日記:もうひとつの街/フォルテピアノ
もうひとつの街
アイヴァスの「もうひとつの街」を読んでいる。
街で手に取った見慣れない文字の本をきっかけに、プラハの街に影のようにひそむ不条理で幻想的なもうひとつの街へと踏み込んでいく物語。
とても不思議な読み心地。
実は誰もが境界に近づいているのだけれど、見ないようにしているもうひとつの街…
フォルテピアノ
フォルテピアノ/チェンバロ奏者であるシュタイアーのコンサートに行った。急遽トリオからヴァイオリンとのデュオに変更になったが、それはそれで楽しめたので良かった。
フォルテピアノを生で聴くのは人生で二度目だ。
一度目は、とあるギャラリーでクラシックコンサート関係の仕事の見習いみたいなことをしていた時期。
久しぶりに聴いたフォルテピアノは、低音も倍音も控えめで少し丸みのある音色に聴こえた。ソフトペダルを踏んだときのオルゴールのような音色も好きだ。楽器自体も印象的で、美しい杢目を持つ温かみのある琥珀色をした木材が使用されていた。
特に良かったのはモーツァルトのK379。ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第4番の第2楽章も良かった。
楽曲と楽器の両方が持つ表情を引き出す、素晴らしい演奏だったと思う。
自分にとっての「もうひとつの街」
身近にありながら、普段の生活とはかけ離れた崇高なものを感じさせてくれる音楽とは、自分にとってのもうひとつの街かもしれないとふと思った。
ユーザーとして音楽が好きな人はたくさんいるけれど、誰もがある程度で踏みとどまって深淵をのぞき込まないようにしている。自分だって、生活があるからと自粛している。
境界を越えた向こうに何があるのだろうか。