「視聴率なんて当てにならない!」というのは大嘘!要は中身にきちんとした話題性と売れ線になるものがあれば見るものである
先日の「利確」に関する記事について、スーパー戦隊シリーズの平均視聴率の推移を元に語ったところ、以下のような反論がコメントで来ていた。
この部分に関して私が反論しなかったのは「視聴率」について別枠で記事を設けて書きたいからだったのだが、よく特撮作品の視聴率に関して触れると「視聴率なんて当てにならない!」と言い出す人は多い。
無論、視聴率の高さと作品の質は決して直結するものではないが、だからと言って全く無視していい要素でもないし、それこそテレビ全盛期だった頃は視聴率こそが作り手にとっては絶対的な人気の指標だったのだから。
実際、これに関しては他ならぬ東映特撮の重鎮である白倉伸一郎現社長がXにてポストをしている。
因みにだが、白倉社長の言っている「戦隊で視聴率2%台を叩き出して吉川進Pから散々に罵倒された」という話はおそらく半分嘘で半分事実であろう、というのも白倉氏は東大卒のとても弁が立つ人だからである。
本人は「ジュウレンジャー」の時に視聴率で罵倒され、そこから7倍に視聴率を上げたという成功体験みたいに話しているが、「ジュウレンジャー」の視聴率を調べればこれが真っ赤な嘘であることは周知の事実だ。
「ジュウレンジャー」の最低視聴率は3.5%で最高視聴率は9.6%、精々が3倍だったし、当時はまだ駆け出しの下っ端だった白倉氏がそこで才能を発揮して現場に強い影響を与えたかのような口ぶりは誇張であろう。
彼の言い分が事実だとするなら「ジュウレンジャー」の最低視聴率が2%だとして、その7倍にまで伸ばしたのだから14%まで伸びなければならないが、そうはなっていないのだからホラ吹きもいいところだ。
因みにスーパー戦隊シリーズで2%台の視聴率を叩き出したのは白倉も吉川も関わっていない『地球戦隊ファイブマン』のことであり、22話と23話で2%台、そして26話で1.8%を叩き出している。
だから「2%台を叩き出した作品がある」のは事実だが、そこから「頑張って7倍に伸ばした」ことや「ジュウレンジャー」がそれに該当する作品だったというのはいくら何でも話を盛りすぎだ。
どうせ白倉は戦隊ファンは業界の内部事情や視聴率のことなんてわからないだろうと決めつけて高を括っていたのだろうが、視聴率に関してわずかでも勉強したことがある人ならこんな見え透いた嘘に騙されない。
「そもそも視聴率で作品の質を決めてる時点で時代遅れ」などと的外れな意見が出ていたが、なぜ視聴率を前回の記事で引用したかというと、本当は作り手も受け手も視聴率が気になって仕方ないのである。
ただ、数字の話を前面に出してしまうと「数字にがめつい嫌なやつ」みたいに思われて悪印象を与えてしまうからそういうことを話題にしたくないだけなのだ。
大体視聴率が全く気にならない、当てにならないというのであればこれは何だ!!
「しくじり先生」で都合よく「ファイブマン」の視聴率1.8%だけが都合よく切り抜かれて、俗説としてある「ファイブマンでスーパー戦隊は打ち切りの危機に陥った」とかいうくだらない展開へ運んでいる。
また、嵐がヒットするきっかけの1つなった『花より男子2(リターンズ)』の最高視聴率に関しても同じであり、視聴率を気にしてないだのいう割には、その数字の裏をろくすっぽ取らないで都合のいい時だけ視聴率を出しているのだ。
ここからもわかるように数字が低い時であれ高い時であれ、人間は自分にとって都合のいい時しか視聴率を持ち出さないのだが、そもそも作り手も受け手も視聴率の意味や扱い方をわかっているのだろうか?
私が前回の記事でスーパー戦隊シリーズの視聴率の推移に関して述べたのはあくまでも「傾向」としてどういうものかを俯瞰するためであって、決して視聴率と作品の質を同列に扱っているからではない。
ではそもそも、視聴率とは何だろうか?
手っ取り早く解説してくれている動画があるので、こちらに引用してみる。
ここで解説されているように、視聴率とは大まかに分けて「世帯視聴率」と「個人視聴率」の2つに分かれ、更に細かい8つの層に区分されており、それらの中から無作為抽出されたものが視聴率となる。
だから、たとえば視聴率30%という数字が出たからといって必ずしも国民の3割がその番組を見ているわけではないのだが、こういう細かい仕組みまで把握して初めて視聴率は有効な指標となるだろう。
確かに、ネットが主流となってテレビ離れが深刻化している現在ではもう時代遅れにはなってしまったが、かつてネットがない時代はテレビ番組を継続するか打ち切るかも含めた判断材料ではあった。
この動画でも言われているように、今多くのニュース番組がなぜテレビだけではなくYouTubeでの同時配信を行っているのかというと、スポンサーにとってはそちらの方が数字が稼げるからである。
テレビの場合だと、どうしてもそれを放送する時間帯と枠が制限されているために視聴率が取りにくい番組もたくさんあるのだが、その辺がシームレスなYouTubeでは300万以上の再生数を誇ったという例もあると語られていた。
昔でいう視聴率が今でいうところの動画の再生数とグッドボタン、そしてコメントの数に相当するのだが、たとえ視聴率が有効な指標ではなくなったとしても、今ではその代わりになるものが別できちんとあるのだ。
だから「視聴率なんて当てにならない!」というのは真っ赤な嘘であって、少なくとも番組を作る側は常に向き合わなければいけない切実な問題であるし、受け手も決して安易に考えてはならない問題である。
数字は人を冷静にする役割を持つし、やはり物事を数値で定量化しなければどうしても抽象的で曖昧な感情論に終始してしまうため、主観と客観を切り分ける意味でも無視できない要素の1つではあるだろう。
それに「深刻なテレビ離れ」というが、それこそネットが主流になってきた中でも、たとえば『ドラゴン桜2』は瞬間最高視聴率22.7%を記録しているし、『半沢直樹』なんかは平均視聴率28%を記録していた。
これらが何を意味するかというと、テレビが全盛期じゃなくなったとしても、本当に見たい番組に関しては国民は見る訳であって、一概に「ネット全盛期だからテレビの視聴率は時代遅れ」なんて言えないということだ。
要は中身にきちんとした話題性と売れ線になるものがあれば見るのである。
「視聴率なんて当てにならない、時代遅れ」というのは最低でもこれくらいのことは調べてから言え。