チビデブハゲは需要ある(諸説あり)『ワンパンマン』
やあ、僕だよ。飽き性ちゃんだよ。
僕の中のルールで「記事のために作品を見ない」っていうルールを決めたのだけれど、ついに今日破ってしまったんだ。
昨日の『マネーショート』のマークじゃないけれど、僕も「ハゲを大いなる欠点」と扱う不条理に一矢報いたかったんだ。仕方ないだろ?
人間、やるべき使命を背負って生まれてくる。それがこれだったって、書き終わった後に思えてるといいよね(重い)。
さあ、今日も楽しんでくれると嬉しいな。
作品あらすじと感想
『ワンパンマン』ONE
新都社で最新話まで読了。ヒーローと怪人が存在する世界で、圧倒的強者の主人公サイタマが一撃で敵をぶっ飛ばしていく姿を楽しむ漫画。非常にシンプル。
俗にいう村田版ではなく、ONE先生がウェブで連載していたものである。独特な絵のタッチが受け入れ難い人もいるかもしれないが、それだけで読まなくなるのは損をするので絶対やめてほしい。
読み進めていくうちに、特に青春時代をオタクとして過ごしたあなたは思い出すはずだ。自由帳に描かれた、自分や友だちの漫画。ジャンプ連載漫画より面白い瞬間風速があったことを。『ワンパンマン』はそれがずっと続く。とにかく熱量、センスが常人のそれではない。
ガロウ編まであっという間に読んでしまうと、もはや絵のタッチなんてどうでもよくなってくる。
ちなみに最新話では『モブサイコ100』連載や様々なイラストのお仕事をされた経験からか、絵も各段に上手くなっている。え、これ無料で読んでいいの???
「かっこいいハゲ」といえば本作の「サイタマ」と「ブルース・ウィリス」が同時に思い浮かんだ。どちらか悩んだ挙句、一番くじのフィギュアが素晴らしくセクシーだったことを思い出して『ワンパンマン』を読んでハゲの記事を書こうと思った次第。
きっかけと恋愛遍歴
この記事を書くきっかけになったのはかうぺい氏のこちらの記事からです。
こちらの記事に突然コメントさせて頂いたにも関わらず、心暖かく返信を頂きました。本当にその節はお世話になりました。
その中でかうぺい氏は
ハゲ好きっていう人はウソをついていると思います。
と仰っていて、はてと思った僕はさらにコメントを書こうとしたのだけれど、かうぺい氏の素晴らしい記事を僕の長文で汚すのは憚られたのでこうやって独立して記事を書いている。
僕はハゲが好きだ。
何故ならハゲは彼らにとって少なからずコンプレックスだからだ。
幼い頃、淡い恋心を抱いていた長身の英語の先生、デイビッド。デイビッドは僕の思った通りの白人アメリカ人で、優しくて堂々としていて、奥さんも美人だった(携帯の待受画面が彼女だったので、からかった男子に照れ笑いで自慢するデイビッドは最高にセクシーでキュートだった)。そんな彼もハゲをネタにされると「ハリウッドの俳優みたいだろ」と無理やり話題を変えた。僕はそんな下手なかわし方が特に好きだった。
それからアルバイトを掛け持ちしていた学生時代、発売したてのスマートフォンを買ってくれた彼氏は僕よりずっと年上で、そんな彼はほんの少し薄くなった頭を毎夜こねくり回すのが日課だった。
まだハゲてないのに何でそんなに時間をかけるのか(ホテルでもしていた!)聞くと、「遺伝子に抗ってる、絶対に俺は負けない」と答えになっているようななっていないような答えが返ってきて不機嫌になったので二度と聞かなかった。彼は誰もが知る大企業の役職持ち一社員だった。
そして僕の夫も薄くなってきている。夫のルーツたる親戚の家にお邪魔した際、仏間の上部、ずらり飾られた写真に代々続くハゲ遺伝子を強く感じた(叔母さんが「みんなハゲてるでしょう」とゲラゲラ笑うので僕も一緒に大笑いしたかったが、夫の目が全然笑っていなかった)。
夫は「ブサイクな上に太っていて、これでハゲたら俺も死ぬしかない」と志村けんの訃報を見てぼそっと言っていた。その顔があまりにも真剣だったので「君は不謹慎なことしか言わないな」としか言えなかったのを僕は覚えている。
コンプレックスの魅力
ハゲだけではない、人は誰しもコンプレックスを持っている。
僕自身も毛深いことや体臭がきついこと、眉間にしわがあること、顔や声が覚えづらいこと、努力できないこと、コミュニケーション能力に欠陥があることがコンプレックスだ。
初体験を迎えた際、僕が付き合っていたのは田中圭にそっくりな頭の悪いイケメンだった。イケメンはいい匂いがするというのは本当だと思った。
半面僕は毛深くて体臭がきつい。流れでホテルに入ったので慌てて香水でごまかそうとしたが、一緒に風呂に入ることになり、処理していない腋毛もケアしていない体臭も晒すことになった。
ああ、僕の恋は終わりだな。この後入れる時に緊張してストレス臭で萎えて終わり。
でも初体験は無事幸せに終わった。
奇跡的に彼は鼻炎だった、しかも腋毛を気にしない性質だった。
そして急に思い出したのだ、女子校の先輩が恥ずかしそうに腋毛を処理するエロスを。僕は初体験を済ませたことで、一つの真理にたどり着いた。
他人のコンプレックスを気にする人間は実はそれほどいない。
むしろそのコンプレックスに葛藤する姿が好きな人間もいる(僕みたいに)。
抗えぬ運命を受け入れた先に
ここまでハゲやコンプレックスについて愛を語ってきた僕だが、嫌いなハゲがある。
バーコードハゲや浮いたかつらの下のハゲだ。嫌悪感を持つハゲの代表格だろう、僕だってあれは嫌いだ。
コンプレックスに葛藤し、改善しようとする姿勢は評価しよう。けれど、バーコードやかつらには「なかったこと」にしようとする卑屈な魂胆が見える。
そこが僕と彼らが合わない理由だ。そういう奴に限って「女は若いのがいい」だの「胸や尻は大きくてウエストはくびれてる方がいい」だの宣う。
繰り返し言うが、人は誰しもコンプレックスを持っている。
そのコンプレックスは持った瞬間から「なかったこと」にならない。例えばデブの経験を持つモデルがいたとして、そのデブを見事努力で乗り越えてもデブだった時代はなくならない。
だからこそ、コンプレックスと向かい合い、自分の長所を伸ばし(あるいは長所に変化させ)よりよい人間になろうとする姿に僕は魅力を感じる。
画面の前の君だって、そうなんじゃないのか?
結局僕は夫が好きって話がしたかったみたい
そういえば夫の前に付き合っていた恋人は低身長の男の子だったのだけれど、その子身長が低身長なことを活かして可愛い女装を楽しんでいた。これもまた、コンプレックスを活かした好例と言えよう。
今でも夫ではなく、その子と結婚すればよかったかもなんて思うことがある。でも僕は彼を大事にできなかったし、多少モラハラ気味の僕を「お前も大した人間じゃないよ」ときちんと止めてくれる人間は僕にとって唯一無二だ。
そう、デブハゲ(しかもブサイクで低収入)でも夫は世界でただ一人しかいない。それに彼は長身で、デブを改善したら「セクシーなハゲ」に昇華する可能性を秘めている。これをみすみす逃すわけにはいかない。
なので、かうぺい氏を愛すことはできないが、ハゲ愛を叫ぶ機会を作ってくれたことをここに感謝申し上げます。