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かにすき

東京人には冬になったら蟹を食べに行く習慣がない。

なので、関西で14年暮らした中で、関西人の冬の楽しみは家族や友人と日本海側に行って、温泉に浸かって、かにすきを食べることだと知ったのは新鮮だった。城崎温泉が有名だけど、たまたま竹野の民宿と懇意だった友人がいて、何度か竹野に一泊二日で蟹を食べに行く旅行を経験した。

丹後エクスプローラーではなかったけど、ほどよく列車に揺られて、三田、丹波篠山あたりの山の中を通り抜け、やがて城崎温泉に出て、竹野に着くと海が見える。兵庫県は瀬戸内海にも面してるけど日本海にも面している関西唯一の県だけあって(で合ってる? 一応関西という地域の限定をしておいた)まったく違う海岸風景を見ることができる。雪雲が厚くて空が暗い。

温泉に浸かった後は、蟹ざんまい。甘みのある生の蟹脚肉が味わえる刺身も香ばしい焼き蟹もいいけど、関西では、やはりかにすき。そして〆の雑炊。これに尽きる。

東京に戻ってきて、蟹を食べに気軽に一泊二日するのが難しいと感じた。もちろん上越新幹線とか北陸新幹線とか使えばできるけど、フットワークの軽さが違う。熱海とか伊東とか伊豆半島で太平洋側の魚を食べる方が気軽。

以前は一冬に一度は函館に旅行して、市場で見た蟹を買って東京に冷蔵で送る贅沢も楽しんだけど、今は猫との暮らしが最優先で泊まりがけの旅行に出られない。蟹を食べに外食するのも、よほどの理由と金銭的な余裕がないとその気になれない。

だが、今年の正月明けのオオゼキで、正月前には3肩(1.5はい分)6,500円だった冷凍ズワイガニが、2,000円だった時には即決で買った。しかもぱっと見でも大ぶりで、そこそこ身入りがよかった(オオゼキの魚売り場は毎日いろいろ見ているので、あらの品質を確かめて値打ちだと思ったら買う、というレベルまで目が肥えているのだ)。冷凍庫が手狭になって繰り回しに苦労したが、やっとひと肩分、リリースだ。一晩かけて、キッチンペーパーに包んだお蟹様をダブルチャックの袋に入れて冷蔵室で解凍した。

自家製の白だしを薄めて出汁をつくり、ぐつぐつしたところで火を弱め、蟹、葱、水菜の根っこに近いところ、ヒラタケを入れて、ようやく食す。


一人でかにすき

竹野でいただいた生のズワイガニには遠く及ばないけど、蟹を囲んだ友人たちとの思い出と、お値打ち感をトッピングして、美味しくいただいた。お腹がいっぱいになったので雑炊は諦めたが、蟹の殻をしっかり煮出した出汁が取れたので明日にでも楽しませてもらおう。



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