう.衣食住なのではないかと考えている.食は既に出ているが,清潔な衣服や住環境はとても重要な欲求である.きちんと洗濯した服を着ることができ,外環境に左右されない住環境 (内環境) は私を含めた多くの人にとって欠かせない欲求なはずだ.
生理的欲求と衣食住の欲求は満たされた.次いで出てくるのは,休憩欲求と家族,友人,恋人欲求である.私は,ゴロゴロするのが何より大好きで,休みさえあれば,スマホ片手にYouTubeやHuluでバラエティやアニメを見まくるような人間だ.だが,それでも一人でいるのが時折寂しく感じるときもある,そんなとき,話し相手となってくれるような家族や友人,恋人などが欲しくなる.彼ら・彼女らと酒を飲みながら,夜の街を散策しながら会話するのは至高の楽しみと言えよう.
ここから先は,人生を彩るような欲求である.解けない数学の問題に頭を悩ませたり,最新の学術論文を読んだり,自分の知らないジャンルの新書を読んだりという知的欲求 (勉強欲求?).先ほどまで満たした生理的欲求と衣食住の欲求の高次版もある.具体的には,より美味しい食事やお酒を飲みたい,より長く快適な睡眠を取りたい,より興奮する性行為をしたい (自慰行為も含む),好きな衣服を着たい,好きな部屋に住みたいなどの欲求があるだろう.また,文化的生活のために,美術館や博物館,映画館などに足を運びたいという欲求もある.美しい空間に没入したいという欲求もある.
そして,最終的には,欲求五段階説の中で最上位に位置する自己実現の欲求がある.今,私がこの文章をnoteに書いているのも,創造的活動の一環であり,自己実現の欲求に従うだろう.他にも,モノゴトを様々な視点から深く,哲学的に考えてみたり,分子生物学的研究のアイディアを考えたり,芸術的アイディアを考えているのも,自己実現の一つと言えるだろう.
以上挙げたようなことが私にとっての欲求の順番である.文章を書きながら,あれもしたい,これもしたいと欲求がどんどん溢れてきたので書き漏れている欲求もあるだろうが,概ねの方向性としてはこの通りである.
それでは,私が冒頭に提示した,現代に蔓延する欲求の捻れとは一体何を指すのか.これを検討したい.
ズバリ言うならば,現代に蔓延する欲求の捻れとは,欲求の順番が間違っているような状態を指す.
例を挙げよう.会社員として働いている人間がいるとする.その人は,ある程度の裁量権を与えられているような管理職クラスである.平日は毎日夜遅くまで仕事をしており,休日は家で仕事をしている.彼・彼女は,一生懸命に働いているので,給料も同世代のそれより高い方である.一見,どこにでもいる仕事熱心な大人である.こんな人間は,日本を見渡せばいくらでもいるだろう.だが,この生き方,在り方に問題はないのだろうか.
当然ながら,生き方は人それぞれであり,正解はないので,私がこういった人を弾劾したい訳ではない.それでも,こういった人を見ると疑問を投げかけたくなるのだ.あなたがしたいのは本当に今の生活なんですか,と.
欲求の順番を間違ってはいけない.我々人間が生物である以上,生理的欲求はほとんど必ず存在する.性欲は年齢と共に衰えるかもしれないが,睡眠や食事は生きていく上で最低限欠かせない営みである.にも関わらず,夜遅くまで仕事をすることで,睡眠時間が犠牲となり,朝起きるときにツラい気持ちになってはいないだろうか.時間がないからといって,適当な食事ばかりをすることで,健康に見えない負荷を掛けてはいないだろうか.本来的には,しっかりと食べ,しっかりと寝て,しっかりと休んだ上で,仕事はするものである.
当然,こんなことは綺麗事だ.残業代を稼がないと,一家を養えないのかもしれない.人手不足なので,事業を回すには生活を犠牲にするしかないのかもしれない.それでも,偶にで良いので,自分の心に耳を傾けて欲しい.あなたと会社の関係は所詮紙切れ一枚の契約書に基づく関係でしかない.あなたがいなくても会社は回るし,その会社が潰れても,社会は回る.だが,あなたがいなくては,家族や友人,恋人が悲しむだろう.価値は基本的に希少性につくものだ.あなたがどれだけ仕事ができようが,あなたと同程度に仕事のできる人間なんていくらでもいる.だが,家族,友人,恋人にとってのあなたは掛け替えのない存在である.それをゆめゆめ忘れないで欲しい.
今の自分の欲求は何なのか.どうか欲求の順番を取り違えないで欲しい.
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