感電
花を茎から手折る時、僕は貴方が生きていると感じられて、僕は貴方の存在を理解する事ができるのです。と、彼は言い、落雷のような衝撃を私の頸に与えた。誰が何と言おうと、花にも頸があり、指があり、こころがあるのに、なんて容易く、私の身体は奪われてしまったのでしょう。摘蕾された私の子ども。簡単に奪い、簡単に我が物にし、簡単に飽きてしまう彼は、まあるくてやわらかい純真な膨らみに、とあるヒトの頬を憶い、手を伸ばして絡め取って行った。だいじなものを奪われる他者の感情に目もくれず、身勝手な愛情を塗りたくった指で私の目の前から私の一部を摘み取り、だいじにするなんて愛を嘯いて満足した先に、貴方は幸福になるのでしょうか。流れた血液を汚いと手を洗い、傷口を無闇に濯ぎ、まるでそれさえ愛だと言わんばかりに千切れた頸にリボンを結んで、貴方はそれを飾っている。総て、見ている。私は貴方のそのひとつひとつの行動、総てを私の子どもの恨みと悲しみと痛みと憎しみと共に私が代わりに見ています。どうかこの熱視線に溺れて噎せて痺れて焼かれて私を感じてください。
愛は、いつでも誰かを不幸にし、哀しませ、そうしてその責と共に深くなっていくものです。
愛は、いつまでも満たされない貴方の乾きを潤す為に、何度も生まれ、枯れて、そうしてまた出逢う為に蕾を膨らませていくものです。
愛は、彼女が云った愛は、花瓶に綺麗に生けた花の事。芽吹き、膨らみ、咲いて、枯れ落ちる花の事だから、僕は、家の前のアスファルトの隙間に咲いた花は愛だと憶いました。遠い、陽射しのあたたかな日の憶い出がよみがえり、僕はこの花たちは愛の証明だと信じて疑わなかったのです。
(もういちど、)
(もういちど、)
(もういちど、)
(もうなんど、
何度とか、数えなくても、貴方が幸福なら。
【<br >】――――感電