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雨だれ、石を穿つ時が来たよ

『虎に翼』第22週「女房に惚れてお家繁昌?」第108話。小橋の「わかる」に始まる実感こもった説諭もコメントしたいけど、今日はまず、秋山さん。

寅子「秋山さんは、あの地獄にいるんだ」

「あの地獄」という言葉で、寅子が弁護士として挫折した妊娠→退職を思い出すと同時に、明らかに若い頃の寅子の顔がフラッシュバックで出て来る。

穂高先生に出産育児に専念するように助言(というより、それが当然という口調で言われたっけ)された上に「雨だれ石を穿つ」という言葉を引用され、かっとした寅子が「私は私の話をしているんです」と返す場面。

今回は、出て行った寅子を見送りながら、穂高先生と桂場が会話する未放送場面のやりとりも含めて見せることで、より俯瞰的に。

秋山の話に戻る。

「男と女の辛さを一括りにされたくない」
「母になるのは嬉しいんです。でも、まさか、今なんて」
「女は、人の三倍頑張って、やっと男と並ぶと教えられて来て。だから私は五倍頑張って、いつもキレイな姿で、何てことないように振る舞って、やっと、少しずつ、仕事で認められるようになったのに……」

『虎に翼』第108話

わかる!わかりますとも。寅子が「あの地獄」にいた時、私も、かつて日本企業男性が飲み会で「女は男の六倍できなきゃ認めない」と放言した場面を思い出して悲憤慷慨しましたもの。

「名誉男性」として認めて欲しいわけじゃない

しかも秋山さんは身なりも化粧も手を抜かずに完璧にしている。きっと「女としても、妻としても、主婦としても、母としても完璧」であらねばならないと努力し、その努力の過程をつゆほども感じさせないんだろうなぁ。

しかも、司法修習生で同期だったよねさんに化粧しろと言う、ある意味、若さゆえに「べき論」が強くて、人が自分のようにならない理由や事情について配慮することができないんだろうなぁ。

でも、秋本さんみたいな女性が、仕事を続けられる環境をつくることが、今の寅子の役割。

寅子は、秋山さんや後進の女性たちのために、道を切り開こうとする。かつての自分は女性弁護士最後のひとりになってしまい、孤独で協力者もいなかった。今は、法曹界に残った仲間も、家庭に入ったり別の道を選んだりした元仲間も、ネットワークができつつある。

雨だれ、石を穿つ時が来たよ。もうすぐだよ。


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