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就活の人事は案外いい加減なものである〜インパルスの就活コント〜

最近、私の中でまたお笑いブームが来ているのもあって色々YouTubeで動画を漁っているのだが、その中でも最近面白いと感じたのはインパルスの就活コントである。
インパルスはアンジャッシュのような冷静に計算されたコントとはまた一味違うものなのだが、まずこの就活コントに関してはボケの板倉とツッコミの堤下が逆転しているのが面白い。
就活生(転職者)の堤下はとても能力が高く優秀だが真面目すぎて融通が利かず人間性に問題があり、工場長は工場長でとにかく難癖を付けてでも追い返したいめんど臭い人である。
下町の工場ということもあってかだいぶ汚らしい感じを出しているが、まずわかるのはこの会社が人を雇いたくないのが単純に受注件数が激減し会社が大赤字であるということだ。

特に2010年の受注件数の減少ぶりは凄まじく、今雇っている社員たちを食わせていくことで精一杯だったのかもしれない。
しかし、それならなぜわざわざ今回面接を引き受けたのかわからないのだが、もしかして正社員募集をネットなり貼り紙でしたりしていたのか?
まあそれはさておき、このコントの見所は転職者の能力と実績があまりにも高すぎるが故に工場長が最終的に辞めざるを得なくなる方向に追い込まれることだ。
基本的に就活で失敗するパターンのほとんどは就活生のスペックや受け答えが面接官のお眼鏡に叶わないからだが、今回のコントはそれが逆転している。

正しい意味での「役不足」であり、就活生の能力・技術・実績の高さに対して工場の仕事ではあまりにも釣り合いが取れないのだ。
しかもそれでいて堤下演じる就活生は本気でその仕事を志していて決して見下してはおらず、最後には土下座までするのだから始末に負えない。
かといって、採用したらしたでどこかのタイミングで「ちっとこれ違うなあ」なんて思って即座に退職して次に行ってしまいそうではある。
まるで渡り鳥のようだが、こんな人材が来てしまったらこの工場長に限らずどこの会社に行っても雇ってもらえないのではないだろうか。

この就活生のコントはつい堤下視点で見てしまいがちだが、板倉視点で見ると自分の身に余るスペックの人材が来た時の狼狽ぶりが妙にリアルである。
自分よりも能力がある者が迂闊に入ったら最悪の場合組織が崩壊してしまいかねないという危険性を考慮して自分が辞めるといったのであろう。
「才ある者は才に滅ぶ」というが、あまりにも能力が高すぎる人が来ると、よほどのことがない限り周囲の反感や嫉妬を買ってしまいかねない。
堤下演じる転職者は典型的な「仕事はできるが空気が読めず人間関係が極端に下手くそでモチベーションにも問題あり」というタイプなのではないだろうか。

それからもう1つ私が思ったのは「就活の人事って案外いい加減なんだなあ」ということであり、採用不採用が工場長の心的態度であっさり決まってしまうのである。
面接官は沢山の質問をするが、ぶっちゃけそこでの受け答えなんてほとんど意味はなく、大方リアクションや筋の通った受け答えができているかを見ている。
そして最終的に「この人と一緒に仕事がしたい」と思えるかどうか、つまり理屈ではなく心の部分に刺さるかどうかが大事なのだ。
実際、高度経済成長期の日本の就活なんて今ほどきっちりしたものではなかったという、いい大学に入ればエスカレーター式でいい会社に入れたから。

何が言いたいかというと、結局就活なんて所詮は景気の良し悪しと面接官の心的態度といった外的要因がほとんどを占めているということである。
その上で後は就活生とその企業の人たちとの運・縁があるかどうか、これで決まるのであって面接対策を一々真面目にするのはナンセンスだ。
私は知人の口利きや縁故採用で仕事を貰ったことだってあるし、俗にいう「就活の苦労」みたいなものをほとんど経験していない。
それでも今まで生活に困ったことはないから、こういう風に仕事にありつくために必死になっている人たちを見ていると、何だか滑稽に見える。

就活生を決してバカにしているわけではないが、就活というものを俯瞰してみるとその実態はいい加減なものであり、意外に大したことはない。
そんなことを感じさせてくれるのがこの就活コントであり、変な社会派のドラマや就活のマニュアル本見るよりよっぽど色んなものが学べる。

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