【随想】消費生活センター条例化の課題#5−いわゆる「神奈川方式」(5/10)

 神奈川県の消費者行政を考える場合、県特有の事情を考慮しなければならない。一つは、神奈川県には相応の規模の消費生活センターを擁する3つの政令指定都市(横浜市・川崎市・相模原市)が存在しているということ。このことは、地方の消費者行政の展開にあって、市町村とは異なる県の役割をどう定めていくかという問題と関連する。
 いま一つが、いわゆる「神奈川方式」である。これは、1998年の相模原消費生活センターの厚木消費生活センターへの統廃合に始まり、1999年の横須賀、2000年の川崎、2001年の厚木、2003年の平塚、藤沢および小田原というように、ほぼ5年余のうちに県下にあった8箇所の消費生活センターの廃止措置および同センターの機能の市町村への移管措置を総称してしばしば「神奈川方式」と呼んでいる(さらにこれに先立つ、横浜消費生活センターの本課への移管(1996年)と「中央消費生活センター」への名称変更(1999年)や、一連の廃止措置と平行して行われた女性センターの商品テスト室の本課への移管(1997年)と廃止(1999年)を含むこともある)。
 この「神奈川方式」については、肯定的評価と否定的評価とが相半ばし、「神奈川方式」ということばの印象も立場によってまったく違ったものとなっている。たとえば、行政の合理化・効率化を短日のうちに実現したということで行政改革の一環としては肯定的に評価されるが、他方では、市町村への移管によって県が消費者行政から手を引き消費者行政のサービス低下をもたらしたとの否定的評価もある。
 いずれにせよ、消費者行政に関し、もともと先導的な立場にあった神奈川県は、「神奈川方式」を経て、市町村にその機能を移譲・移管した。神奈川県は、その時点ですでに①市町村がこれまで県が担っていた機能を適切に代替することが可能か、②県民がこれまでと変わらない行政サービスを享受することが可能か、さらに、③そうした中にあって、県としてはどのような立場でいかなる役割を果たさなければならないのか、という問いを提起し検討しなければならなくなったことは事実である(2015年1月5日記)。

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