【随想】ふるさと納税、これでいいのか?#1−寄付としての納税(1/6)
ここ数年、年末調整を意識する12月になると、きまって話題になるのが「ふるさと納税」である。わたしは、この制度を利用したことはない。だが、聞くところによれば、今年分のふるさと納税を申し込むと、来年収める税金が安くなる上、年末には「返礼」として山海の珍味が届くのだという。自治体は、「返礼」のユニークさやお得感で「税金」の獲得を競い、最近では、自治体の「返礼」をリストアップする「おまとめ」サイトなども登場しているらしい。
「ふるさと納税」は、扶養家族が配偶者のみの年収700万円の給与所得者が、自分の選んだ自治体に30,000円寄附(ふるさと納税)を行うと、本来その人が住所地の自治体に納めるはずの所得税と住民税などが28,000円控除されるというものである。所得が高い人であれば、制限額も上がり、より多くの金額をわずか2000円の負担で寄付することができる。
この制度もできて、そろそろ10年を経ようとしている。一見、わが国の年末の恒例行事として(!?)定着した感もなくはない「ふるさと納税」。だが、わたしには問題点ばかりが目につくのである。
まず当初から気になっていたのは、「ふるさと納税」となることで、「税金」ではなく「寄付」となることの問題である。税金は、自治体においては、議会の議決を経てさまざまな用途に振り向けられるのだが、納税者が個別に税金の用途を指定することはない。他方、寄付は寄付者がその使いみちを特定することが可能である。本来、税として徴収され、使われることを想定されていた金銭が、自治体の事情について必ずしも通じていない、また、もっぱら「返礼」欲しさで思いつきの用途を指定するかもしれない寄付者のフリーハンドに委ねられることへの違和感である(2018年1月5日記)。
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