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「名誉男性」として認めて欲しいわけじゃない

『虎に翼』第4週で印象的だった花岡と寅子の口論。直後に花岡が崖から落ちて負傷し、有耶無耶になってしまったのだけど。

「君たちは優秀だから、初の法科女子学生として尊敬し、敬っている。それ以上、何を特別扱いして欲しいんだ」
「そうじゃなくて、女性全体を低く見ていることを自覚して欲しいんです」
はい、ここですここです、従来の朝ドラとは違うところ。

この会話を私流に現代訳すると、こうなります。
「君たちは優秀だから、初の女性管理職につけた。尊敬し、敬っている。それ以上、何を特別扱いして欲しいんだ」
「いえ、"名誉男性"として特別扱いして欲しい訳じゃないんです。そもそも女性達全体を下に見ている価値観があることを、自覚して欲しいんです」

従来の「女性版桃太郎」的な朝ドラだったら「こうして、A子は女性初の○○職人として、認められることになりました」ちゃんちゃん、という展開になったでしょう。それが従来の朝ドラを私(たち)が自分の物語として見られなかった理由のひとつ。『とらつば』では、ヒロインたちが「名誉男性」として認められることをもってよしとするのではなく、そもそも特別な女性だけを「名誉男性」として受け容れる構造のことを問題にしてくれる。

日本企業エリート男性の本音?

個人的な経験について話をします。私が会社を辞めて自費でコロンビアMBAを取得するために留学していた、30年も前の話です。90年代初めで、アメリカのビジネススクールでは日本人留学生の数が最も多かった時代でした。そして、その6〜7割が企業や官公庁から選抜された男性でした。

たまたまクラスが一緒になったかで、企業派遣の日本人留学生たちとグループワークした後に打ち上げで飲んだ時のことです。酒が入って気が大きくなったのか、男たちはこんな話を始めました。

「俺はね、女がいかに優秀でも、俺の1.2倍優秀でも、認めないから」
「俺は2倍でも認めない」
「俺は3倍でも認めない」
次々と同調する彼ら。とうとう「6倍でも認めない」という結論になりました。

女性で自費で留学している私の目の前でそういう話をすること自体にも呆れたのですが、私は日本企業のエリート男性の中にある女性蔑視の拭いがたさを見た気がしました。そして、おめでたいことに、彼らは日本企業の男社会が彼らに6倍もの下駄を履かせてくれていることに気付いてないことにも気付きました。その結果、私は、日本に帰国して、男性の6倍優秀でなくてもキャリアを築かせてくれる外資系企業の人事の道で男女の若手リーダーを育成する職に就きました。

だから、『虎に翼』で花岡がこの先、寅子たち優秀な女性を対等の仲間として認めて共闘していくのか、優秀でない一般の女性たちに対してどう接していくのか、注視していきたく思います。


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