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「声を上げた女に、このクソみたいな社会は容赦なく石を投げてくる」

毎週月曜日に届く『虎に翼 シナリオ』吉田恵里香さん@amazonが、今週は火曜日でした。密度の濃いシナリオで進んできて、書きたいことも書かねばならないことも最終回に向けて取捨選択が大変だろうなぁと思った先週回の内容でした……きっと収録されていただろうし、断腸の思いで切らねばならなかった編集さんも大変だったろうなぁと思う、放送されなかった場面やセリフが沢山ある中で。

原爆裁判の判決もシナリオ通り全部見たかったなぁ、と思う。それでもぎりぎり、汐見さんが裁判長で、判決理由から読み上げる異例の展開に電話に向かおうとする報道陣を制するかのように声を張った判決理由の尊さよ。敗戦国ではあるけど、原爆投下は国際法違反であることをきちんとロジック化して「政治の貧困」を嘆いた裁判官チームに敬意を表する。この判決のおかげで被爆者支援法ができたのだから、支援法以前の状態に置かれた被爆者やその家族の窮地を思わずにはいられない。

なので、原爆裁判の被告者のひとり、吉田ミキが山田轟法律事務所でよねと交わす会話のシーンが、心を打つ。

吉田「あなた綺麗ね。凛としている」
よね「……どうも」
吉田「……私、美人コンテストで優勝したこともあるの」
よね「……」
吉田「自分で言っちゃうけど誰もが振り返るほどの美人だった……今日上野駅で降り立った時にそれを思い出したわ。振り返った人の顔付きは違ったけれどね」
よね「……」
吉田「そういう【かわいそうな女】の私が喋れば、同情を買えるってことでしょ?……まあでも他の誰かに、この役を押しつけるのも気が引けるしね、仕方ないわ」
よね「……やめましょう」
吉田「え」
よね「証人尋問、取りやめにしましょう」
吉田「!……心配しないで、ちょっと弱気になっただけよ」
よね「……あたしの相棒は、もともと反対していました。『あなたを矢面に立たせるべきではない。たとえ裁判に勝ったとしても、苦しみに見合う報酬は得られない』と」
吉田「!……でも私が前に立たなきゃ負ける。だから何度も私たちにお願いしてきたんでしょ?」
よね「……声を上げた女に、このクソすぎる社会は容赦なく石を投げてくる。傷つかないなんて無理だ。だからこそ、せめて心から納得して、自分で決めた選択でなければ」
吉田「‼」
よね「……今のあなたに耐えられますか?」
吉田「……でも私伝えたい、聞いて欲しいのよ。こんなに苦しくて、辛いって……」

あえて、シナリオのト書きの感情表現は外した。入山法子さん演じる吉田ミキと土居志央梨さん演じる山田よねの表情や間が、シナリオの行間さえも演じきって、本当に凄かった。

そして、この名場面の前にも、岩居弁護士と轟とよね、三人の会話で、よねの闘う姿勢を支えているものが何かを伺わせる名台詞がある。

よね「どの地獄で、何と戦いたいのか、決めるのは彼女だ」

よねは、自分の選んだ現場で、自分のすべてと日本国憲法と諸法規をもって、このクソすぎる社会と戦うことを選んだ。そして、戦えない、自己決定できない弱者を、かつては軽蔑に近い感情すら見せていたけど、今はそうした弱者たちのために、戦うことを選んだ。

吉田ミキさんの供述を轟に読ませたのは、法廷では寅子と自分以外の全員が男という状況を計算してのことだと思うが、きっと、よねが徹夜で書いた原稿だったろうな。被爆直後の吉田ミキさんの描写は残念ながらカットされていたけど、子供を授かっても乳を上げられず、流産を繰り返し、夫に去られたというだけでも壮絶で……。


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