日曜日の音楽 #4 / The Sun Shines Down on Me - Daniel Johnston
初めに
ダニエルジョンストンを初めて聴いたのはスパークルホースやヨラテンゴによるカバーだった。(※余談参照)
その後何年かして、オリジナルも聴いてみることにした。最初はそれなりに楽しんでいたけれど、どうしても全肯定しきれなかった。
プロダクションも演奏も拙さと紙一重で聴きやすいとは言い難い。どこか薄気味悪くもある。
結局バイオグラフィーありきのアウトサイダーアートで、インディロックの文脈上否定してはいけないアーティストだから支持されている?そんな風にどことなく感じてしまい、知らないうちに距離を置いていた。
それから20年ぐらい経ってスパークルホースもヨラテンゴもほとんど聴かなくなったが、ふとBandcampでダニエルジョンストンのアカウントがName Your Priceをしているのが目に留まり、軽い気持ちで久しぶりに聴いてみた。
すると、表現することの真摯さで輝いているように感じられて、しばらく聴き続けている。我流で癖は強いが夢中で練習し続けていたのだろう、技術だって決して拙い訳ではなかった。
今日はこの曲を聴いてみようと思う。
The Sun Shines Down on Meの分析
ヴァース
まずコード進行を追っていくと、I-V-IVのロック的な逆進行で始まり、セカンダリードミナントのVIを経てIIm-V-Iと進む。
VI-IImは部分転調とも言え、なおかつ短調のドミナントモーションなのでエモーショナルに聴こえる。
加えて、ヴァース前半のメロディは順次進行的であったのに対して、後半は跳躍進行を含むメロディとなり、明確な対比が表現されている。
余計な指摘かもしれないが、個人的にこの部分を聴くとブランデンブルク協奏曲第2番のトランペットを思い出す。
(実音で言うと)ラレラシ♭ー…というフレーズが似ている気が、、しません?笑
コーラス
そしてコーラスの進行は、IV-IVm-I-I7となる。IVmはサブドミナントマイナーで、I7はセカンダリードミナントである。
ここの歌詞・メロディ・コードの一体感が素敵だと思う。
and theから跳躍してsun shines down on meとサブドミナントの3rdからサブドミナントマイナーの3rd、トニックの5thと半音で下がっていく。
優しく太陽の光が降り注ぐイメージを描写するのにこれ以上ない表現に思える。
コーラスの終わりはIV-IVmでフェルマータのあと、そのままメロディが順次進行で下がってヴァースに繋がるのもはっとさせられる。
終わりに
自分のアナリーゼは大して意味のない的外れなものかもしれないし、面白くないと思う人も少なくないだろう。
少なくともプロダクションやコラージュのセンスについて言及せず、記譜できる範囲の話で終わっていいのか疑問はある。
それに僕だって彼の生涯について考えるし、そこに重きを置く気持ちもわかる。
だが、ダニエルジョンストンの音楽は出鱈目の産物ではないし、狂気や純粋さといった言葉から一旦離れて、その設計について考察してみるのも悪くないと思う。
意図的であるかどうかは別として、音楽である以上法則はあるのだから。
余談
スパークルホースのHey Joeが最初に聴いたダニエルジョンストンの曲。針ノイズが美しい。大学の帰りに寂れた駅前ビルの中古屋で買ったことを今でもはっきり覚えている。
Fakebookも大学生の頃に電気屋内のレコ屋の閉店セールで格安で買った。笑自然体かつ適度に洗練されて聴きやすいけれど、原曲の歌い出しにあったブルーノートがなくなって単純なペンタになっているし、キーも随分低い。