「自分を活かす、他人を活かす、組織を活かす。」~カウンセリング実践訓練の重要性~
こんにちは。
「自分を活かす、他人を活かす、組織を活かす。」
統合カウンセラーの猫間英介です。
日々、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナー、メンタルヘルスのカウンセラーなどとして多くの面談を統合的に行っていますが、どのように自分の面談力を維持、改善、向上していくのか、はとても重要なことです。どれだけ専門知識があろうと、カウンセリングは面談実践力そのものです。実践力なくしてカウンセリングなし、です。
本日は私が昨日受講した面談力の維持・改善・向上のための実践トレーニングで、自分があたらめて気づかされたことについてお話したいと思います。
1.面談力維持・改善・向上のための実践トレーニングの必要性
日々、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナー、メンタルヘルスのカウンセラーなどとして多くの面談を行っており、専門家としての面談力は一定レベルは獲得できているのかな、などと(独りよがりに、勝手に)思っていることがあります。
しかし、この面談力というのが曲者です。面談力があるなどいうのは単なるカウンセラー側の思い込みにすぎません。面談を多くこなせばこなすほど、自分には面談力があると勘違いしてしまったり、惰性やマンネリに陥ってしまったり、過去の事例からの推測で先入観を持ってしまったりするなど弊害が出てきます。
そこでこのような事態に陥らないようするために、定期的に自分よりも面談力のあるカウンセラーや専門家の方と実践的なトレーニングを積み、自分の面談力の維持、改善、向上を図ろうと心がけています。
また、分野もキャリアコンサルタントの分野、メンタルカウンセリングの分野、ファイナンシャルの分野など、それぞれの分野における面談力を維持・向上させる必要があります。私は、平均してほぼ2カ月に一度、このようなトレーニングを受講し面談力の維持・向上に努めております。
昨日も約5時間のオンラインでの集中的な面談力の実践トレーニングを受けました。 昨日の講座はメンタルヘルスカウンセラー向けの講座でした。
様々な実例をもとにしたケースについて、先生および他の参加メンバーと数多くの面談ロールプレイングを行い、それをレビューし、厳しい意見を交換し合ったり、指導者から助言や指導をいただいたりします。
毎回、このような講座が終わったときにはクタクタになっておりかなりの疲労感を覚えます。一方で今日の訓練をなんとかやり遂げることができた、という達成感も得ることができます。この達成感がほしくて講座受けているんじゃないか、と思うこともあります。なお、今回の講座は3回連続で次とその次の日曜にもあります。
昨日受けた実践トレーニング講座の概要や私があらためて強く感じたことをご紹介します。
2.EAP(Employee Assistance Program)メンタルヘルスカウンセラー向けの面談力実践トレーニング
昨日受けた講座は、メンタルヘルスカウンセリング分野の中でも、特にEAPメンタルヘルスカウンセラーの資格を取得しようと挑戦しているカウンセラーたち向けのものです。
EAPとは、”Employee Assisitannce Program (従業員支援プログラム)” の頭文字をとったのものです。
昨日受けたトレーニングはEAPメンタルヘルスカウンセラーの資格取得を目指す人を対象としていますが、その内容については、一般的なメンタルヘルスカウンセリングに対しても非常に効果的なトレーニング内容です。
ここではEAPに特化したものというよりも、昨日のトレーニングを受けて、自分が「面談力」全般についてあらためて気づかされたことを次にお話しします。
3.トレーニングを通じてあらためて気づいたこと
① 肯定的・積極的受容
まずは、相談者(クライエント)の相談内容を、自分の評価を交えずに無条件に受け止めることの重要性です。 どうしても相談内容に対して、カウンセラー自身の価値観は先入観が勝手な評価を下してしまうことがあります。そうなると、相談者の悩みや苦しみにしっかりと寄り添うことは難しくなります。
私の場合、相談経験を積めば積むほど、過去に自分が対応した案件から勝手な分析・評価のスイッチが入ってしまい、大きなバイアスとなります。例えば、過去の似ている案件対応で理解した(と思われる)相談者の気持ちを目の前の相談者に当てはめてみようとしたり、そのときに相談者と一緒に立てた行動目標や解決策が本件にも適用できるのではないか、と考え始めてしまったりします。
相談者の悩み、苦しみは千差万別であり、一人ひとりが全く異なる環境におかれていることをしっかりと認識したうえで、この自分の悪い傾向については厳に戒める必要があることを痛感しました。
② リフレクション
リフレクションという言葉にはいろいろな意味がありますが、カウンセリングの現場、特に面談の中では「相談者の発した言葉をカウンセラーがしっかりと拾って、同じ言葉を口に出して相談者に伝えること」です。
例えば、相談者が「今、会社の上司からひどいハラスメントを受けており、毎日眠れない」と言ったときに、カウンセラーが「ひどいハラスメント」、「眠れない」などの重要と思われるキーワードを相談者に対して、相談者がその言葉を発した直後に言います。
これは私は相談者に対してしっかりと聴いていますよ、とカウンセラーが伝えることが目的であると思っていましたが、もう一つの目的があることを先生から教えていただきました。
それは、これから1回50分前後のカウンセリングを行っていく中で、重要と思われる事項をカウンセラーの記憶により確実にとどめるようにするためです。
ちなみに、リフレクションは、相談者の発言の文章を捉えるのではなく、ワンフレーズで返すのが効果的です。例えば、上記の例ですと、「上司からひどいハラスメントを受けている」ではなくて、単に「ひどいハラスメント」または「ハラスメント」という短い言葉で返します。
実際にやってみると、このリフレクションを入れるタイミングが非常に難しく、相談者の話をさえぎってしまうように感じたり、リフレクションのことばかりに気をとられて肝腎の話の内容の理解がおろそかになったりします。 実践の訓練をどんどん積んで、リフレクションを上達させていきたいと思います。
③ 要約する力
要約とは、相談者が相談内容をある程度話した後に、その内容をカウンセラーが整理する形でまとめ、それを相談者に伝えることです。
そうすることによって、相談者を悩ませている出来事や環境、それに対する相談者の気持ちや考え方、相談者のとっている行動、相談者に体調などについてカウンセラーが受け取った情報が相談者と一致しているかを確認することができます。
また、それ以上に大事なことは、相談者の話をしっかりと受け止めているこということを相談者に伝えて、相談者との間のラポール(信頼関係)を形成していくことに役立ちます。
なお、この要約のときにも大事なことは、相談者が発した言葉を最大限に活かしながら要約することです。 カウンセラーが要約という名のもとに、別の言葉で言い換えてしまうと相談者の意図と離れてしまう恐れがあります。
例えば、相談者が「上司から、一体何年仕事しているんだ、こんな仕事も満足にできないのか、と言われるんです。」と言ったことを、カウンセラーが要約で「上司からひどい言葉でハラスメント受けている、のですね」と言ってしまったりすると、カウンセラー側が「ひどい」という評価と、「ハラスメントである」という評価を一方的に下したうえでの要約ということになってしまいます。
この要約には毎度本当に集中力と理解力とスタミナが必要となります。私がよく犯すミスとその対応策は次のようなものです。
◆あまりにも長く話を聴いたのちに要約しようとするため、相談者の発言した重要な情報が要約のときに抜け落ちている。⇒ タイミングを見極めながら、もう少し短い区切りで要約する。
◆要約の途中でスタミナ切れをおこしてしまい、相談者の発した言葉を活用することなく、自分の頭の中にある別の言葉を使い、さらに、かなりまとめた短い言葉と使ってしまう。
⇒ 相談者の話を聴いている途中で私に雑念が入ってしまったり、先取りしていろいろと考えしまうことが原因であろうと思う。もっと目の前の今起こっていること、今話していることに全神経を集中させる。
④ 質問の方法・ターゲット
ある程度相談者の話を聴き、相談者との間で一定のラポール(信頼関係)が形成されつつあるところで、今度はカウンセラーから相談者に対していろいろな質問をしていきます。 これは今後のカウセリングの中で、どのようにしていけば相談者の悩みや苦しみを少しでも軽減することができるのか、という大前提の上でカウンセラーが必要と考える情報を得るためです。
ここでも私が陥りやすいミス、とその対応策は次のようなものです。
◆ 質問がインタビュー的になりやすい。下手すれば、インタビューどころか尋問的になる危険性すらある。 とかく、自分がほしい様々な情報(相談者の職場状況、職務内容、ポジション、会社や組織の雰囲気、過去の同様事例の有無、体調、既往歴、家族・恋人などポート者の有無などなど)を矢継ぎ早に尋ねてしまうことです。 これでは相談者は落ち着いてゆっくり話をすることができません。
⇒ 常に、自分の質問が相談者を急かしていることはないか、自分の口調が早口になっていることはないか、相談者の沈黙を恐れすぎていないか、などを自問しながら質問をします。
◆ 質問の対象が、(上述の様々な情報のカッコ内でもそうですが)、いわゆる客観的なこと、外部的なことについての情報収集が多くなってしまい、肝心の相談者の気持ち・感情・気分・思い、などについての質問が少なくなることがあります。これでは、何のために質問しているのか分かりません。
⇒ 常に、自分の質問が相談者の感情、気持ちに十分に焦点を当てた質問になっているか、相談者の感情、気持ちに関する発言があったときにきちんと捉えることができているかを自問しながら質問をします。
ちなみに、先生から伺ったあくまでも一般的な話ですが、男性のカウンセラーは「客観的」な情報収集のために「矢継ぎ早」に質問する傾向が、女性のカウンセラーよりも強いそうです。少なくとも私には当てはまります。
⑤ 共感的理解
面談においては、相談者に対して「共感的理解」をすることが求められます。この共感的理解というもの、言葉はとても美しい友好的な言葉であるのですが、なかなか実践するのは難しいものです。
似ている言葉に「同感」というものがありますが、同感は「自分自身」も相談者と同じように感じたり、考えたりすることです。自分が自分の基準で考えてみたら相談者と同じです、というものです。
これに対してカウンセリングにおける「共感」とは、カウンセラーの考え方の基準からできる限り離れて、相談者の物事の捉え方、感じ方、考え方などに入り込んで、「あたかも」相談者自身であるかのように感じたり、考えたりすることです。 もちろん相談者とカウンセラーは別の人間ですから、カウンセラーが相談者になることはできません。
カウンセラーは、相談者の話を積極的な受容姿勢をもって受け入れ、相談者の話に積極的に丁寧に耳を傾け(傾聴し)ていくことによって、相談者の価値観や考え方などを理解することに努め、そのうえで「あたかも」自分が相談者の立場であったならどう考えて行動するのか、という対応を常に実践していく必要があります。
私がよく陥りやすいミスは、相談者のそれではなく、自分自身の価値観や考え方に準拠して、相談者をいわば「理解した気になっている。」ということです。 これでは自分の価値観では相談者の考え方や感じ方と異なるときには、相談者に共感どころか同感することもできませんから、相談者を否定することにさえつながりかねません。 これではカウンセリングの意味がありません。
常に自分の価値観に囚われていないか、自分の物差しで測っていないかを自分自身でモニタリングしていく必要があります。 自分自身を突き放してみて、あえて距離を置いて自分の価値観を眺めたうえで、自分の考え方にしなやかさを取り入れることです。
⑥ ねぎらいの言葉
これは上記①~⑤に加えてということですが、昨日のトレーニングのときに先生がカウンセリングのときに忘れてはいけないこととして挙げていました。
相談者はいろいろな悩み苦しみの中でも、これまで、そして今も必死に踏ん張って生活をし毎日を生きています。そして何とかカウンセリング受けに来ています。 それがどんな形であってもその踏ん張りや努力に対して、それを労う言葉をかけることを忘れないこと、を先生は強調していました。
カウンセリングという何か専門的な匂いのする枠にとらわれて、自分がそのような言葉を忘れていないか、ということをもう一度自分に問うてみたいと思いました。
【まとめ】
猫間英介