サービスブループリントの書き方〜サービスデザイン軸から考えたとき〜
サービスブループリントとは
サービスブループリントは、サービスがユーザーに提供されるまでのプロセスを、サービスの提供者やシステムの動きと合わせて視覚化し、可視化することができるツールです。
通常、1サービスはユーザーに見える範囲(フロントステージ)と見えない範囲(バックステージ)に分けられます。そのためバックステージの様子はユーザーには見えず、バックステージ側もフロントステージ側の詳細がよく見えずにサービス設計並びに業務推進をしてしまう可能性があります。
そこでサービスブループリントを使用することで、1枚図でサービス全体を可視化し、フロントステージとバックステージの動きを一貫して整理することが可能となります。サービスの運用・設計を行う際に、サービス提供者側の論理でサービス設計及びビジネス設計がされるところを、ユーザーを中心に置きながら機能検討や業務プロセスを整理することを実現できるフレームワークと言えます。
サービスブループリントの使用範囲ですが、狭義ではサービスデザイン時に利用しますが、広義では収益モデルの最適化を考慮したビジネスデザインのシーンにも適用可能です。
サービスデザインの範囲では、TO-BEのカスタマージャーニーを描いた上で、ユーザーの利用シーン(ユーザーの行動)を横軸に設定し、縦軸に各シーンや行動から想定され必要となる機能に落とし込む方法で書き進めます。サービスで必要となってくる機能をユーザーの行動に合わせて落とし込むことをイメージして進めていきます。
一方でビジネスデザインを主軸に考える場合には、横軸はサービスデザインを軸にした場合と同じですが、提供するサービスそれ自体の機能よりも、管理画面側もしくはバックヤードの動きを含めてプロジェクトの構造を考慮していきます。該当するオペレーションがどうすればよりスムーズに流れるか、換言するのであればどうすればユーザーに素早く価値を提供できるのか、また収益構造をより最適化できるのかをイメージして書き進めていきます。
今回は、まずサービスデザインを軸としたサービスブループリントの書き方を説明します。
サービスブループリントを利用する上でのポイント
まず始めに手段と目的が逆にならないようにサービス検討時に何故サービスブループリントを使用するのが有効なのか、前提・課題・使用メリットの3つに分けて説明していきます。
1.前提
サービスデザインを軸としてビジネスを考えた際、ビジネスのプロセスをユーザー視点で考えた試作を実現・実行し、持続可能にすることが必要となり、そのためにはユーザー視点で事業プロセスを設計することが必須となります。
2.課題・懸念点
しかし、ユーザーを理解するためにカスタマージャーニーマップなどのフレームワークを使用しながらユーザー視点の理解に努めることで留まってしまうと、現状の組織的な側面から捉えることや部門内の思考性の違いを置き去りにして進めてしまうことが懸念されます。また、ユーザー視点で考えたもののみを軸にし、組織視点を据え置いて進めた場合、現行の組織にはまらないサービスとなってしまい、理想系のみが先行し現実的に実行できるサービスでなくなってしまう可能性もあります。従って、サービスを実行する際、ユーザー視点で分析した後に一度組織側の視点に観点を戻した上でユーザー視点とのバランスを取って考える必要が生じてきます。
3.サービスブループリントを使用するメリット
そこでサービスブループリントを使用すると、ユーザー視点の考えと組織の内在的な課題を両立して考えることが可能となります。また、ユーザーの行動から機能要求に落とし込み、上流工程からシステムサイドまでのブレイクダウンをすることも実現します。そのため、サービス実施に向けてユーザー行動から落とし込んだ機能要求を各工程毎に詳細に整理することで、UIUX要求含めた機能要求の整合性を確認できることが大きなメリットと言えます。また案件のチームメンバーについても、サービスブループリントの一枚図でサービス全体を確認することができることからメンバー間の認識齟齬を防ぎ、チームのメンバーが同じ目線でサービスについて議論・検討を進めることが期待できます。
サービスブループリントの実際の書き方
書き進め方については、大枠としてユーザーから見える範囲・見えない範囲の2つの側面からアプローチしていきます。それぞれ下記のように分類分けします。
ユーザーから見える範囲:「フロントステージ」とし、「ユーザー体験」を記載する
ユーザーから見えない範囲:「バックステージ」とし、サービス提供に至るまでの「業務プロセス」を記載する
この作業を行う際には、起点をユーザー行動とすることで、ユーザーから見えているフロントステージとユーザーから見えないバックステージのサービス提供者やシステムがどのように連携しているのかを視覚化することができます。
また、サービスデザインを軸とした際は、それぞれのユーザーアクションがどのような機能に結びつくのか詳細に記載することがポイントとなります。ここの記載が大雑把すぎると機能の整合性が取れなくなってしまう可能性があるため、詳細に考えていくことが必要となります。
サービスブループリントの効果的な場面
サービスブループリントは他領域のステークホルダーが多く関わるプロジェクトでより効果を発揮します。そのため、ユーザーを中心としつつ、フロントステージとバックステージの2つの側面から関連性を明示することで、機能要求が全体としてどのような流れとなっているか可視化することが期待できます。
具体的な使用フェーズとしては、PJ初期とPJ後期でそれぞれ考えてあげると良いでしょう。
PJ初期に使用した場合
初期設計時にユーザー視点を軸に機能単位でシステムを整理し課題分析することができます。また、機能の漏れや不足を確認する際に有効的です。まずは現行の業務整理(AS-ISの整理)から始め、その後TO-BE整理と進めていくことで、よりサービスへの理解が深まり議論のポイントも明確化しやすくなるでしょう。
PJ後期に使用した場合
サービスのプロトタイピング実施時期に、施策対象となる将来的なユーザー体験にフォーカスしてサービスを再検討することができます。プロトタイピングに対するフィードバックを元に、サービスに存在する接点や再度機能同士の関係性を可視化することで、サービスをさらにブラッシュアップすることが期待できるでしょう。
使用フェーズを2つに分けて挙げましたが、一貫してサービスブループリントは何度もブラッシュアップすることでより効果的です。具体的には、一回で完璧なものを記載しきるよりも、議論をしつつ更新を加えていくことで、短期間でより精度の高いサービスを作ることに繋がるでしょう。
<記入例>
出前のサービスを例にサービスブループリントを使用して記入例を挙げています。記入例のようにサービスブループリントを記載することで、ユーザーのアクションからシステムの機能に落とし込むことができます。また機能に紐づくシステムのプロセスを記載することで、システム全体の流れを可視化することが実現できます。
※)参考
下記は弊社で実際に1案件で作成したサービスブループリント
サマリ
今回、サービスデザインサイドから考えたサービスブループリントの書き方について説明させていただきました。サービスブループリントをサービスデザインサイドから記載することで、
ユーザーの行動を起点にしつつもサービスの提供プロセスに主軸を置き可視化を行うことができる
ユーザーの行動を起点に機能要求に落とし込むことで、システムの流れや機能間の整合性を確認することができる
ことが大きな特徴かと思います。
また、サービスデザイン、ビジネスデザイン、どちらを軸に記載するかによって実現できることも変わってくるため、用途に合わせて記載軸を検討することが望ましいでしょう。
最後にビジネスデザインサイドとの違いを図表化しましたので、理解の一助になれば幸いです。
アイスリーデザインで実施しているUI/UXデザインにおけるサービスの特徴、手法や関連事例などについては、こちらをご覧ください。
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