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さよなら、先輩

私の初恋は、サッカー部の先輩でした。


その先輩は、足も速いので大会近くになると陸上に飛び入りしていました。

私自身も、本当はテニス部でしたが、

大会近くになると、


体操部へ行ったり、


陸上部へ行ったり、


バスケ部にも行っていました。


ですから、


本業?である筈のテニスが一番下手でした。


陸上は基本的に男女別々に練習することが多いのですが、


たまに合流したりもします。


だから、


合流したときにたくさん先輩を見られるのに、


あまりにも恥ずかしくて、


私は先輩を見ることすらできませんでした。


唯一、ノルマ(笑)である陸上やらの部活から離れたときに、


サッカー部でボールを蹴っている先輩を、

遠くから見ているだけで嬉しかったのです。

だけど、


卒業してしまったら遠い高校へ行くと知って、


私は一大決心をしました。


それは、



【バレンタインチョコレートを渡す】こと。


もはやそれは、ミッションのようになっていました。



めちゃくちゃたくさんのチョコレートの中から、

好きそうなチョコを探したり、


どうやって渡そうかと考えたり。



だけど、


私は


先輩と話をしたことすらないのです。


やっと思い付いたのは、


先輩が通学に使っている自転車のカゴの中に置いてくる、という、

非常に効率の悪い方法でした。


でもでも、話もしたことがないんだから仕方ないよね、


チョコ渡せるだけでいいよね、と自分を励ましながら、


バレンタインデー当日に、
友達と一緒に忍者のような早さで、


先輩の自転車のカゴに入れてくることに成功しました。



わーん、うれしー♥️

チョコレート食べてくれるかな(ドキドキ)


教室に走って戻ってきたときに、
一緒に行ってくれた友達が私に


「ねえ、ひゅうがの名前書いたよね?」





( ̄□||||!!




いや、


ホントに忘れていました。


私のミッションは、


【先輩にチョコレートを渡すこと】


名前を書くとか、手紙を入れるだとか、

そんな高度な技は思いつかなかったのです。




かくして、


私の初恋は見事に散りました。



まあ、


いいんですよ、


遠くから見てるだけでシアワセだったし。



と、思っていたら、


なぜか、


私が先輩のことを好きなことがバレてしまったのです。


一緒に行ってくれた友達が話したわけでもないのに、


今でも謎なんですが。



苦いバレンタインデーを乗り越えて、

20年後…


実家へ帰った際にガソリンスタンドで働いている先輩と鉢合わせしてしまったのです。


滝汗・・・


帽子で顔を隠していましたが、


なぜか、


先輩も不自然な程こちらを見ないのですよ。



先輩が結婚していたのも知っていたし、
当時は私も結婚して子どももいたので、

何かあるわけではないのですが、



妙な汗をかいたのは、


私だけではなく、


先輩も同じだったのかもしれません。



今では、良い思い出です。

写真はパブリックドメイン様からお借り致しました。
ありがとうございました。