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「最初は面白かったが途中からつまらなくなった」という錯覚

こういうのを見ると思うことだが、よく「最初は面白かったのに途中でつまらなくなった」「最初はつまらなかったのに途中から面白くなった」の2種類がある。
しかし、私はこういう意見を見聞するたびにこう思うのだ。

もちろん、物事には何でも「旬」があるし、やはり回などによって出来不出来はあるから一概に「間違っていた」とは言い難いのだが、一方で真実の全てを言い表しているとも思えない
まあ確かにジャンプ漫画ののように「人気」や「編集側の都合」で作品の連載の長さが決まるものはある程度仕方ないと言える、作家にはどうしようもないのだから。
しかし、大河ドラマやスーパー戦隊・仮面ライダーのような放送期間が半年や1年間と明確な区切りのあるシリーズに関してはこの言い訳は通用しない。

なぜそう思うのかというと、結局は目には見えない「基礎土台」がどれだけ構築できているか?で8〜9割が決まるからだ。
これを見てほしい。

そう、「成功とは氷山である」というものだが、我々が現実に見える「成功」など所詮は表向きの5〜10%の華やかなところしか見えていない。
しかし、実際のところはそのたった1つの成功の裏に数々の挑戦・失敗・対策・傾向・リスクヘッジなど様々な要素があって、その成功の上澄みしか人々は見ていないのである。
逆にいうと、ほとんどの人が「最初は面白かったが途中からつまらなくなった」という場合、実はそれは「最初の段階で氷山の裏側まできちんと見抜けていない」ことが理由であるのに気づかない。

典型的な「前半は結構面白かったが後半〜終盤でつまらなくなった」である『五星戦隊ダイレンジャー』を例に挙げると、1話〜2話を見ると確かに「勢い」「名乗り」「アクション」といった「表面」はよく見える。
しかし今見ると問題点は結構多く、割と荒削りな生煮え感の半端ない立ち上がりになっていることに気づくだろう。
具体的には以下の通りだ。

  • ドラマパートの描写が今一つわかりにくい

  • 登場人物のキャラ立ちに深みが感じられない

  • 巨大戦を2話冒頭で入れるのは明らかな尺不足

  • 「気力とは何か?」「ダイレンジャーが何か?」の描写が希薄

  • 戦闘訓練も心構えも未熟な若者がなぜいきなり戦えるのか?

  • 気伝獣がなぜ機械のような体をしているのか?

最低限思いつくだけでもこれだけは挙げられ、特に「巨大戦を2話冒頭で入れるのは明らかな尺不足」という時間配分がきちんとできていないのは「ダイレンジャー」の致命傷であろう。
というか、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『忍者戦隊カクレンジャー』もそうだが、杉村升がメインライターを手がけた三部作は大体そうで、基礎土台の詰めの甘さを勢いで突っ走って誤魔化しているのだ

なんぼデザインのセンスが優れていて個性的だったとしても、その表面上の枝葉をしっかり際立たせるための根幹、目に見えない基礎土台ができていなかったらただのハリボテだ
逆にいうと、今配信中の『星獣戦隊ギンガマン』はこの辺りの「ファンタジー戦隊三部作」のエッセンスを全て洗練させつつ、きちんと見えない基礎土台を完璧に仕上げている

これを踏まえて、『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』を見てみよう。

凄いぞ、歴代のスーパー戦隊でこんなにも「ハリボテ」感がやばすぎる薄っぺらい1話はほぼ初めてではなかろうか、いやまあ単にクオリティーが低いだけならいくらでもあるわけだが。
何がムカつくといって、この間も述べたが表面上のエッセンスを中途半端に過去作品のパクリ(オマージュ・パロディとは言わず敢えて「パクリ」と言わせてもらおう)で塗り固めていることだ。
こないだも述べたように、思いつく要素としては『鳥人戦隊ジェットマン』『機動武闘伝Gガンダム』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダーディケイド』『海賊戦隊ゴーカイジャー』辺りだろうか。
少なくともあらゆるジャンルの中で「脱構築」として評価されている位置付けの作品のエッセンスばかりをかき集めて、ゴテゴテと派手に飾ってはいるのだが、肝心要の「」が空虚だ。

というか、「その日、すべての戦隊の歴史は終わった」などとナレーションで言わせてる時点で全くセンスがない、どうせこれですら後々にはOne of themでしかないのに。
これを見た時点で損切りできないやつは投資のセンスがないと言えるだろう、あまりにも退屈すぎて最初の5秒で欠伸が出て見る気が失せた。
これならまだ1日寝てた方が健康にいい。

本作がどうなるかはもう予想がつくからこれを最後の語りにするが、令和に入ってからの戦隊シリーズの体たらくというか株の暴落は止まらない
今後は大手がどんどん潰れていく流れだから、悪い意味でスーパー戦隊ももう本作で終わりなのかもしれないな、というかまあ『未来戦隊タイムレンジャー』の最終回でスーパー戦隊の歴史自体は終わっていたのだが。
ここまでの25年はただの壮大なボーナストラック(何の希少価値もない)だから、そう思えば行き着く先がここなのはなるべくしてなった結末でしかない。

最初は面白かった作品がつまらなくなったのではなく、メッキが剥がれただけなのではないかと思うし、そんなのを見抜くは決して難しくもないのだ。
「ゴジュウジャー」の導入はそのことを端的に知らせてくれるものだったと思う。

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