撮れ高のために原典を歪めた形で紹介しても構わないと思っているバラエティー番組への苛立ち
こういうのを見るとつくづく思うが、知識も全くない奴が数字稼ぎのために原典となる作品を歪めた形で紹介しても構わないとか思ってるの、本当どうにかならんのかな?
確かにアムロは当時のロボアニメの主人公としては異例の内向的で根暗な少年で、世が世なら典型的な「陰キャオタク」って呼ばれるのであろう。
しかし、だからと言ってそれを番組が打ち切りになったことへのしくじり要因として語ってしまうのは如何なものかと思えてならない。
これだとまるで作品の内容がつまらなかったから子供達が視聴を切って打ち切りになったかのような誤った印象操作になってしまうではないか。
ガンダムが4クールだったのが3クールに短縮になったのは決して作品がつまらなかったからでも、ましてや視聴率が悪かったからでもない。
確かにテレビが勢いのあった時代に平均視聴率5.3%は低い方ではあるが、それだったらその後の再放送による口コミ人気による流行と劇場版三部作へのリメイクには繋がらんだろう。
そもそもアムロが何故根暗な少年に設定されたのか、またアムロが愚痴っぽいのはそもそも戦闘訓練も何も受けていない少年が戦場でいきなりガンダムのような兵器を操作して殺し合いをさせている環境にある。
それにアムロを愚痴っぽいというのであれば、セイラに叩かれ「軟弱者」呼ばわりされた皮肉屋のカイや他の人たちだって決して聖人君子でもなんでもない人間としても兵士としても出来損ないの素人集団だ。
これらの設定は当然意図的にやっているものであり、そもそも富野監督をはじめ当時のサンライズスタッフは『無敵超人ザンボット3』の時から「ロボットアニメの反王道」でやっていたのを知らないのか?
最初の「ザンボット3」ではパイロットたちを睡眠学習で感情を麻痺させ、訓練を受けたことがない素人でも戦えるようにしていたし、『無敵鋼人ダイターン3』の破乱万丈は完璧超人を装う復讐鬼と設定されている。
それは『マジンガーZ』から脈々と受け継がれるスーパーロボットアニメで定石とされていたものを継承しつつ、どうやって差別化を図りながら全く違う形のロボアニメを作るかを作り手が必死に考えた結果だ。
こないだの記事で私は「ガンダム」を「スターウォーズのエピゴーネン」とまるで貶すように書いたけど、決してそれが悪いわけじゃなく作品の表現として違和感なく成立していればそれでいいのである。
カズレーザーも伊集院も「ガンダム」をきちんと見ているのならこんな雑な台本ではなくきっちり準備をした上で臨んで欲しいし、やはり弄るにしてもテクニックと知識というものが必要である。
それこそ麒麟の川島がスーパー戦隊シリーズの話をしくじり先生でした時も、本当かどうかわからないような「ファイブマンでスーパー戦隊はマンネリ化し打ち切りの危機に陥った」説を実しやかに流布していた。
私は当然そんな説を全く信じていない、何故ならば「ファイブマン」の平均視聴率と「ジェットマン」の平均視聴率に大きさ差はないし、作品のクオリティとしても「ファイブマン」は決して悪い作品ではない。
何だか『機動戦士ガンダム』もそうだし『鳥人戦隊ジェットマン』もそうだが、どうしてこうも異色作として歴史の分岐点と評価される作品に限ってこんな原典を歪めたような紹介をされるのであろうか?
番組を紹介する側の批評のセンスがまず絶望的なまでに皆無であるということが挙げられるが、それ以上に何と言ってもこの人たちはまず作品をきちんと見ていないのだろうなあと思う。
それこそマツコデラックスと有吉がかつてやっていた「怒り新党」なるバラエティー番組でも「ジェットマン」が「戦うトレンディドラマ」なんてクソみたいなキャッチコピーをそのまま使って紹介してたっけ。
しかも「ゴーカイジャー」でさえ「ジェットマンはトレンディ」なんて紹介するし、こうやって公式側からも非公式の紹介番組でも本当に雑に弄ってもいいとして見下すバラエティー番組が跋扈している現状が腹立たしい。
だが、批評家も批評家で作品の奥に社会を読み込む実存批評なるものをやりたがるし、つくづくサブカルチャーの世界ってインテリからも芸能界の連中からも低く見られたものだと残念でならない。
結局、何で私がスーパー戦隊シリーズをはじめこういうサブカルチャーの感想・批評の道をこうして生意気にやろうと思ったかというと、要はこういうクソみたいな連中から骨董品扱いを受ける現状が腹立たしいからである。
今回のしくじり先生のやつだって、結局は「悟空がサイコパス」とかいうのと似たような雑語りなんじゃないのか?上辺というかネットで適当に調べた程度の知識を元に受けのいいこと言って笑いを取ろうとしてるんだろう。
アムロをdisるのは構わない、実際私も結構ガキっぽいなあとは思うし現実にいたら絶対に仲良くなれないし友達にもなりたくないが、それはあくまでも原作をきちんと見て作品を隅々まで把握してのことだ。
その上で私は今「ガンダム」をそうした「人類同士の争いを行うリアリティー溢れる戦争もの」という既存の言説から解き放つためにも今「ロボアクション」という観点から素直に作品を作品として見ているのである。
スーパー戦隊シリーズにしろガンダムシリーズにしろウルトラシリーズにしろライダーシリーズにしろ、どんな分野でもやはり作品をいじるにはきちんとしたリスペクトと作品に対する一定の理解は必要だ。
それがなくてただ受け狙いのため、数字欲しさにろくに作品も見ないで曲解したようないい加減な解説ばかりを蔓延させて作品を未見の方に誤った先入観を植え付けさせるような行為は本当にやめて欲しい。
カズレーザー個人に対する好き嫌いは別にないし、むしろ頭いい人だとは思うが、何故こんな雑なトークになってしまうのかが本当に理解できないし、仮に番組の企画のお仕着せであったにしても断れよ。
特撮好きを公言している割には作品に対する愛が感じられないし、そんな奴にサブカルを扱わないでいただきたい、「ガンダム」のパブリックイメージが根本から汚されてしまう。
本当にこういう連中を駆逐しなければならないのではないかと思う。