【随想】消費者市民社会」ってなんだ!?#3−国民生活白書に現れた「消費者市民」(3/5)

 消費者教育推進法は、「消費者市民社会」を「消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」と定義する(同法2条2項)。
 もともと「消費者」の概念は、経済社会が発展し、素朴な自給自足社会から分業社会に転化したときに現れたものであり、生身の人間が生存・生活を目的として取引の場に現れた時における特有の地位に由来している。他方、「市民」の語感は、近年つとに強調されるように、「消費者」にとどまらない広い人間のありようを示すもので、上記の定義に見られるように人間が営む消費生活がもつより広範な影響を加味した表現のようにも見える。
 この「消費者市民社会」ということばが最初に登場したのは、実は、『国民生活白書(平成20年版)』においてである。この白書ははじめて「消費者」に焦点を当てたものとして注目された。ここで、「消費者市民社会」は、次のように述べられている。「欧米において「消費者市民社会」という考え方が生まれている。これは、個人が、消費者・生活者としての役割において、社会問題、多様性、世界情勢、将来世代の状況などを考慮することによって、社会の発展と改善に積極的に参加する社会を意味している」と。これに続き、白書は、それが想定する「消費者市民」を「豊かな消費生活を送る「消費者」だけではなく、ゆとりある生活を送る市民としての「生活者」の立場」であり、「消費者市民が「一般的な消費者・生活者」と連帯していく社会が消費者市民社会である」と。
 そのうえで、白書は、「消費者市民」には二つの役割があるという。一つは、企業などから示された情報に基づいて革新的かつ費用に比べて効用や便益の大きい商品・サービス、そして企業を選択する「経済主体」としての役割、いまひとつは「社会変革の主体」。前者の役割を通じて、「望ましい競争と公正な市場が生まれ、個々の企業の競争力、そして国自体の力に結びつく」とし、また、後者の役割によって、「社会の問題の解決、困窮者への支援、そして人々や社会とのつながりの重視など社会的価値行動が高まり、伝播していけば、それが大きなうねりとなり、社会構造自体の変革」につながることが期待されるとする。経済合理的な経済主体となることが求められ、かつ、「社会変革の主体」としての役割が期待される。この両者の結びつきは必ずしも明らかではないものの、その最終的な目的は、消費者を中心に据えた市場経済社会の再構築のようである(2015年6月5日記)。

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