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第12節 アビスパ福岡vs浦和レッズ レビュー
最後にリーグ戦で浦和レッズに勝利したのは1999年。
相性の悪い相手に21年ぶりの3連勝、さらにホーム通算200勝を賭けて戦った一戦は、今季のアビスパが歴史を塗り替えるに相応しいチームであることを示す結果となった。
スタメン・ベンチメンバー
アビスパはクルークスが初スタメン。
CBのコンビは奈良とグローリとなり、ルヴァン杯で同点ゴールを決めたジョンマリはベンチスタート。
浦和は左SBに明本を起用し、左SHには小泉。興梠は今季初スタメンとなった。
前半戦
前述したように昨季のJ2で猛威を振るった2人が左サイドを形成する浦和は、ボールを保持すると明本を非常に高い位置に押し出し小泉は中に絞ってハーフスペースへ。
アビスパはクルークスが合流から短いため連携面で課題があり、特に飲水タイムまでは小泉もしくは明本がフリーとなるシーンが目立った。
また、右SBの西も中央に絞るシーンがあるなど浦和の流動的な攻撃にアビスパの守備がハマらず、4分には西にクロスを上げられたシーンでは中央は2対2となっていた。
しかしアビスパは掴まえきれないなりにもブロックを作って我慢。
そして8分には最初の決定機をいかす。早いリスタートから波状攻撃へと繋げると、志知のクロスに対して明本と接触したGK西川がファンブル。
素早く反応したFWメンデスが冷静に枠内に蹴り込み、先制に成功した。
その後も展開は大きく変わらずも、浦和にとってはこの1点が重くのしかかることとなる。
15分にはCKから浦和の武藤がシュートを放ち、リフレクションしコースが変わるも村上がナイスセーブ。
浦和が小泉を中心にサイドから形を作るも、アビスパは球際は極めてタイトに、アタッキングサードでは徹底的にシュートコースを消すことで対抗。
20分に、昨季のJ2で抜群の強度をみせた明本からクルークスがボールを奪ったシーンは印象的だった。
飲水タイムを挟み、ビルドアップの中心にいた浦和のDHの柴戸を渡がはっきりと見る形に。ここから徐々にアビスパのショートカウンターが増え、浦和はアタッキングサードへの侵入回数が減少していく。
ボード解説①
アビスパが見事なカウンターをみせたのは23分。
奈良がクリアしたボールをメンデスが拾い、
自陣から縦に、いわゆる「裏街道」を突破するなど長い距離を持ち上がる。
攻め上がりを待ちつつ、再び縦に突破しクロス。これに反応したFW渡がバイシクルシュートを放ちゴールを襲ったが、GK西川がここはしっかりと止めてみせた。
渡が動き直しを何度もしていたことも評価したい。
40分には浦和も、小泉がハーフスペースで受け左の明本からクロスというシーンを作ったが、中の選手には合わず。
アビスパが1点リードで折り返した。
後半戦
浦和は柴戸が負傷により交代。これにより小泉をDHに回したのだが、これ以降はっきりと浦和の攻撃の迫力は低下することに。
小泉がボールに触れるシーンは多かったが、彼が最も輝くのは高い位置でパスを受けた瞬間だからだ。
それでも後半開始直後は浦和が積極性をみせる。ボールを回してサイドから侵入を試み、それによって得たセットプレーは多かったが、とはいえ前半の序盤に比べると流動性は低下していた。
そしてアビスパが前半と同じようにこの時間帯をしのぐと、徐々に押し返していく。
浦和は61分に汰木を投入し明本を最前線に上げるなどさらに攻撃的な形へと変化したが、アビスパが引くことはなくクルークスの突破など五分の展開に。
ボード解説②
67分、小泉の縦パスから横方向にドリブルしDFを引きつけ、
左サイドへ展開。
左SBの山中がファーサイドへクロスを上げる。これに右SBの西が飛び込んだが、ここは金森が身体を投げ出し枠内には打たせず。
冷静に戦局を見ていたアビスパの長谷部監督が82分にジョンマリと湯澤を投入すると、この采配がズバリ的中する。
ボード解説③
ジョンマリ投入から僅か4分後の86分。ここも波状攻撃から左の金森が中へ繋ぎ、
受けた前がエリア内に侵入しながら途中出場の重廣へ落とす。
重廣は志知に下げると、志知はダイレクトでクロス。これにジョンマリが、左足のトラップからまさに右足「一閃」。GK西川が反応したものの強烈なボレーシュートを止めきれず、追加点。
ジョンマリはこれでカップ戦も含め途中出場3試合で2得点と期待に違わぬ結果を残している。
2点を追いかける浦和も88分に途中出場の杉本が裏に抜けたが、CBの奈良が絶妙なスライディングをみせシュートは打たせず。
そしてそのままアビスパが2-0で勝利。それも被決定機は前半の武藤のシュートぐらいのもの。
今季ここまでのベストゲームと言うべき内容で、順位も暫定ながら7位に浮上。
3連勝で、ついに白星が先行した。
何度となく突破をみせたクルークス、追加点を奪ったジョンマリをはじめとする攻撃陣の活躍が目立った一戦だが、一方で守備面もたたえたい。
ボールは持たれてもボールホルダーへはタイトに。そしてディフェンシブサードではフリーで前を向かせず、身体を張ってシュートを打たせない。
全体の距離感が良いためにできることだが、この約束事をDFを中心にチーム全員が果たすことで、昨季のJ2でみせたものを上回る強固な守備を形成できていた。
一方の浦和は注目していた小泉がやはり攻撃の中心だったが、なまじ器用なためにタスクが多くなってしまいゴール前で輝くシーンは少なかった。
彼がゴールに近い位置でボールに触れる機会が多いか否かが、チームの調子を測る1つのバロメーターになるのではないか。
採点(及第点5.5)、寸評
GK村上昌謙 7.0 この試合唯一の被決定機とも言える、15分の武藤のシュートを止めたことは大きかった。それ以外も安定した飛び出しで浦和の攻撃をシャットアウト。
DFエミル・サロモンソン 6.5 この試合は左サイドの志知が目立ったが、安定したプレー、そして後半アディショナルタイムでも攻め上がり積極性と運動量を披露した。
DF奈良竜樹 7.5 序盤の難しい時間帯を耐えられたのは幾度も身体を張った彼の活躍が大きかった。「らしさ」を存分に発揮したと言える。
DFドウグラス・グローリ 7.5 抜群の身体の強さはいつも通り。さらに奈良との連携も向上し、競り合ったボールを弾く位置も良かった。
DF志知孝明 7.5 MOM。公式記録は1アシストだが、チームにとっては2アシスト。それ以外にも対面の選手に球際で完勝し、充実した試合に。
MFジョルディ・クルークス 6.5 守備時のポジショニングには課題があるが、それ以上に攻撃での恩恵をもたらす。浦和の選手は彼を止められず、途中からは2人で対応することに。
MF前寛之 7.0 序盤はややミスがあるも、時間の経過と共に安定したプレー。浦和の柴戸が退いた後半は中盤の構成力ではっきりと上回った。
MF田邉草民 7.0 全く迷いがなくなり、タイトな守備も会得したことでJ1でも十分に渡り合えるボランチへと成長。惜しい攻撃参加もみせ、今季ここまでで最高の内容だった。
MF石津大介 6.0 対面する西が高い位置を取ることで守備に奔走させられるも、全くフラストレーションを溜めずしっかり守備で貢献。45分には素早い切り替えから関根のイエローを誘う。
FWブルーノ・メンデス 6.5 8分にこぼれ球へ素早く反応し、貴重な先制ゴールを奪う。その後も突破からチャンスを生み出すなど迫力をみせた。
FW渡大生 6.5 23分のバイシクルは西川の好セーブにあい惜しくも加入後初ゴールとはならなかったが、それでも今季最高の内容。タイトな守備でもチームを大きく助けた。
MF金森健志 6.0 59分、石津に代わり出場。
しっかりと守備のタスクをこなしながら、ジョンマリの得点シーンでは素早く詰めていた。
MF重廣卓也 5.5 77分、渡に代わり出場。まだ試運転のようにも見えたが、しっかりと役割を理解したプレーぶりだった。
FWジョン・マリ 6.5 82分、メンデスに代わり出場。いつもは80分以降に出場した選手は「採点なし」にしているが、今回は特例。日本代表GKの西川のセーブを上回るシュートの破壊力で試合を決めた。
MF湯澤聖人 採点なし 82分、クルークスに代わり出場。SBが本職の彼が右サイドにいることで、サロモンソンが積極的に上がることができた。