エリオットスミスの短調ドミナントコード
今回はエリオットスミスの短調ドミナントコードの使い方について書いてみました。
(2020/12/20 修正)
短調のドミナントコードについて
今回扱う短調のドミナントコードとは、短調のVコードつまりAmキーだとE or E7のことです。
長調だとIII(メジャー)コードで、平行短調のドミナントコードになります。
Cメジャーキーなら、
C-E7-Amとか、C-E-F-G等の進行のE7またはEに当たる部分がIIIです。
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この和音の効果は良く言えばエモい、悪く言えば下世話です。
曲中でハマると気持ちよかったりする一方で、J-POPでここぞとばかりにIIIコードが出てきたりするのは苦手です。(例を挙げるのは自粛。笑)
そう言えば、レディオヘッドがCreepでI-III-IV-IVmという進行を繰り返してたりしますね。
この場合だと、IIIは平行短調のドミナント、IVmは同主短調のサブドミナントとなり、4つのコードうち2つが借用和音です。
なので、調性の揺らぎがあり、やや応用的になります。
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さて、本題に入りましょう。
エリオットスミスは割とこのコードを使う印象のあるソングライターです。
・Rose Parade
to people passing by~のところ (0:50)で、
F#-Bm-A-E/G#-G6-F#*-A
度数で言うと、III-VIm-V-II/#IV-IV6-III-Vです。
王道の進行を経て、前に指摘したエリオットスミス的なIIコードを含む進行へと繋がってますね!
先にI-V-II-IVをずっと繰り返していますから、先頭の部分だけを変えて対比していると言えます。気だるい雰囲気が一転してエモくなる箇所ですね。
同様に、2回目以降のコーラス(2:08~, 3:17~)にも
F#→E→A→E→G
度数では、III→II→V→II→IVという形でIIIコードが使われています。
III→IIって一体何でしょう??珍しすぎる気がします。
*G6(320430)の押さえ方で半音ずらしたF#系謎コード(210320)
・Angeles
まず調性の判定ですが、Am9から始まりCで終わりますが、キーはEマイナーです。
なので、この曲では短調ドミナントコードは(当然ですが)Vとなります。
まず、(イントロにも出て来ますが)一回目のコーラスで言えば、and what's a game ofのgameのところ (0:55~)に
B-D-C-G、度数で言うと、V-bVII-bVI-III
それからブリッジ冒頭 (1:44~)にも
B-B/C#-D-F#、すなわちV-V/VI-bVII-II
という進行が出て来ます。
詳しくはこちらの3本立ての記事をどうぞ。
ルーツはカントリー・ブルース?
上記2曲4例に共通するのは、コード進行の冒頭に短調ドミナントコードが現れるという点です。
この使い方のルーツはカントリーやブルースかもしれません。
例えば、ジョン・フェイヒのこの曲。
(昔は「フェイヒィ」だったが、最近はこう表記するらしい)
0:51~ III-IV-II/IV#-V-I...
後半にももう一度現れますが、グッと感情が入る感じが良いですね。
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Cocaine Bluesもこのパターンですね。
0:54~にIIIコード。ニック・ドレイクのカバーを選んだのは僕の趣味です。笑
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それから、Mississippi John HurtのAin't No Tellin'
0:16~に注目です。12小節のブルースで、4小節単位の3つ目の冒頭がIIIコードです。
まとめ
個人的には短調のV・長調のIIIというコードに対して少し苦手意識があるのですが、昔からエリオット・スミスの曲で聴くと好きでした。
そしてこのコードが進行の冒頭に来るということは意識していましたし、ブルースを聴くようになった頃に同じような使われ方を発見し驚きました。
それから10年以上経って、改めて文章化してみることになるとは思ってもいませんでしたが。笑
あと、Angelesってコーラスが12小節なのですが、これもブルース要素と言えばそうなりますね。
表面的にはブルースっぽさがなくても、やっぱりその文脈を受け継いだ音楽なのだなと思う次第です。