うろ覚えむかしばなし はなさかじいさん
あやふや度 ★★★☆☆
むかしむかし、あるところに良いじいさんと悪いじいさんがいました。
ふたりは隣同士で住んでいました。
良いじいさんは白い犬を飼っており、シロと名付けてかわいがっていました。
悪いじいさんは、特に何も飼ってはいませんでした。
ある日、良いじいさんがシロを散歩させていると、シロが言いました。
「ここ掘れワンワン」
良いじいさんは、シロが人間の言葉をしゃべったことにも動じず、指示通りに地面を掘りました。
すると、金銀財宝が出てきました。
じいさんは突如として金持ちになりました。
悪いじいさんは、良いじいさんが突然金持ちになったことがうらやましくてたまりませんでした。
「良いじいさんや、いったいどうして急に金持ちになったんだい」
悪いじいさんが尋ねると、良いじいさんは答えました。
「わしは何もしていやしないが、このシロが散歩中に、ここ掘れワンワンと言うから、掘ったら金持ちになったのさ」
悪いじいさんはそれを聞くと、良いじいさんの飼い犬であるシロを無理やり借り受け、散歩に出かけました。
「ここ掘れワンワン」
悪いじいさんが地面を掘ると、なんだかわけのわからない汚いものが出てきました。
悪いじいさんはシロを殴り殺し、家に帰ってかまどにくべて骨も残らないくらい焼きました。
「悪いじいさんや、そろそろシロを返しておくれ」
良いじいさんに言われると、悪いじいさんはかまどの灰を渡して言いました。
「お前の役立たずの犬は、殴り殺して焼いちまったよ」
良いじいさんは嘆き悲しみました。
良いじいさんが泣きつかれて寝ていると、夢にシロが出てきて言いました。
「桜の枯れ木に、私の灰を撒いてください」
良いじいさんは、かわいいシロの望みなら、と枯れ木に灰を撒きました。
するとどうでしょう、桜は次々につぼみをつけ、満開の花盛りとなりました。
人々も集まってきます。
「枯れ木に花を咲かせましょう」
良いじいさんは、持ち前のエンターテイメント精神で、そのような掛け声をかけながら灰を撒き続けました。
良いじいさんは、財産に加え、人気も得ました。
悪いじいさんは、良いじいさんの真似をして灰を撒いてみるなどしましたが、特に何も起きませんでしたとさ。
おしまい。