2024年1月に読んだもの
2024年1月に読んだ本や記事に関するメモ
世界は贈与でできている
X で誰かが年末くらいに Post しているのを見かけて買った
礼儀の本質は「冗長性」にある というくだりが特に印象に残っている。贈与は「不合理なもの」として目に映る、と
他人に感動してもらう・驚いてもらうためには、その人の期待値(≒ 合理的な予測)を超えないといけないので、合理性の枠組みからはみ出るように考えないといけない。なので、合理的に考えた結論 + α の色をつけるようにしないと、感動や驚きは生み出せないのだろう
期待値とのギャップが大事、ということは認識しつつも、どうしても合理性の枠組みの中に閉じて考えてしまうことが多かったので、認識を改めようと思った
また 人は感動をシェアせずにはいられない というくだりも印象に残っている。要は「シェア」とは「過剰に受け取ってしまった贈与(≒感動、驚き) を誰かにおすそ分けすること」だと。
そう考えると、シェアも不合理から生まれるということになるので(シェア <= 驚き・感動 <= 贈与 ≒ 不合理)、その観点でも合理性の枠組みからはみ出ることをより意識しないとな〜と思った
その他、本筋とはずれるのだろうけど「言語ゲーム」のくだりと「逸脱的思考・求心的思考」のくだりが読んでいて面白かった(5〜6章あたり)
逸脱的思考というのが、いわゆる「常識を疑え」という言葉に代表されるような思考のことで、求心的思考はそれとは逆で、常識の枠組みを疑うのではなく、それを是としたときに生じるアノマリー(齟齬・矛盾)を説明しようとする思考のこと
この求心的思考が、プロダクトをつくる際の 変な使い方をしているユーザーに注目する という考え方に近いかもしれないとか思った
訂正する力
これも X で Post されているのを見かけて買った
過去の出来事を再解釈することで主義・主張をアップデートしていくこと が大切 みたいなことが書かれていた。これ自体に新しい発見はなかったが、そのために サンクコストを保存する という考え方は面白かった。たしかに過去を再解釈して利用するためには、過去の情報を活用可能な状態にしておかないといけない。思えば、有名なスティーブ・ジョブズのスピーチ にでてくる connecting the dots の話も実は近しいことを言っていたのかもしれない
心理学的経営
ビズリーチ時代の同僚にオススメされて購入後ずっと積読していた本。去年の年末くらいにパラパラと読んだのだけれど、年始に組織デザイン考える上で「第3章 組織の活性化」のところを読み直した
組織を活性化する上では意図的に”カオス”をつくること(それによってアンラーニングを促進すること)が大事だと言っていて、そのための手段として 1. 採用、2. 人事異動、3. 教育、4. 小集団行動、5. イベント と説明している
正直なところ「組織活性化のためのイベント」というのはあまりピンときていなかった(つい斜に構えてしまう癖もあって、むしろ懐疑的だった)が、イベントの本質が ”実行までのプロセスにある” ということ説かれていてとても腑に落ちた
イベント実行までのプロセスで周りを巻き込んで混乱状態にする(そしてそこから再構築する)ことが大事で、今までだと何かしらイベントをやるにしても、周りに負荷が掛からないように自分が出来る範囲でコンパクトに〜という思考で考えてしまっていたが、それでは意味がないということがわかった
関連して、少し前のICCの記事 【最終回】「カオスから自己組織化」するチームが最高の成果を生み出す を読んだがこれも良かった
アンストラクチャー(カオス)な状態にするだけでは意味がなくて、そこからストラクチャーな状態に戻すという変化にこそ意味がある。要は、カオスを起点に自己組織化のプロセスを回すということか〜と理解した
未来をつくる言葉
これは Amazon のオススメにでてきたので何となく買ってしまったのだが、読み終わるのが勿体ないな〜と感じるほど好みの本だった
”環世界” という概念をベースに色んなことが書かれている
犬には犬の、虫には虫のそれぞれ固有の身体的な知覚があって、その知覚を通して独自に世界を認識している ≒ 環世界を構築している
人間は身体的な知覚の他に精神的な知覚をもっていて、新しい言葉や概念、表現手段を学ぶことで、その知覚を通して世界を捉え直すことができる。つまり、解釈の幅を広げることができる
元々、知っている言葉≒概念の幅が広がれば、より解像度高く物事を捉えられるようになるはず(だから、少し難しい本でも頑張って読もう)、みたいなことを思っていたのだけれど、これが環世界の概念で説明されてとてもスッキリした
安宅さんの「知性の核心は知覚にある」という好きな論文があるのだけれど、これも、知覚の幅を広げることで環世界が拡張される = 知性が作られる みたいに解釈すると似たようなこと言っているのかもな〜とか思った