うろ覚えむかしばなし かさこじぞう

あやふや度 ★☆☆☆☆

むかしむかし、あるところ(山間部)に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ふたりはとても貧しく、大晦日だというのに正月の準備も何もできていませんでした。
おばあさんは言いました。
「私が笠を編んだので、これを町で売ってきてください。そのお金で年を越しましょう」
おじいさんは笠を背負い、山を下りて町で売ろうとしました。
ぜんぜん売れませんでした。

おじいさんは、せっかくおばあさんが笠を編んだのに申し訳ないことをしたなと思いながら、帰路につきました。
家は山の中にあるので、山道です。おまけにふぶいてきました。十二月、夕方。慣れた山道とはいえやばい状況です。
そんな中、おじいさんは6体のお地蔵さんを見つけました。お地蔵さんは雪を被っており、おじいさんの目にはとても寒そうに見えました。
「おじぞうさん、寒かろう」
おじいさんは5体のお地蔵さんに笠を、最後の1体には自分が被っていた手ぬぐいを被せました(ここで、おばあさんが編んだ笠が5枚だったことが分かります)。
そしておじいさんは雪道を歩き、自宅に帰りつきました。

「おじいさん、お帰りなさい。笠は売れましたか」
おじいさんは正直に、笠は売れなかったこと、帰る途中でお地蔵さんにあげてしまったことを伝えました。
「おじいさん、それは良いことをしましたね」
おじいさんとおばあさんは、菜っ葉の漬物と白湯で夕飯を済ませ、眠りにつきました(※心配です)。

その夜、おじいさんとおばあさんは地響きを感じて目を覚ましました。ふたりは怯えました。そっと戸外を除くと、ずりずりと去っていく複数の影が見えました。影は5体が笠を被り、1体は手ぬぐいを被っていました。
翌朝おじいさんとおばあさんがおそるおそる戸を開けて見ると、家の周りに餅だの飾りだの鯛だのお金だのが山盛り届いていました。
おじいさんとおばあさんは、お地蔵さまがお礼にいらしたのだとたいそう喜びました。
おじいさんとおばあさんはそれらの金品でお正月を過ごし、その後も幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。


昔話の好きな子供でした。でも、あの頃読んだ昔話は今や記憶の中でうろ覚えのあやふやになり、混ざり合いごちゃごちゃになっています。
きちんとした話を目にしてしまう前に、うろ覚えの状態の自分の中の物語を書いておこうと思いました。
きちんとしたものを目にしてしまえば、うろ覚えの状態には戻れないのですから。

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