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スーパー戦隊シリーズの監督・演出本数ランキング(『秘密戦隊ゴレンジャー』〜『機界戦隊ゼンカイジャー』)

前回の脚本家執筆数ランキングに続き、今回は第二弾として「スーパー戦隊シリーズの監督・演出本数ランキング」を集計し、そこから読み取れる傾向を分析してみます。
対象作品は前回と同じで『秘密戦隊ゴレンジャー』〜『機界戦隊ゼンカイジャー』までの全45作品であり、現行の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』はまだシリーズが終了していないためカウントしません。
2022(令和4)年10月27日現在のランクになるため、随時更新の可能性もあります。

※あくまでもランキングは「演出本数」であって「評価の良し悪し」「好き嫌い」といったものではありませんので、誤解されないように前書きしておきます。また、VSシリーズや劇場版や「帰ってきた」「10 Years After」といった後日談など、いわゆる「番外編」としてカウントされる作品も対象外ですのでご了承ください。

それでは、どうぞ。

演出本数ランキングTOP10


1位、渡辺勝也……251本(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『激走戦隊カーレンジャー』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』『百獣戦隊ガオレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』『特捜戦隊デカレンジャー』『魔法戦隊マジレンジャー』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『獣拳戦隊ゲキレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『侍戦隊シンケンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『獣電戦隊キョウリュウジャー』『烈車戦隊トッキュウジャー』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』)

2位、東條昭平……210本(『太陽戦隊サンバルカン』『大戦隊ゴーグルファイブ』『科学戦隊ダイナマン』『超新星フラッシュマン』『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』『高速戦隊ターボレンジャー』『地球戦隊ファイブマン』『鳥人戦隊ジェットマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『超力戦隊オーレンジャー』)

3位、竹本昇……188本(『激走戦隊カーレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『未来戦隊タイムレンジャー』『百獣戦隊ガオレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』『特捜戦隊デカレンジャー』『魔法戦隊マジレンジャー』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『獣拳戦隊ゲキレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『侍戦隊シンケンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『獣電戦隊キョウリュウジャー』『烈車戦隊トッキュウジャー』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『動物戦隊ジュウオウジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』)

4位、長石多可男……170本(『電撃戦隊チェンジマン』『超新星フラッシュマン』『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』『高速戦隊ターボレンジャー』『地球戦隊ファイブマン』『超力戦隊オーレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『星獣戦隊ギンガマン』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』『侍戦隊シンケンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』)

5位、中澤祥次郎……160本(『未来戦隊タイムレンジャー』『百獣戦隊ガオレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』『特捜戦隊デカレンジャー』『魔法戦隊マジレンジャー』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『獣拳戦隊ゲキレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『侍戦隊シンケンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『烈車戦隊トッキュウジャー』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』)

6位、山田稔……159本(『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』『太陽戦隊サンバルカン』『大戦隊ゴーグルファイブ』『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』『電撃戦隊チェンジマン』『超新星フラッシュマン』『光戦隊マスクマン』『超獣戦隊ライブマン』)

7位、加藤弘之……145本(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『獣電戦隊キョウリュウジャー』『烈車戦隊トッキュウジャー』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『動物戦隊ジュウオウジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』)

8位、諸田敏……114本(『星獣戦隊ギンガマン』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』『未来戦隊タイムレンジャー』『百獣戦隊ガオレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『獣拳戦隊ゲキレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『侍戦隊シンケンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』)

9位、坂本太郎……103本(『鳥人戦隊ジェットマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『激走戦隊カーレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『未来戦隊タイムレンジャー』『百獣戦隊ガオレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』『特捜戦隊デカレンジャー』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』)

10位、竹本弘一……78本(『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』)

TOP11以下の演出本数リスト


服部和史……53本(『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』『大戦隊ゴーグルファイブ』『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』)
田崎竜太……49本(『超力戦隊オーレンジャー』『激走戦隊カーレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『星獣戦隊ギンガマン』『魔進戦隊キラメイジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』)
小笠原猛……48本(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『超力戦隊オーレンジャー』)
辻野正人……46本(『超力戦隊オーレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『星獣戦隊ギンガマン』『特捜戦隊デカレンジャー』『獣拳戦隊ゲキレンジャー』)
小中肇……44本(『星獣戦隊ギンガマン』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』『未来戦隊タイムレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『爆竜戦隊アバレンジャー』)
柴崎貴行……36本(『侍戦隊シンケンジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『獣電戦隊キョウリュウジャー』『動物戦隊ジュウオウジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』)
蓑輪雅夫……34本(『高速戦隊ターボレンジャー』『地球戦隊ファイブマン』『鳥人戦隊ジェットマン』)
坂本浩一……32本(『海賊戦隊ゴーカイジャー』『獣電戦隊キョウリュウジャー』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』)
杉原輝昭……31本(『動物戦隊ジュウオウジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』)
田口勝彦……29本(『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』)
小林義明……28本(『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』『超力戦隊オーレンジャー』『激走戦隊カーレンジャー』)
堀長文……28本(『科学戦隊ダイナマン』『超電子バイオマン』『電撃戦隊チェンジマン』『超新星フラッシュマン』)
広田茂穂……26本(『バトルフィーバーJ』『電子戦隊デンジマン』)
平山公夫……21本(『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』)
鈴村展弘……20本(『特捜戦隊デカレンジャー』『魔法戦隊マジレンジャー』『轟轟戦隊ボウケンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』)
山口恭平……20本(『魔進戦隊キラメイジャー』『機界戦隊ゼンカイジャー』)
新井清……14本(『高速戦隊ターボレンジャー』『地球戦隊ファイブマン』『鳥人戦隊ジェットマン』)
雨宮慶太……14本(『鳥人戦隊ジェットマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)
松井昇……14本(『激走戦隊カーレンジャー』『未来戦隊タイムレンジャー』『百獣戦隊ガオレンジャー』)
奥中惇夫……11本(『ジャッカー電撃隊』『太陽戦隊サンバルカン』)
佛田洋……11本(『忍者戦隊カクレンジャー』『超力戦隊オーレンジャー』『救急戦隊ゴーゴーファイブ』『未来戦隊タイムレンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』)
舞原賢三……10本(『百獣戦隊ガオレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』『特命戦隊ゴーバスターズ』『動物戦隊ジュウオウジャー』『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』)
上堀内佳寿也……9本(『騎士竜戦隊リュウソウジャー』)
柏木宏紀……6本(『騎士竜戦隊リュウソウジャー』)
金田治(JAE)……6本(『特命戦隊ゴーバスターズ』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』)
折田至……4本(『秘密戦隊ゴレンジャー』)
小西通雄……4本(『秘密戦隊ゴレンジャー』『大戦隊ゴーグルファイブ』)
大井利夫……4本(『忍風戦隊ハリケンジャー』)
北村秀敏……3本(『秘密戦隊ゴレンジャー』)
須上和泰……3本(『宇宙戦隊キュウレンジャー』)
葉山康一郎……3本(『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』『魔進戦隊キラメイジャー』)
よしかわいちぎ……2本(『電子戦隊デンジマン』)
加島昭……2本(『大戦隊ゴーグルファイブ』)
辻理……2本(『大戦隊ゴーグルファイブ』)
橋本一……2本(『忍風戦隊ハリケンジャー』)
小中和哉……2本(『獣電戦隊キョウリュウジャー』)
田口清隆……2本(『魔進戦隊キラメイジャー』)
たかひろや……1本(『騎士竜戦隊リュウソウジャー』)

<分析結果>


1位は90年代・00年代・10年代と長きにわたってスーパー戦隊シリーズに貢献している渡辺勝也であり、何と251本という圧倒的な演出本数
シリアスからコメディーまで幅広い作風を演出しつつも、師匠筋と思しき長石多可男イズム(役者の表情をアップで映して色気を強調する)を継承している、スーパー戦隊の「顔」というべき存在である。
あまりにも多彩過ぎる故に中々話題に上がりにくいものの、関わってきた作品数でいえば荒川稔久と同レベルであり、ある意味では監督版荒川稔久ともいえるだろう。
スーパー戦隊シリーズの演出はナベカツ演出に支えられている部分が大きく、もはや大ベテランと言っても過言ではないくらい欠かせない存在になっている。

続いて2位は鬼のように厳しい職人気質の監督として恐れられている東條昭平監督がランクインしたが、「サンバルカン」〜「オーレンジャー」と戦隊の成長期〜発展期を支え続けた大ベテランの風格ここにありという感じだ。
容赦なく役者を追い詰めていくダイナミックな演出が印象的だが、それがまた役者を大きく成長させ作品のクオリティにも繋がっているので、彼がいなければ今の戦隊シリーズは間違いなく存在しない。
そして3位に188本の竹本昇監督、4位に170本の故・長石多可男監督がランクインしており、双方とも80年代・90年代・00年代と非常に大事な時期のスーパー戦隊シリーズを支えてきた重鎮である。
特に故・長石監督は「チェンジマン」「ギンガマン」「ゴーゴーファイブ」での演出がとても印象的であり、個人的にもこの人がいたからこそスーパー戦隊シリーズを今でも愛することができると断言する。

更に5位が現在のシリーズの中堅どころを担っている中澤祥次郎監督だが、この監督は上位4人に比べると個性は少し弱いものの卒なくテンポよくドラマをまとめて見せる真面目さがある監督だ。
特に「ボウケンジャー」〜「シンケンジャー」あたりの躍進は目覚ましく、緊張感あるシリアスな場面を撮らせたら長石監督に次ぐ凄味のある人ではないかと思う。
そして6位はスーパー戦隊シリーズで東條監督同様に欠かせないベテラン・山田稔監督だが、こちらもまた非常にリズム感とテンポの良さが非常にわかりやすく肌に合う演出家だ。
遊び心もあるしシリアスもギャグも撮れる器用さがあるので、伊達に159本もシリーズを撮っていないのだが、東條監督共々スーパー戦隊シリーズを大きく支えてくれた御仁である。

7位の加藤弘之監督〜10位の竹本弘一監督はどちらかといえばギャグ寄りの演出が多い監督たちだが、このことからスーパー戦隊シリーズはあくまでギャグ・コメディがベースにあることがわかるだろう。
大元の「ゴレンジャー」からしてそうであるように、スーパー戦隊シリーズは「ウルトラマン」「仮面ライダー」に比べてそこまで重たいテーマを元々抱えていたわけではないシリーズである。
だからコミカルでライトなのが持ち味であり、だからこそギャグが多めの演出や脚本が多くなるのかとも思うが、一方で近年はシリアスなドラマをきちんと撮れる監督が少なくなっている。
東條監督しかり長石監督しかり、昔は物凄く突き抜けた「色」を持った演出家がいたのだが、今ではどうしてもナベカツや中澤監督に多くを依存してしまっているという状況も否めない。

脚本家ほどではないものの、こうして統計データをきちんと取ってみると、やはり演出においてもスーパー戦隊シリーズは「業務の属人化」という由々しき問題があるようだ。
現在放送中の「ドンブラザーズ」でも田崎監督をはじめ活躍しているのはもう古株というかベテランというべき人たちが中心であり、若手で「これ!」と言える監督が育っていない
全体的に今はどこの業界も人材不足ではあるのだが、ことスーパー戦隊シリーズにおいてもこの「業務の属人化による深刻な人材不足」は無視できない問題となっている。
この構造そのものにある問題をどう解決していくのか?を考えていかなければ、スーパー戦隊シリーズの今後は益々厳しくなるであろう。

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