うろ覚えむかしばなし 白雪姫

あやふや度 ★☆☆☆☆

むかしむかし、あるお城に王様とお妃様が住んでいました。
ある雪の日、窓から外を見ている時、お妃様はとげで指を刺してしまいました。
指からは血がしたたり、雪に落ちました。
お妃様は、
「黒檀の窓枠のように髪が黒く、雪のように肌が白く、そしてこの血のように赤い頬の子供が生まれますように」
と願いました。
そして、お妃様は身ごもり、子供を産みました。
お妃様はその出産で死んでしまいました。王様はひどく悲しみました。

生まれた子供は、お妃様の思った通りの黒い髪と白い肌と赤い頬を持った、美しいお姫様に育ちました。
人々は、お姫様のことを白雪姫(しらゆきひめ)と呼びました。

お妃様を失って悲しんでいた王様は、美しい女性を新しい妃に迎えました。
しかし、新しいお妃様は悪い魔女でした。
うぬぼれた魔女は、毎晩魔法の鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
すると、鏡は毎晩答えるのでした。
「お妃様、それはあなたです」

ある晩、魔女はいつものように、魔法の鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
「お妃様、世界で一番美しいのは白雪姫です」
白雪姫は年頃になり、ますます美しく育っていました。その美しさが、魔女の美しさにまさってしまったのです。
魔女は怒り狂い、白雪姫を殺してしまおうと考えました。
白雪姫を森に連れて行って殺し、殺した証拠に内臓を持ち帰るように、魔女は手下に命じました。

魔女の手下は白雪姫を連れて森に入りました。
しかし、愛らしい白雪姫を殺すことがどうしてもできませんでした。
「あなたは魔女に命を狙われています。どうか城に戻らず逃げてください」
魔女の手下は白雪姫を森の奥に逃がし、姫の代わりに鹿を殺して内臓を持ち帰りました。
魔女は内臓を煮て、すっかり食べてしまいました。

さて、城を追われた白雪姫が森の中をさまよっていると、小さなかわいらしい家を見つけました。
白雪姫が中に入ると、中にはおいしそうな食事ができていました。
姫は森を歩いて疲れ、おなかもすいていたので、その食事を食べて、小さなベッドで眠りました。
そこに、家の主の小人たちが帰ってきました。
森の小人たちは、
「わしらの食事をすっかり食べてしまったのは誰だい」
と怒りました。そして、ベッドで眠る白雪姫を見つけました。
白雪姫は小人たちに事情を話して謝りました。
小人たちは、掃除や料理、洗濯をしてくれるなら同じ家に住んでも良いと言いました。

お城の魔女はすっかり安心していました。
魔女は、魔法の鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
しかし鏡は言いました。
「お妃様、世界で一番美しいのは白雪姫です」
魔女は、白雪姫が生きていることを知ってかんかんに怒りました。
「鏡よ、白雪姫はどこにいる」
「白雪姫は、森の奥の小人に家にいます」

魔女は、雑貨売りの老婆に変装して、留守番中の白雪姫の元を訪ねました。
「美しいお嬢さん、その黒髪によく似合うリボンをあげよう。お代はいらないよ」
そして魔女は美しいリボンを取り出すと、白雪姫の胴体を締め上げました。
白雪姫は、息が詰まって倒れてしまいました。
仕事から帰った小人たちは、倒れている白雪姫を見ると嘆き悲しみました。
しかし、しばらくすると白雪姫は息を吹き返しました。

魔女はお城に戻り、魔法の鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
しかし鏡は言いました。
「お妃様、世界で一番美しいのは白雪姫です」
魔女は、白雪姫がまだ生きていることを知ってかんかんに怒りました。
「白雪姫め、今度こそ殺してやる」

魔女は、再び雑貨売りの老婆に変装して、留守番中の白雪姫の元を訪ねました。
「美しいお嬢さん、その黒髪をもっとつやつやにする櫛をあげよう。お代はいらないよ」
そして魔女は毒のついた櫛を取り出すと、白雪姫の髪を梳かしました。
白雪姫は毒で倒れてしまいました。
仕事から帰った小人たちは、倒れている白雪姫を見ると嘆き悲しみました。
しかし、しばらくすると白雪姫は息を吹き返しました。

魔女はお城に戻り、魔法の鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
しかし鏡は言いました。
「お妃様、世界で一番美しいのは白雪姫です」
魔女は、白雪姫がまだ生きていることを知ってかんかんに怒りました。
「白雪姫め、今度こそ殺してやる」

魔女は、今度はりんご売りの老婆に変装して、留守番中の白雪姫の元を訪ねました。
「美しいお嬢さん、おいしいりんごはいらんかね。お代はいらないよ」
そして魔女は毒のついたりんごを取り出すと、二つに割りました。
魔女は毒のついていない方を食べて言いました。
「何も怖いことはないよ。ああおいしい」
白雪姫はためらっていましたが、老婆があまりにもおいしそうにりんごを食べるので、ついつい受け取ってりんごをかじってしまいました。そして白雪姫はその場に倒れてしまいました。
仕事から帰った小人たちは、倒れている白雪姫を見ると嘆き悲しみました。
今度は白雪姫は目覚めません。
小人たちは、白雪姫の美しい姿をいつでも見られるよう、ガラスの棺をこしらえて姫をそこに寝かせました。

魔女はお城に戻り、魔法の鏡に尋ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
鏡は言いました。
「お妃様、それはあなたです」
魔女は喜びました。

さてある日、森を王子の一行が通りがかりました。
王子は、ガラスの棺に眠る白雪姫に目を止めて言いました。
「なんと美しい姫だ」
小人たちは、これまでの話を王子に語りました。
王子はどうしてもこの美しい姫を手元に置きたくなり、小人たちに頼み込みました。
小人たちは、王子の想いを聞いて、棺を譲ることにしました。
王子の一行が、ガラスの棺を馬車に積み込もうとした時です。棺はひっかかり、地面に落ちてしまいました。
するとその勢いで、姫の口から、のどに詰まっていた毒りんごのかけらが飛び出し、姫は息を吹き返しました。
小人たちは喜びました。
目を覚ました姫は、王子を一目見て好きになってしまいました。
王子は、目を開けた白雪姫を見てますます好きになってしまいました。
ふたりは王子の国で結婚し、幸せに暮らしました。
魔女は、焼けた靴を履かされて死ぬまで踊らされました。
めでたしめでたし。


昔話の好きな子供でした。でも、あの頃読んだ昔話は今や記憶の中でうろ覚えのあやふやになり、混ざり合いごちゃごちゃになっています。
きちんとした話を目にしてしまう前に、うろ覚えの状態の自分の中の物語を書いておこうと思いました。
きちんとしたものを目にしてしまえば、うろ覚えの状態には戻れないのですから。

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