SM
どこにも書けないからここに残させてください。
今日はSMクラブを卒業することについてボスに話してきた。私が4年間在籍したお店だ。理由をいくつか話して「拾っていただいたこと感謝しています。お役に立てずにすみません」と伝えた。
そんなことはないよ、きちんと話してくれてありがとうとボスは返してくれて、私の卒業が決まった。ボンデージは店で貸し出していたものだけど、ずっと勤めてくれたからあげるねと言ってくれた。
その後も、色々なSM界隈についての話をいくつかしていたけどその中で「らぶちゃんはプレイがうまいと思う」とたくさん褒めてくれた。なんか業界の中心にいるような人にそんなことを言われると心底嬉しかった。最後に「まあプレイはうまいけど、3P向きではないけどね(笑)」と付け足されたけど。この人はよくわかってる。私は複数人プレイが苦手だ。誰にもいったことはない。見抜かれていた。
卒業を考えたきっかけはマゾの存在だった。私はもともとプレイを中心に考える人間で、SとMの間で特別な関係性を構築したいわけではなかった。その信頼関係とやらも、この人なら、という気持ちも正直あまり理解できなかった。これがしたいから、受けられる人を見つける、といった探し方をしていた。
このマゾとも出会ったのはお店で、最初も普通のプレイをしていたように思う。いわゆる稼げるプレイを普通に施した。でも2回ぐらいプレイを重ねた頃に、ある日手紙を持ってきた。それは十年前にS女のパートナーと、しっかりとSMしていたときのこと、その人との別れのあと、結婚や育児に専念していてSMを忘れていたこと。そのときの記憶がはっきりと思い出せたと話してくれた。
いまでも私のSMのブログを見て感想文を書いて送ってきてくれる。先日、「らぶさんは相手の人格を尊重した上でプレイをしてくださる方です。どんなに高度なプレイになっていっても、きっとその優しさはずっと変わらないように思います。」という内容を送ってきてくれた。
このマゾは昔のS女さんに言語化についてしっかり教育されたと話していた。まるでおさーんと私のような関係で笑ってしまう。私もおさーんがいなければ、こんなに文章を書くようにならなかっただろうし、ましてやそれを仕事に活かしてお金を稼げるようにはならなかった。
話を戻すと、そのときの手紙を見て、ああ私も意外とちゃんと誰かとのSMの関係構築をしっかしてるんだなあって自覚した。特にこのマゾとは少なくともそうしている。
このマゾと前回プレイをしたあとの感想というか、そういうものを前回の記事で書いたけど、あのあとから私はソワソワして仕方がなかった。落ち着かなくてご飯も食べずに、でも手を動かしてなかったらおかしくなりそうで、ずっと勉強に打ち込んだ。
前回のプレイのときに、こいつを見るとどうしようもなくゾクゾクする自分がいた。それは"このプレイだから"ではなくて、このマゾがどういう人生を歩んできて、いまどういう状況に置かれていて、何を頑張り、何を取捨選択してきたかを知っていたから。そんなやつが私の前では、途端に情けなくなりひれ伏すのだと思うと、脳内が焼き切れるような感覚があった。
あのときの声が、私の中にこびりついてどうしようもなくて、ずっとソワソワしてしまった。まるで恋みたいに。
こいつとはセックスしたいとは思わない。セックスするよりも、きっと楽しいことがあるから。例えば貞操帯をつけさせて、その上からペニバンを持たせて、挿入したい。キスなんかはしたくない、唾は吐きかけたいけど。
これがSMなんだろうなって思った。まさか自分がこんな感覚になるだなんて思いもしなかった。
こいつと関わっていると、ああもう幅広いプレイをしなくていいやって急に思うようになった。このどうしようもなく変態な私が、"このプレイがしたい"から、"こいつとプレイがしたい"に変わった。
だから急に事業の収縮をしたくなったのだ。幅広くもうプレイはしなくていい、こいつとのプレイ以外はもういらないかもしれないと、私は初めて「この仕事やめてもいい」とその時思えた。
もちろん他の店は大事な収入源だからまだやめられないわけなんだけど、もうプレイに未練はないのかもしれない。だから司法書士になったら、きっとこの仕事からもきっと距離置くだろう。
ああ、今書きながら気づいたけど、きっとこのマゾもこんな気分だったんだろうな。この子とプレイしたお店の子は私だけじゃない。これまで何人もついていた。このマゾは露頭に迷っていたんだと思う。何かを得たいけど、その何かがわからなくて彷徨っていたんだろうな。それを見つけたから、私に「思い出せました」という手紙を持ってきたのだろう。
私がまさか"誰かとのプレイ"を大切にする日がやってくるなんて思わなかった。もっとあと10年ぐらい商業的SMをするのだと信じて疑わなかった。
恋とは別で、誰かを好きになることなんてあるんだね。人生なにがあるのかわからない。