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子宮仮性動脈塞栓術とその経過
稽留流産、そして手術。本厄はかなりの重量でのしかかってきた。そして後厄に突入した途端、子宮に動脈瘤が見つかり手術することとなった。新しい年が始まって、わずか10日ほどの出来事だ。今回はその手術当日および入院期間についての手記を残す。あくまで一例だが、同じ経験をされる方の参考となれば。
(手術に至るまでの過程は前回記事を参照)
突然手術が決まる
金曜日の午前、仕事中に担当医の先生から直接電話がかかってきた。昨日受けたCTの結果を受けて、手術を推奨する内容だった。流産手術で発生した血管の異常は、自然に回復することもあるようだが、私の場合手術から3ヶ月以上が経過している為、その期待は薄いとのことだった。また1ヶ月以内に結婚式と新婚旅行を控えていたため、その間の大量出血を避けられることもあり、最短で実施することとなった。
いつものレディースクリニックから紹介状を受け取り、大学病院での入院・手術・退院まで、わずか1週間であった。
手術当日
私の場合、入院は最大3日・初日の午後イチで手術といった段取りだった。経過次第では2日で退院も可能とのことだった。以下、実際のスケジュールである。
9:30 入院
10:00 看護師とのカウンセリング
11:00 着替え・準備(点滴と導尿カテーテル)
13:30 手術室へ移動
14:00 手術開始
15:30 手術終了・止血
16:00 病室へ戻る(術後4時間絶対安静)
17:00 担当医と会話
19:30 夕食
21:00 消灯
◆導尿カテーテル
午後イチの手術だったため、当日食事抜き・飲水のみ可。手術は30分-1時間と聞いていたが、実際には1時間半かかった。術前準備として点滴と導尿カテーテルの挿入があったのだが、個人的には手術よりもこの導尿カテーテルの不快感が印象に残った。術後身動きが取れなくなるための措置であり、この措置をすることで力まずとも自然に蓄尿袋へ排出される仕組みだ。バルーンカテーテルとも称され、挿入後膀胱側のバルーンを膨らませることで固定されるため外れることはない。尿道へ管を通す際、痛みとまでは言わないがツーンとした違和感があり、その後もしばらく違和感があった。次第に馴染んで気にならなくなるが、当日急に直面すると驚くと感じたので記しておく。
◆手術(子宮動脈塞栓術)
右腿の付け根からカテーテルを挿入し、目的の箇所に到達したところでゼラチンスポンジを注入し動脈を一時的に塞ぐ手術である。血管の造影を行いながらカテーテルを目的の治療箇所へ進める必要があるため(適宜レントゲンのようなものを撮影)その際呼吸を止める指示がある。そのため手術は終始意識のある状態で行われる。流産手術では静脈麻酔で眠っている間に終了したため正直ここが一番不安だった。しかし造影剤・麻酔共に副反応なく、局部麻酔もしっかり効き、痛みや吐き気など一切なく終了した。1時間半要したが、体感は40−50分程度だった。最後にカテーテルを抜いた箇所の止血で、先生が2分ほど押さえてくれている間に少し会話をした。
手術を担当したのは婦人科の主治医とは別の放射線科?(詳細は失念)の先生だったが、主治医から結婚式や新婚旅行を控えていることまでしっかりと引き継がれていた。手術中も「今目的の場所に到達しました」「詰める薬剤を作っています」「もう一箇所塞栓します」など声かけをしてくれたので安心して終えることができた。
◆4時間の絶対安静
術後は傷口が塞がるまで、絶対安静が命じられ状態を起こすことさえできなかった。手術室からの帰り道は仰向けでガラガラと運ばれ、よく医療ドラマで見る運ばれ方だ…等しょうもないことを考えていた。部屋に戻ると看護師さんがスマホを枕元に置いてくれたので、すぐ夫に連絡できた。片手で操作する分には自由にスマホを触ることができた。麻酔もあったせいか少しぼーっとしていたので、この4時間はあっという間に経過した。
4時間後上体が起こせるようになるため夕食をとった。あまり食欲も湧かず、疲れていたせいか半分ほどで十分だった。
◆侵襲反応
自分では気付かなかったが、食後の検温で37度台の微熱があった。また手術直後には感じなかった痛みが出てきた。この痛みはカテーテルを挿入した場所ではなく、普段の生理痛というような感じで、子宮が収縮しているような痛みだった。ロキソニンを処方してもらい、痛みも熱も落ち着いた。
◆寝れない
入院したのが産科病棟だったので、フロアには妊産婦が多かった。私は事故発生的流産だったが、もし妊娠を望む人が流産→動脈瘤という流れを辿っていたら結構しんどい状況なのかもしれないと思った。ちょうどその日は看護師さんが少ないのか、出産が多かったのか、フロア全体がバタバタしていた。赤ちゃんの不規則な泣き声や慣れない環境で、その日はあまり寝られなかった。私は入院当日の手術だったが、隣のベッドの人は入院翌朝1番の手術だったので、夜寝られなかったら焦るのではと思った。もし手術の時間が選択できるようならその辺りを考慮して決定しても良いかもしれない。
手術翌日
6:00 起床
8:00 朝食
10:00 歩行テスト
12:30 昼食
14:30 面会
18:30 夕食
19:00 シャワー
21:00 消灯
◆脱!尿カテ・点滴
「手術の翌朝、経過を見て大丈夫そうであれば歩行訓練しましょう」と事前に言われていた通りとなった。傷口を確認するなり、問題なし!と小さい絆創膏が貼られ、「え?こんなんで大丈夫なん?!」と突っ込みたくなる対処だった。右脚を固定していた強力テープを剥がしてもらい(これが一連の中で1番の痛み!)自由に身体を動かせるようになったところで、トイレまで1人で問題なく歩けるかをテスト。導尿カテーテルを外してもらい、点滴用(または緊急時の輸血用)の針も同タイミングで撤去となった。
尿カテの影響で排泄が元に戻るまで時間がかかる場合があるとのことで、外した後2回分の排尿を看護師さんに確認してもらい、身体上の不自由はほとんど解消された。
◆面会
面会時間が13−17時と限られていたが、午後休を取得した夫が登場。初日はシャワーも浴びられなかったため、洗濯物はほとんど出なかったが、思いのほか体力が回復していたため、iPadとキーボードを持ってきてもらった。(これでnoteが書けるようになった)自分は気弱なタイプではないが、やはり身近な人の顔を見て会話すると、大分気分が和らいだ。
◆シャワー
入院経験がなく、お泊まり会のようにシャンプーやコンディショナーなど揃えて持ってきてはいたが、結局シャワーを浴びたのはこの1回のみ。病院のドライヤーは台数が少ないのと馬力が低そうなので体を洗うのみにとどめた。
退院の日
6:00 起床
8:30 朝食
9:30 診察・エコー
10:00 採血
10:30 会計
11:00 退院
最終日は朝ご飯を食べ、エコーで異常なしを確認し、採血を済ませたらあっさり退院。会計は全部で80,000円程度だった。まだ全快とは言えないまでも、バスや電車を乗り継いで帰宅するには全く問題ない体力だった。
駅前の花屋で、頑張った自分にご褒美の小さなブーケを購入し帰宅。
手術から1ヶ月
手術から1ヶ月が経過し、病院でエコーと血液検査を受けたところ、快調!とのことでホッと胸を撫で下ろす。術後1ヶ月間は自転車こそ禁止だったものの、無事結婚式を挙げ、新婚旅行も思いっきり楽しむことができた。この1ヶ月後の経過観察時は術後初めての生理が来ていたが、妊娠前の生理とほとんど変わらない印象だった。血液検査でHCGの値もチェックしたところ、正常値であることを確認。
ようやく妊娠前の体に戻ったぞー!
流産手術で「処置完了!」と思っていたものが大量出血→動脈瘤発覚と続き、今回も手術をするのみでは完了した感覚にはとてもなれなかった。しかし経過観察で異常なし、また次回生理を見送った後は妊活開始も可能とのお墨付きをもらったことで、それまでの爆然とした不安が払拭された。
最後に
私がこの経験を通して一番の教訓として得たものは、「ネットの中に答えはない」ことだろうか。まさかこんなことが自分の身に起こるなど想像もしていなかったので、稽留流産も子宮仮性動脈瘤も、発覚してからは不安で参考文献や論文を調べたり、同じ体験をした人のnoteやブログを探して読んでいた。そして近しい症状の人の記事を読んで安堵することもあった。しかし、全く同じ症状の人など今振り返ってみると1人もいない。術後の生理のタイミング、経血の量、回復の仕方、全く同じ体がないのだから、「普通」というものも無い。一つでも多くの症例を見ている医師がようやく「基準」を知っている。
本記事も体験記として参考になれば嬉しいが、あくまでも参考にとどめ、読んでくれた方が自分の身体と向き合うきっかけとなれば幸いである。
◆おまけ
入院ハックあれこれ
初めての入院生活だったので、基本は病院の指示通りの持ち物を持参。食事の際の箸が各自持参だったのが驚いたが、食事は美味しく量も十分だった。
・持って行って良かったもの
ウェットティッシュ
生理用ナプキン(おりものシート10、普通5、夜用3の内訳で持参。足りたけど普通用がギリだった。病院で買うと1パック500円くらいするので多めの持参推奨)
スキンケア(化粧水・クリーム類)
ワイヤレスイヤフォン(耳栓にもなるので、おかげで2日目よく寝れた)
・早めにやっておくと良いこと
生命保険用の診断書作成依頼(病院への申請から受領まで3週間かかる)