エリオットスミスの曖昧な調性②Angeles (2/3, chorus)

前回は、Angelesのヴァースの部分をつぶさに見ていきました。

簡潔にまとめると、

・#は1つで、GメジャーキーよりはEマイナーキーっぽい

のですが、

・平行長調(Gメジャー)のツーファイブ(Am-D7)から始まる

・メロディに主音(ミ)が現れない

ので、少し調性が捉えにくくになっています。

また、

・Emにアヴォイドノート(b6=ド)が含まれる

ので、ヴァースに限定すればエオリアンモードと言えなくもない、という話も書きました。(ただし、メロディに短調とエオリアンモードのどちらであるかを決定づける要素はない)

コーラスの進行

では、コーラスを見ていきましょう。

今回は五線譜は使わずに、コード表で行くことにしました。

度数に加えてコードの機能も表記しています。

Tonic (T)は、起点または解決先となるコードで、どこにでも進める

Dominant (D)は、Tへ向かう力が強く、SDへ向かうのは本来禁則

Subdominant (SD)は、Dへ向かう力が強く、Tにも向かうがソフトな印象

画像1

コーラスはエオリアンモードではない

まず、短調のドミナントコードのBから始まります。

このコードは和声的短音階 or 旋律的短音階上にできるコードなので、コーラスはエオリアンモードとは言えません

メロディに和声的短音階や旋律的短音階固有の音であるVI=ド#やVII=レ#こそ使われてはいませんが、ドミナントコードがある以上、終止感の曖昧なモードではなく短調と考えた方が良いでしょう。

曲全体をエオリアンモードだと断言するのを避けていた理由はここにあります。

短調のbVI

その次のDコードはGメジャーキーだとドミナントですが、短調だとサブドミナントでドミナントのBから進むのは(DがSDへ向かう)逆進行となります。

D→Cは平行長調ならV→IV(D→SD)で逆進行ですが短調ならOKです。

Cは短調のbVIになりますが、TとSDのどちらにでも解釈できます

なので、D→C=bVII→bVI=SD→Tとなり禁則ではありません。(フラメンコでAm→G→F→E7のような進行がありますね)

ここではD→Cよりも次のC→Gの方が終止する力が強く感じられるのでSDと解釈しました。

Angelesの場合、他のところではTで解釈できるケースが多く、7-8小節目だけ一旦Tとして終止しつつリフで仕切り直してEmに向かう感じでしょうか。

リフはメロディをなぞった「シーラレ」で、C(ドミソ)のコードトーンは含んでいません。他のコードを当てるとしっくりこないので、敢えて非和声音で緊張感を出しているのだと思います。

平行長調的な要素

コーラスは、ヴァースと違って主音のミは現れるものの(表の赤文字参照)、やはりメロディがメジャー感の強い第3音のソに収まる傾向があります(水色文字)。

コードに関して言うと、4小節目が平行長調のトニックであるGコードに収まるだけでなく、そもそもトニックのEmが一回だけ出てくる以外、すべてメジャー系コードです。

まんまと騙されかけましたね笑

まとめ

ヴァースは短調(orエオリアンモード)である一方で、コーラスはもう長調で良いんじゃないかと言いたくなりますが、冒頭のB→D→Cは短調の方が説明が付きやすいんですよね。

それと、ブリッジに決定的な短調の要素があり、ブリッジの5小節目以降はコーラスと共通しています。

ということで、次回はブリッジについて書きます。

(いつも以上にマジメ感強めな記事になってしまいました。。。)


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