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夏なので好きなインディー・フリーホラーゲームを紹介します。

はじめに

 今年も暑いですね…。ここ1・2日は湿度がひどくてだいぶ参ってました。
 そこで、この夏を乗り切るため私がここまで遊んだ中でお薦めのホラーゲームをいくつか紹介します!
 
私の嗜好が反映されるため個人制作の作品ばかりとなりますので了承ください。私の好きなメタフィクションホラーを中心に、単純に怖いもの、怖さの中に美しさを感じるもの、人生に影響を及ぼすものまで様々な作品を揃えましたのでぜひ夏の夜に遊んでくださいね!
 また、8/10~9/1までX(twitter)で #納涼ホラゲホラ絵祭 というホラーゲームの紹介・アート・実況のハッシュタグイベントが行われてます!私はもともと「今年の夏はホラーゲームを実況したい」と思っていたのでいい機会として参加させていただきます。こちらもぜひチェックしていただければありがたいです。


大好き!メタ要素の強いホラー

ドキドキ文芸部・ドキドキ文芸部プラス

プレイ時間:3~5時間
一言:人によっては人生が変わる作品、私とか
※このゲームはお子様や精神状態が不安定な方には適していません。

 高校生の主人公が幼馴染に誘われて文芸部に入ると、部員は快活、内気、ツンデレ、知的な美少女4人だけで、その美少女たちとコミュニケーションしながら詩を書いていく…。
 まるでギャルゲー・恋愛シミュレーションのような導入から始まるメタフィクション・インディホラーの歴史的な作品です。そして私にとってはおそらくインディーゲーム・フリーゲーム・ノベルゲームを愛するきっかけとなった人生最重要作の一つです。
 リリースからかなりの年数が経っているので内容は漏れ伝わっている人も多いとは思いますが、今作はある瞬間から物語、登場人物、そしてゲームそれ自体が壊れていきます。その壊れっぷりがジャンプスケア的びっくりでありながらじっとりとした怖さもあり、想像を遥かに超え、執拗で…初見では「やめてくれ…」と戦慄しました。ゲーム自体が主人公を超えてプレイヤー自身にまで牙をむいてくる、メタフィクションホラーの面白さ・怖さを存分に味わえます。
 ただ、今作はメタフィクションホラーの傑作でありながら、それだけですまいないものがある作品です。ホラーゲーム紹介記事でこれを言うのも違うかもしれませんが、恐怖は今作で得られる体験の本質ではないとさえいえます
 これは私が書いたものではないのですが、今作について本当に好きな感想で、

プレイ時間:3時間~5時間、あるいは一生

というものを読んだことがあります。私もプレイ時間が一生になってしまった一人です。今作で得られるエモーション、人によっては忘れられない強烈な思い出と喪失として残るでしょう。
 今作はこの物語が「ゲームの中の世界」であることを強烈に意識させますが、裏腹に、いやだからこそ徹底的に「人間」を感じさせ、人によっては強烈な思い入れを今作、そして今作のヒロインたちに抱くでしょう。私もゲーム内であることをした結果としてある決定的な画面が出た時、思わず脱力して椅子にもたれかかり、しばらく動けなかったことを覚えています。そして、この4人のヒロインたち、とりわけある一人にものすごく複雑で忘れられない思いを抱きました。
 それはそれとして本当に怖いのでまずはその恐怖を味わい、その恐怖があるからこそ見えるその先、人間の物語に触れて欲しいです。
 私がノベルゲーム・フリーゲームというジャンルにハマるきっかけとなった、本当に特別で、運命的で、皆さんにも一度は体験してほしい作品です。


Pony Island

※日本語非対応作品(非公式modあり)
プレイ時間:2~3時間、実績全回収で5~6時間
一言:何を言ってもネタバレになる

 日本でも話題になった「inscryption」のクリエイターさんの過去作になります。「inscryption」も大好きですが私が一番好きなのは今作になります。
 「Pony Island」というかわいいポニーのアクションゲームが遊んでいくうちにどんどん壊れていきます。それを様々な手段で修理したりこちらから壊したりしながら、ゲームに隠された謎へ向かっていきます。アクションの難易度は部分的に高いですが、ミスしてもすぐやり直せるのでストレスなく遊べるのもいいところです。
 「何を言ってもネタバレになるゲーム」と言われるようにこれ以上は言えないのですが、とにかく世界観が強烈に構築されています。世界観は「inscryption」にも通じるところがあり、「inscryption」のファンの方も楽しめるでしょう。
 ゲームプレイ中はグリッチ表現を始めとして様々な表現が矢継ぎ早に訪れます。ただ、めちゃくちゃ怖いというより「なんか不気味だなぁ」とか「えっ何これ?なに……これ………?」「なんかやばいやつ」といった、抽象的だけど確かに怖い感じなので、ガチガチに怖い表現はちょっとという方でも遊べる…かな?と思います。「次は何が来るの…?」とわくわくしながら遊んだのを覚えています。ただ、私が西洋的ホラーにあまり恐怖を感じないタイプなのでその影響はあるかもしれません。
 抽象的な断片から読み取れるストーリーも、不意に思い出すような独特の味わいがある作品です。ゲームが進むごとにデザインや色彩が変わっていき、そこから何かが読み解けそうで、でも読み解ききれない、そんな考察が捗るタイプの作品です。だからこそ日本語対応がされていないのが…。続編のアナウンスがされているのでぜひ公式日本語化をパブリッシャー様にお願いしたい…!!


パルフォン

プレイ時間…30分~1時間
一言…見つけた!感が本当に良い

 実際のwebサイトやSNSを検索しながら都市伝説について調査をする短編ホラーゲームになります。実際のサイトやtwitterアカウントが呈示され、それを実際に調査しキーワードや謎の答えを求めていきます。最近のモキュメンタリーホラーブームにも通じる先駆的な作品です。
 実際のサイトを読み解いたりSNSのタイムラインを追ううちに、まるでこの都市伝説やそれに伴う事件が現実かのように思えてきてしまうのがかなりスリリングです。私はネット上のオカルト話が好きなのですが、そのジャンルでよくある不気味な書き込み、謎のサイトを調査する類の記事や動画を自分自身が当事者になってやっている気分になれました。
 最近で言うと「かがみの特殊少年更生施設」を思い出す方もいると思いますが、本作は調査で得た情報を通じてゲーム内の登場人物と会話する面があり、また違った感触で楽しめます。登場人物も非常に魅力的なのでそちらもぜひ楽しんでほしいです。登場人物の素性など、短いながらもある種の逆転があり「あっ」となります。
 今作の作者であるHIJIKIさんの作品が私は本当に好きなのですが、今作が作者様を知ったきっかけの作品なので個人的にも思い入れ深い作品です。最近の作品に繋がる要素もあって、HIJIKIさんの作品に触れるきっかけにしてもらうのもいいんじゃないかなって考えています。


怖い!とにかく怖くて怖いやつ


神石師

プレイ時間…4時間程度
一言…泣きそうになりました
※途中、追いかけられる要素やショッキングな画像&音がございますので、心臓の弱い方、繊細な方はご注意ください。

 現世と異界を行き来しながら神石師(じしゃくし)という一族の運命をめぐる人間と怪異の物語に二人と仲間たちが立ち向かう探索アドベンチャーゲームとなっています。
 今作は心霊ホラー・オカルトホラーというジャンルに入りますが、本作の怖さが私にはクリーンヒットして、ある演出で本当に泣きそうになりました。とてもJホラーらしく、びっくりではないんだけど、生々しく、湿っていて、思わず顔が歪んでしまうような恐怖を堪能することができます。ちなみに私が泣きそうになった演出は音を使った演出ですので皆さんも遊ばれる時はぜひイヤホンやヘッドホンを使っていただければと思います。
 探索自体の難易度はそこまで高くないですが、怪異の謎を解いたり、儀式を決行する際に「段取り」を問われる場面が多いように感じた作品です。その段取りを間違うといきなりゲームオーバーになることもありますが、その手間ゆえに怪異を祓った際には「本当に自分が祓ったんだ…助かった……」と、まるでホラー映画の主人公が怪異溢れる館を脱出して息があがったまま館を振り返り見つめるシーンの主人公になった気持ちになれます
 また、今作は主人公と彼をめぐる周囲の登場人物もキャラが立っていて魅力的です。しっかりやってくれる感じのキャラが揃っています。今回、作者様の次作である「槨の家」とどちらを紹介するか悩んだのですが、「槨の家」が「神石師」のスピンオフであることと私が「神石師」の綾ちゃんが好きなので「神石師」を選ぶことにしました。あと島くんが嫌いな人はいないと思う。


返校

プレイ時間…約4時間
一言…本当に怖いし、同時に知るべきものがそこにある。

 その怖さから非常に話題になり映画やドラマにもなった台湾のホラーゲームです。1960年代、戒厳令下での台湾の学校を舞台に二人の学生が異界と化した学校からの脱出を目指します
 ゲームプレイは2D横視点の探索型アドベンチャーとなっています。各エリアを探索し、怪異から逃れつつアイテムやフラグを回収しながら脱出路と真相を求めていきます。
 インディーゲームはアートスタイルに特徴があるものが多いですが、今作はそのアートワークが現代的かつ、水墨画というか東洋画的といいますか非常に独特で、それを見るだけで恐怖、切なさ、そして憧憬を感じさせてくれます。そのアートスタイルで描かれる東アジア的な宗教、文化、怨念は恐ろしくもある種の馴染みさえ感じるものとして現れてきます。真相に迫るたびどんどん学校という舞台から蓄積された情念それ自体へと沈んでいくような感覚があり、恐怖の中に吸い込まれていきます。
 本当に怖い演出が各所にあり、声を何度もあげてしまうほどでした。同時に、今作はその恐怖の背景にある物語も本当にいいです

  • 進むたびに思い出されていく記憶

  • 見えてくる真相

  • 主人公の真実

  • 全ての悲劇の通底音として鳴り続ける当時の台湾国民党による強権政治

 と、恐怖から個人が見え、個人から集団が見え、集団から社会が描かれていきます。ホラーというジャンルには社会が反映されることがしばしばあります。今作も、この恐怖を作り出した社会、そしてその社会の姿が翻って私たちの今と過去を見つめ返してくる重要な作品です。 


みんなの塗りつぶし健康ランド

プレイ時間…5分程度
一言…塗りつぶそう!

 指示に従って塗りつぶしをする作品です。

 これ以上は言えません。

 今作は、いわゆる「呪いのゲーム」的に扱われるのを見たことがある作品です。それだけあらゆる手段で怖がらせてくれます。かなり人間の心、特にここ10年ぐらいの日本を生きる私たちに刺さるようなものが描かれています。かなり怖いです。ある程度覚悟して塗りつぶしに行ってください。
 あと、ある理由で実況にはあまり向かないかな…?と思います。逆にいいというのもありますが、やるなら生配信より動画の方がいいかもしれません。


怖さの中に美しさがある作品

回顧、来ぬ

プレイ時間…4~5時間(かなり前後あり)
一言…夏の一日を今作に捧げてほしい

注意:ゲーム内には、血液描写・虫・自傷・ホラー演出などグロテスクな表現が含まれています。13才以上であり、上記の演出を享受できる方のみにプレイを推奨します。また、この物語はフィクションです。現実の人物、団体等には一切関係ありません

 岐阜を舞台にした民俗ミステリーと怪異ものホラーを合わせたビジュアルノベルとなります。ゲームプレイ要素もありますが難易度はかなり低いので実質読み進めるタイプの作品だと思っていいでしょう。
 今作は、ゲーム・小説・映画など私が触れて来た物語たちの中でもここ数年最高級の物語、シナリオだと思っています
 そもそも文章が本当にうまいです。
 タイトルが本作のモチーフである「蚕」と「絹」にかけてあるところに代表される通り、一言一句にこだわりがあります。比喩やレトリック、文体を過度にならない程度に使いつつ、情報呈示の順番も的確でありながら意外性もあり、でも同時に決して難しくもないという素晴らしいバランスなので長い物語でもどんどん読み進められます。同じく文章を書くものとして羨ましささえ感じる文章です。その文章力で描かれる若者たちの日常や恐怖演出、そして単純な地の文、全てを味わってほしいです。ホラーとしても、ミステリーとしても、超常現象ものとしても、青春物語としても本当に面白い作品です。
 そしてストーリーはどんどん意外な展開が続き全く飽きさせません。ただ同時に前半から丁寧に伏線が振られ、それが予想を超えたタイミングで回収されているので「あれギャグじゃないの!?」「うわここでこんなこと言ってるじゃん…!」「えっじゃあ次どうなっちゃうの」と読み進めるためのクリックが止まらなくなります。ぜひ、一日で読み切るつもりでしっかり時間を取って挑んでほしい作品です。読み終わった後、本当にすごかった…、となるだろう、特別なビジュアルノベルです。


Serpenters

プレイ時間…1~2時間
一言…怖い超えてヤバい。

 ブラック企業という言葉さえおこがましいヤバい企業から脱出するためにその中を探索する微ホラーアドベンチャーゲームとなっています。
 サムネイルからもわかるサイケデリックな独特の色彩に打ち込み系のBGM、そしてぶっとんだストーリー、そしてそれらが合わさりゲーム自体が独特のリズムを奏でているような作品です。とにかく作者のセンスが炸裂していて、予想の斜め上からぶん殴られるような展開が続きます。「えー!」「どういうこと?」ってなること請け合いです。あのエレベーターから降りた先にいくつもの衝撃的なものがありました。ただ、はちゃめちゃな展開の中にも独特のリズム感と脱出というテーマの統一感があるので物語に振り落とされることない範囲で振り回され、踊らされながら楽しめるでしょう。
 恐怖シーン、ショックシーンも複数ありますし、結構強烈な映像もあるのですが、前ふりがわかりやすく入っていたり、怖さより鮮やかさが先に来るようになっていたりと、ホラーが苦手な人でも楽しみやすくなっている作品です。何より各エンドの演出と切れ味が本当に最高なのでぜひ今作のヤバさを体験してほしいです。感性をばしばしに感じる作品です。

おとぎ人形劇 Hansel's Gretel

プレイ時間…30分~1時間
一言…練りに練られた演出が最後に「あべこべ」になります。

 有名な童話「ヘンゼルとグレーテル」を下敷きにした物語です。タイトルの「Hensel's Gretel」=「ヘンゼル”の”グレーテル」というそのタイトルに気づいた瞬間に「うわ絶対ダメな(誉め言葉)やつ」と思ったその通りに強烈な展開が続いていきます。
 人形劇や童話をモチーフにしているだけあって、非常にかわいらしく美しいデザインで物語が進んでいきます。ただ、まるでNHK・Eテレの古い人形劇アニメや昔のみんなのうたのアーカイブを見る時に覚える、かわいさや愛おしさの中からじわりと見えてくる不気味さや怖さ、それらに近いものが少しずつよぎっていきます。それらの予兆が進める度どんどん切迫したものとなっていき、それとともに物語は陰惨になっていきます。あまりネタバレはしたくないですが所謂「人怖」的な面があり、それに相対する主人公の喜怒哀楽を共有しながらさらに物語を読み進めていくことになるでしょう。探索要素はありますが難易度も高くないですし、エンディングの分岐もわかりやすく物語に没頭できるでしょう。
 今作の一番好きなところは映像や細かい演出、BGMの使い方が非常に細やかで、言外にメッセージが溢れていることです。概要欄の「口調」、人形の糸がどんな意味を持つのか、一枚絵で顔が隠されているのはなぜなのか、なぜ人形劇の形式を取っているのか、そんなことをじっくり味わいながら物語を読み進め、そしてあの「あべこべ」なラストにぶつかってほしいです。あれはすごかったです。


まつろぱれっと

プレイ時間:1時間程度
一言:死に方が本当に好き

 絵画の中の少女からの指示に従いながらその絵画にモチーフを書き足していくスマホの探索アドベンチャーとなります。黒をベースとしたオシャレで美しくかわいいデザイン、そして絵画を描くというゲーム性に一発で惹きつけられて遊んだのを覚えています。  
 絵画を描くために謎の空間を探索してモチーフを見つけ、それをルーレット式のちょっとしたアクションで正しい色で塗っていきます。難易度はステージをクリアする度に上昇しますがそこまで難しくはならないです。
 ただし間違うと結構簡単に絵画の少女に殺されてしまいます。そのためリトライはほぼ必須です。ただその殺され方がいちいちすごく凝っていて、死に方を集めるという要素を楽しめる作品となっています。絵画のモチーフを見つける探索もホラーらしい雰囲気たっぷりで、それを味わうだけでもとても楽しいです。
 何より絵画の少女のセリフが芸術的だったりアイロニックだったりといちいちよくて、読んでいるだけで楽しくなります。しかし、同時に、薦めるほどに見えてくるストーリーは単純に怖いだけでは済まないのも間違いありません。。おそらく少女への見方も物語を進める度に変わっていくででしょう。
 今年中にNintendo Switchへの移植が予定されていますのでそれを待つもよいですが、この夏にスマホで彼女に殺されてみるのもよしではないでしょうか?


おまけ

 「返校」と「神石師」のスピンオフである「槨の家」で全力で怖がっている様子をショート動画にしたのをあげます!これぐらい怖がれるのでぜひ遊んでくださいね!なお「返校」の切り抜きはネタバレを含みます。

返校切り抜き

槨の家切り抜き


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