【随想】消費生活センター条例化の課題#3−消費生活相談を条例に記載する必要性(3/10)
すでに指摘したように、現在、神奈川県消費生活条例中に「消費生活相談」の文言を見いだすことはできない。
しかし、このことをもって県が消費生活相談の機能や役割を有していない/有してこなかったと考えるのは早計である。というのも、わが国ではもともと、消費生活相談をはじめとする消費者行政は、市町村ではなく、都道府県や大都市自治体が常に先導的役割を果たしてきた経緯があり、県条例はおろか旧消費者保護基本法の制定当時において、すでに神奈川県は消費者教育の実施やこれに関する展示、消費生活相談、商品テストおよび資料提供などの事業を実施する「神奈川県消費生活センター」を開設していたからである。
消費生活相談を明確に意義づける消費者安全法の制定を見たいま、また、今回の法改正により消費生活センターを条例で位置づけることとした趣旨を踏まえると、現状において地方公共団体における消費者行政のもっとも重要な事務の一つと目される消費生活相談を条例上も明確に位置づけておく必要があるのではないか。
消費者基本法以降、消費者安全法が制定され、今回の法改正を経た現在にあって、さすがに消費生活相談を市町村の専権事項とし、県の出る幕ではないと述べる者はいないと思われるが、都道府県が消費者行政を主導してきたという事実はすでに過去の経緯に帰し、現場において現在必ずしも共有されている事実ないし経験とはいえなくなっている。その意味でも、法の規定に加え、条例において県に消費生活相談の業務が当然に帰属することを明記することは、神奈川県が行なう県民との明白な約束として意味のあることだと思われるのである。
(なお、この点につき、神奈川県は消費者安全法の施行によっても、県の施策に大きな変更は生じることはないとし、消費生活相談について条例の改正は必要ないとの理解である。)(2015年11月5日記)。