FINAL FANTASY VII REBIRTHの悪いところ
以前、物語の結末を迎えたタイミングでFINAL FANTASY VII REBIRTHの良かった点を指摘する記事を書きましたが、今回は悪かった点(私の個人的な不満点)を挙げました。
もし開発スタッフの方々の目に触れる機会があれば次回作の参考にして頂きたいという思いで綴りましたが、本記事を購入の参考にと考えていらっしゃる方に強調しておきたいのは私はREBIRTHの購入を強く勧める立場だということです。
本記事は非常に長々と不満点を記述していますが、本作にはこれらを覆い隠すほど沢山の魅力が詰まっています。私のREBIRTHに対する評価は以前書き記した時から現在も変わっておらず、少しでも気になっている方は勿論、偶々この記事を読まれている方にも是非体験して頂きたいゲームだと考えています。
なお、本記事では1997年にPlayStationで発売されたFINAL FANTASY VIIは『FF7』、2020年にPlayStation4で発売されたFINAL FANTASY VII REMAKEは『REMAKE』(2021年発売のFINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADEも基本的にここに含みます)、そしてFINAL FANTASY VII REBIRTHは『REBIRTH』という略称で統一しています。
筆者はFF7をPSで、REMAKE INTERGRADEをSteamでプレイ済み。2022年にREMAKE INTERGRADEがSteamでプレイ可能になるまで10年以上ゲームから離れていましたがそれを機に最新のゲームをプレイするようになり、今回REBIRTHのためにPS5も購入しました。そのため最新のゲームの常識に無知だったりします。
その様な人間の感想だということを前提にお読み下さい。
演出
チャドリーとFF7世界の乖離
前作REMAKEではバトルレポートや召喚獣バトルなど限られた瞬間しか交わることがなかった元神羅研究員チャドリー。本作ではワールドレポートが彼の依頼によるものという体をとっているため登場機会が大幅に増えることになりました。
FF7AC以降の関連作品で若い美少年キャラクターの登場傾向が高いことがREMAKEプロジェクトでも継承されていることは前作でも多少気にはなっていたのですが、オリジナルのFF7が味のある年配キャラクターを多数登場させ魅力的な世界を描き出していただけに、今作で大幅に増えたチャドリーとのやり取りでオリジナルのFF7世界との乖離を如実に感じました。
また、『敬語口調の美少年』という属性は何処かで見たことがある要素の組み合わせでもあるため安易に感じますし、彼の開発したAIという設定を持つMAIを天真爛漫な美少女キャラクターとして相棒にしたこともこの違和感に拍車をかけています。
本作にはブロードやロドナー、ロンリー・ゲスといった新たな登場人物も追加された訳ですが、妖しく独特な個性を与えられた彼等にはFF7らしさを感じられたためガイド役の人物にもこうした人物を設定した方が適任だという印象を受けました。
ホログラムを多用する演出は少々世界観を壊している
FF7の世界は魔晄エネルギーという空想のエネルギー源を利用した社会が発展していますが、それほど高度な機器は登場せず景観としても錆や傷といった経年劣化が進んだ建築物が立ち並ぶ様子が退廃的な印象を強調しているなど、そうした『生々しさ』がFF7の魅力の一つでした。その為、そんな"ローテク"な風景から逸脱するようなモバイル端末からホログラムが投影されるなんて演出はその世界観に魅せられた者にとっては没入感を削ぐ要素です。
ミッドガル脱出後クラウドがPHS(Personal Handy-phone Systemではなくパーティ編成システム)を渡されるなど1997年当時のテクノロジー水準が如実に作中に影響しているFF7でしたが、これは一つの個性として継承されるべきものだった様に感じます。
パーティー固定が多いことに対する不満
これは"程度の問題"であると思いますが、本作は物語の進行上バトルメンバーが固定される機会が非常に多いことが気になりました。
時には物語の展開に依存してメンバーが固定される時があってもいいし、ゲームとしての山場の作り方として『〇〇を使わなければ先に進めない』という"与えられた戦力で難局を切り抜ける、制限に対する解法模索"という課題をプレイヤーに課すのも構いません。
しかし、発売前のインタビューでゲームの宣伝文句として自由度の高さを謳うのであればプレイヤーごとに異なる戦略と戦術を発揮する機会も尊重するべきだと感じます。バトルはREBIRTHの主たる要素の一つであることは間違いなく、プレイヤーは時間を掛けて自分なりの戦い方を見出していきます。ところが、『誰を選ぶか』『どんなマテリアを選ぶか』『どんなアビリティを選ぶか』の自由を与えておきながらボス戦になるとその自由が発揮できなくなる機会が頻繁に訪れるというのは些か問題です。
REMAKEは全員が揃って行動する瞬間が少なかったこともあり気にならなかったのですが、REBIRTHで描かれる区間は旅に同行するキャラクターが増えた上、誰かが離脱する展開も少なくなりました。その為、気に入ったパーティーで思い思いの戦術を練ることが可能になった訳ですが、その腕試しの機会と言えるボス戦になると拘りが発揮出来なくなるというのは如何なものでしょう。
バトルシミュレーターやマッスルコロシアムがあるからいいのか?いえ、物語上の起伏込みで行われるメインストーリーのボス戦とバトルシミュレーターでのバトルを同じ扱いにしてはいけません。全てのプレイヤーが通過するメインストーリーのボス戦と腕試しの機会として一部プレイヤーが任意で挑戦するバトルシミュレーターやマッスルコロシアムは別として考えるべきです。
こうした自由の制限はある種『ゲームの進行が一本道である』などの指摘よりも強く批判されて然るべき点であるように感じます。
ボス連戦展開を多用し過ぎている
本作は前作以上にボスとの連戦が多く、遭遇すると「またか」とうんざりすることが多くありました。
ボスの連戦は一戦ごとの重みが薄れるだけでなく、単独なら楽しめる手応えのあるバトルを辟易とするものに変えてしまうことがあります。バトルの際の心理的負荷はプレイヤーによって異なるもので、ゲームとはいえ過度に緊張してしまう私のような人間も居ます。しかし、当然それはプレイを断念するほど耐えれないようなものではなく、そうした消耗があるからこそ勝利した際の快感も大きいわけです。
ところが、一戦に集中しようやく倒し終えたところで直ぐに次の相手が現れては緊張状態から解放される快感が得られないばかりか前の戦闘で苦戦が続いていた場合は連戦に不快感を感じることもあります。
こうした問題はバトルとバトルの間にほんの少し会話を挟みメニューを開いたりセーブする機会を設けてくれるだけで緩和されます。そうした『安全な場所に帰還した感覚』が消耗した精神を回復させてくれるからです。恐らくコアゲーマーになればなるほどこうした言い分は理解出来ないものになると推測しますが、FF7リメイクプロジェクトの様にカジュアルなプレイヤーも顧客とされたゲームの開発であれば多少なりとも耳を傾けて下さることを期待します。
また、この問題にはもう一つ別の視点から指摘しておきたい問題があります。近年のゲームは一度のプレイをコンパクトに納められるよう工夫されていることが殆どで、嘗てのように”セーブポイントとセーブポイントの距離が分からない区間をプレイする場合にゲームの終了時間をコントロール出来ない”といった問題がなくなりつつあります。こうした変化は様々なプレイスタイルのプレイヤーに対応するという点で明らかに良くなったことです。
しかし、本作のようなボス連戦展開は一日のプレイ時間を短くしかとれないプレイヤーにとっては大きな負荷になる可能性があります。例えば3連戦のボスの1・2戦目は多少の苦戦はしながらも初回プレイからクリア出来たものの3戦目に苦手なギミックが存在し何度挑戦しても勝てない…という躓きに遭遇した場合、3戦目の直前からのリトライが可能であっても一日のプレイ時間を使い果たし一旦終了しなければならなくなった場合は別日に再度1・2戦目からプレイし直すことになるわけです。そこで3戦目のつまずきが長引いてしまい、また別日の挑戦になってしまった場合どうなるでしょう?勝てる1・2戦目を繰り返させることは必要でしょうか?プレイヤーは退屈さや面倒くささを感じるだけでなくそれによって一日の限られたプレイ時間を浪費してしまうわけです。
近年リリースされたゲームは『無意味な繰り返しを排除する』という傾向が強まっています。誰であれ一度クリアした箇所を短期間に何度もプレイしたいとは思わないためこの風潮は正しいと言えます。
面白いゲームである限り強力なボス戦や難解な謎解きなど高いハードルを設けることに問題はないでしょう(当然程度の問題はあります)。しかし、『コンパクトなプレイを不可能にする』『一度クリアした展開を短期間に何度も繰り返しプレイさせる可能性を残す』ゲームデザインは正しいとは思えません。
盛り上げ方が過剰である
本作全体を通しての印象の一つに悪い意味で盛り上げ方が過剰であるというものがあります。
例えば『コスタ・デル・ソルがモンスターに襲われるが、その直ぐ後にはもとの生活が戻っている。』など突拍子もない展開は気分が冷めてしまいます。
本作で追加されたコスタ・デル・ソルにて宝条の生み出したモンスターと戦うイベントはグラフィックが写実的になったが故に、光景があまりに現実離れしていてプレイしていて興醒めしてしまっただけでなく思わず失笑しながら臨んだほどでした。それは「こんなに一般人が居るのにここで戦うの?」という笑いです。
こうした展開はグラフィックがデフォルメされた状態であればすんなりと受け入れられたことと思いますが、写実的になったが故に強い違和感を感じる箇所となってしまいました。
『ゲームなんだから』の論理をどこまで通すかは究極的にバランスの問題であると思いますが、コスタ・デル・ソルでモンスターと戦う展開を作るにしてももう少し自然な流れを用意できたのではないかと思わざるを得ません。同じ様に一般の乗船客が居る第八神羅丸でもモンスターに襲われる展開がありましたがあちらはまだ納得出来る描写が為されていました。
また、タークスとの再戦が多い展開や前作に続いてルーファウス神羅とのバトルが用意されたことなどは物語の盛り上がりを感じるよりも人気キャラクターの安売りの印象を受けました。
ルーファウス神羅は本作では温存し3作目で大幅に強化された状態で登場させ、そのバトルを名場面として演出するなんて展開も良い選択肢であったと思いますが、タークスの多用などと同じく良く言えばユーザーへのサービス精神が旺盛、悪く言えば引き算が出来ていないゲーム作りが気になります。
長期のシリーズを設計する場合、時には"タメ"を作ることも必要です。
バトル中に挿入される演出はやはり蛇足
これはREMAKEプレイ時から感じていた点で、残念ながら本作にも継承されてしまった要素です。
アクション要素の強いバトルの最中は絶えず次の動きを考えながら集中して操作をしている訳ですが、ボスキャラクターとのバトルではその最中に時間の流れが停止し長いカットシーンが挿入されその後再度バトルに戻ることがあります。演出としてそういった表現を導入したくなる心理は理解出来るのですが、こうした演出はプレイヤーの集中を途切れさせ没入感を削ぐものです。
カットシーンではなくバトルの進行に合わせたセリフをキャラクター達が話す演出はプレイヤーにゲームをしている実感を感じさせつつドラマも魅せることが出来る良い手法です。対象のHPをゼロにした瞬間がバトルの終わりだという大まかな認識の中で集中している場合、その目的に達していない段階でプレイヤーの邪魔をする様な形でカットシーンが割り込んでくることはプレイに水を差す行為とも考えられます。長いカットシーンはバトルの前か後と棲み分けるだけでバトルの爽快感は大きく向上するというのが私の意見です。
また、これは何度も全滅し再挑戦を繰り返すことも起こり得るHardでのプレイにも大きく影響しています。
REMAKE及びREBIRTHでは通常、大半のイベントはスタートボタンから選択するか△ボタン長押しでスキップが可能なのですがバトル中に関してはそうした措置が備えられておらず、戦闘の度に必ず見なければならないカットシーンが存在します。
EasyやNormalでのプレイ中にはなかなか気になりませんが、HardやAdvancedで何度も全滅を経験しながら戦略を練り直し挑戦する場合はこうした時間がストレスとなります。それなのにも関わらず、バトル中のカットシーンをスキップ出来ない仕様が集中力の低下やストレスの蓄積を招いてしまっているのです。
次回作ではこの点が修正されることを切に願います。
メタ笑いを誘う中井和哉ギルガメッシュとレッドXIIIの「海賊王」説明
リメイクプロジェクトで新たにレッドXIII役に起用された山口勝平氏。
『魔女の宅急便』のとんぼや『名探偵コナン』の工藤新一などを歴任されてきた方ですが、彼はアニメ『ONE PIECE』では主人公モンキー・D・ルフィと共に麦わらの一味として共に冒険に同行するウソップ役を担当していらっしゃることでも知られています。人気漫画ゆえ、ONE PIECEという物語が主人公のルフィが海賊王を目指すというものであるということは未読でもご存知である方は多いでしょう。ここで気になるのがREBIRTHのゲーム中、レッドXIIIが特別なアクセサリ海賊王の羅針盤を作成することを目的とした一連のイベント『海賊王の秘宝』に纏わる伝説を海賊王という単語を用いて解説する展開が存在すること。
山口勝平氏の声で全く別の作品から海賊王という単語を用いたセリフを聞く…思わず笑ってしまいましたがこうしたメタ笑いは肯定側と否定側で意見が分かれやすいものだと思います。今回の件に関しては私は否定側です。
ゲーム終盤、メインストーリーではない領域ではありますがゲームへの没入感を削ぐもので、他に幾らでも回避の仕方があったため少なくともレッドXIIIに語らせる展開は必要なかっただろうというのが私の意見です。
また、本作でのギルガメッシュはDISSIDIA 012 FINAL FANTASY以降の配役を継承して中井和哉氏が起用されています。FINAL FANTASYシリーズのギルガメッシュはFF5で初登場しその後シリーズ馴染みのキャラクターとして他作品にも登場するようになりましたが、彼は外見や設定が平安時代に源義経の家来として伝承される僧衆・武蔵坊弁慶の伝説や浮世絵をモチーフとしている存在です。
アニメONE PIECEのワノ国編を経た今、ギルガメッシュから中井氏の声が聞こえてくることはロロノア・ゾロが武蔵坊弁慶をモチーフの一つとするキャラクター牛鬼丸と闘ったシーンを想起し、ロロノア・ゾロ役の印象が強い中井和哉氏が同じく武蔵坊弁慶をモチーフとしていると見られるギルガメッシュを演じていることの可笑しさもレッドXIIIのものと同じメタフィクション的な笑いを感じました。
恐らくONE PIECEほどの有名作でない限りこんなことが気にかかることもないとは思いますが、ギルガメッシュに関しては開発期間とアニメONE PIECEの放送期間が重なっているためどうしようもないとしてもレッドXIIIに関しては対処が出来たのではないかと思います。
物語
ボーンビレッジがスキップ
オリジナルのFF7では古代種の神殿でセフィロスに黒マテリアを渡した後、ゴンガガ村で目を覚ましそこからタイニーブロンコでボーンビレッジを目指すという展開でしたが、REBIRTHでは一足飛びに眠りの森に移動し謎解き要素の無い忘らるる都に突入するというものに変更され、そこまでの展開と比較すると駆け足で言葉足らずなものに感じました。
綿密に推敲した結果がこの通りならば良くないですし、ゲーム全体のボリュームの都合上止むに止まれぬ理由だとしても再考して練り直すなど対処して頂きたかったところです。ロケット村やウータイを三作目に先送りした末の"尻切れとんぼ"気味な最終局面というのは、そこまでの詳細な語りから考えると勿体なく感じます。
ジュノンエリアの寝ている男性やゴンガガエリアの武器職人などオリジナルにあった要素を緻密に移植しているREBIRTHだからこそ、眠りの森・忘らるる都突入前にボーンビレッジで発掘調査をするという思い出深いイベントも踏襲して頂きたかったところです。
バトル
消えてしまった『大いなる福音』
オリジナルのFF7に存在したエアリスのリミットレベル4のリミット技、『大いなる福音』。
これは戦闘中HP・MPを全回復した上で一定時間無敵にする効果を持つ強力な技ですが、ディスク1の終わりでエアリスは離脱してしまうため「大半のプレイヤーは発動映像を見たことがない」「ゲーム後半、習得用アイテムの入手方法を知り手に入れてみるもエアリスがおらず物悲しい思いをする」など、様々な意味で思い出深いリミット技でした。
ところが、REBIRTHではスキルツリーにて習得できるリミットLv3の技は『怒りの烙印』となっているためREBIRTHで大いなる福音を見ることは残念ながら叶わないままとなりました。次回作でも物語上の演出としてエアリスの再登場は大いに有り得ると考えられるのですが、オリジナルへのオマージュの一環として「習得条件も入手条件も非常に困難ながら古代種の神殿に辿り着くまでに入手すれば非常に強力なエアリスのリミット技」という労力と見返りがあまり見合っていない名物要素のまま是非実装して欲しかったところではあります。
味方の思考ルーチンの乏しさ
REMAKEもREBIRTHも制作側の意図としてはバトル中操作キャラクターを切り替え複数キャラクターを扱うことを促している様子ですが、クラウドを操っている最中にパーティーメンバーが的確なタイミングで魔法やアビリティを使用してくれた瞬間を目にすると嬉しくなるもので、そうした『仲間と共に闘っている実感』はもっと強調されても良いように思います。
とはいえ前作も本作もバトル中の味方の思考は賢くなく的確な判断は殆ど見られません。REBIRTHではスキルツリーと武器スキルという任意のキャラクター強化の仕組みが存在しますが、思考ルーチンも支援マテリアではなく"スキル"として独立させ幾つかの簡単な命令でコントロールすることを可能にしても良いのではないかと感じました。
FF12にはこの思考ルーチンの組み立てを高い自由度で実現したガンビットが存在しましたが、こちらは究極的にバトル前に吟味したガンビットによる行動パターンを眺めていることが当たり前になり、不測の事態が起きた時だけプレイヤーが介入するものとなっていました。というのも『味方のHPがx%以下』などの発動条件と回復アイテムや回復魔法を組み合わせると確実に人間より早く的確に実行してくれたためです。
ガンビットのような仕組みはゲーム性を根本から変えてしまいますし、プレイヤーが主体的にコマンドを選択し続けるものであったFINAL FANTASYのバトルの伝統が大きく変わったことには多少の疑問も感じました。
バランスの難しいところではありますが、アクション要素が強くなったリメイクプロジェクトのバトルは忙しなく思考が疲弊しやすいため、プレイヤーを補佐する程度の仕組みはもっと拡充されてもいいように感じます。
セフィロスが"人間らしい強さ"になってしまった
REBIRTHは5年前ニブルヘイムでの事件をクラウドがエアリス等に話すシーンから物語が始まりますが、その最中、オリジナルではバトル中操作不可能だったセフィロスが操作可能になるという変更を体験することが出来ます。
しかし、私はこの変更によってセフィロスの魅力は減退したと感じました。
こちらはREBIRTH発売前、2023年09月Gamerに掲載されたインタビューより引用したクリエイティブ・ディレクター野村哲也氏の発言。
この認識には間違いがあります。オリジナルのFF7に於いて戦闘中のセフィロスはATBゲージが溜まると自動的に行動するオートバトルの形をとっている為操作出来ないが正しく、だからこそチートコードを用いて回想シーンのセフィロスを操作しようとするプレイヤーが注目されたのです。
また、オリジナルではセフィロスはいかなる攻撃でもダメージを受けることがなく、攻撃を受けた際にモーションをとることもありません。一切ダメージを受けることなく強力な通常攻撃と魔法攻撃を駆使して淡々とモンスターを圧倒する様子はFF7をプレイした多くの方の印象に残った筈です。
ところがREBIRTHではモンスターからの攻撃を受ける上、少し油断していると戦闘不能になってしまう様にステータスが設定されています。物語上も言葉数が増えた為ミステリアスな魅力が減少しましたが、戦闘に於けるクラウドとの圧倒的な差も感じられ難くなってしまった為回想シーンの一つの見所が失われたことは残念でした。
前作に慣れたプレイヤーにはブレイブモードカウンターの変更に戸惑い
本作のバトルにはR1に◯・☓・△・□の何れかを組み合わせることで発動する連携アクションの要素が導入されました。開発者側の意図としては「空いているボタンの組み合わせに新要素を」ということもあったのかもしれませんが、これは大きな弊害を生み出しています。
クラウドはバトル中△ボタンでアサルトモードとブレイブモードの切り替えが可能で、前作ではアサルトモードでガードをしながらブレイブモードのカウンターに頼る場合ガードボタンに指を掛けたまま△ボタンを押すことでブレイブモードのカウンター発動待機状態に移行することが出来ました。
ところがREBIRTHではR1ボタンに連携アクションが割り当てられたことで□ボタンや◯ボタンで他の操作を行っていた最中、相手の攻撃が見えたのでR1ボタンに指を掛ける…というREMAKEでよく行っていた流れで操作するとボタンの組み合わせが受け付けられてしまい目的だったガードにならないケースが何度も起こるようになります。
「Classicモードに頼る程ではないがアクションは得意ではない」というプレイヤーにとってREMAKEのバトルは丁度良い難易度で、攻撃に対して的確に回避やガードを繰り出せる訳ではなくても焦りながらガチャガチャと操作していると勝てるというところに収まっていました。
アクションが得意ではないプレイヤーにも幾つか種類はあると思いますが、私のようにどうしても変化し続ける状況に焦ってしまい各操作を切り分けて独立させられない人間にとっては他の操作を完全に中断して△ボタンを押しブレイブモードのカウンター待機状態をとる、或いは他の操作を中断してR1ボタンを押さなければガードにならないというのは大幅な難易度上昇と言えます。ガードをしたつもりが『超とっしん』や『ワイルドラン』が発動してしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
REMAKEのバトルが比較的シンプルな形に収まっていた為、新要素として空いているボタンの組み合わせに新たな要素を追加した判断は結構なことではありますが、そのあおりを受けてしまう人のことまで考慮して頂きたかったというのが正直な感想でした。
特定のアイテム使用時の効果音が異様に大きい
具体的にはミストハイポーションがその例なのですが、キャラクターの位置取りによって効果音の聞こえ方が変わるため大きな音量に驚くことがあります。
メニュー
メニュー画面のデザイン変更
前作のメニュー画面が硬派且つオリジナルのFF7へのオマージュに満ちた構成だったのに対してREBIRTHのメニュー画面は開く度に3Dモデルのキャラクターが表示される、どことなくFortniteの一場面を連想するようなものに変更されました。
この3Dモデルは物語の進行に合わせて服装やキャラクターの年齢なども変化する為、これ自体が見世物としての面白さを提供している側面があります。しかし、一方で前作が硬派で感傷的な世界観と符合する雰囲気を醸し出していたところからどこか陽気で緊張感に掛ける印象になったことは少々がっかりする変更点でした。
マテリアクイックとユーザビリティ
本作は前作REMAKEと同じく各キャラクター個別のマテリア脱着メニューにアクセスしている最中にはマテリアクイックに移行することが出来ません。しかし、メニュー画面内ではマテリアクイックへのアクセスを柔軟に対応するよう設計されるべきだったと感じます。
マテリアクイックを呼び出すタッチパッドボタンには他の操作が割り当てられている訳でもないのでボタン的な制約は存在しませんし、個別のマテリア脱着中に他のキャラクターの装備状態を確認したり変更したりしたくなった際に一度キャンセルボタンを押さなければならないのは非効率的です。
装備中の召喚マテリアへのアクセス
マテリアクイック中、上下キーで各キャラクターの装備している召喚マテリアを一括確認することが出来ないのも不便な仕様です。
こちらはREMAKEでは可能だっただけに不可思議な変更点ですが、装備中の召喚マテリアにカーソルを置いた状態で下キーを押すと同キャラクターの防具のマテリア穴にカーソルが移動します。
一瞬の硬直が長いプレイではストレスに
MATERIA & EQUIPMENTメニューはプレイ中頻繁にアクセスする項目ですが、武器にしてもマテリアにしても変更メニューに入る際多少の待ち時間が発生します。恐らくロード時間と思われますが長時間のプレイでは気になるところです。
また、マテリアクイックをキャンセルした後に個別の脱着メニューに入る時のみ暗転が入ることも長時間のプレイでは煩わしさを感じる挙動です。
武器アップグレードの分離とスキルツリーの導入
前作に存在した武器アップグレードの廃止は少し残念に感じました。
REMAKEではオートに設定することで煩わしさを感じることなく武器の強化を実感することも、マニュアルで戦術に合わせてアップグレードの方向性を吟味する愉しさを味わうことも出来ました。
例えば「近接戦闘担当のティファはマテリア穴の連結は犠牲にして力の上昇を優先しよう」などです。
本作は武器の成長によって習得した武器スキルの中から選択する要素はプレイヤーの個性が出る要素で良かった点でしたが、武器の成長そのものは見ているだけになってしまい残念でした。キャラクター固有のスキルツリーを導入したことによって二つの手動育成要素を両立させることを却下したのでしょうが、前作で馴染んでいただけに寧ろこちらを残しスキルツリーを別な形として欲しかったと感じています。
武器防具・マテリアの装備状態はプリセットスロットに保存可能とするべき
マテリアの組み合わせは通常戦闘とボス戦で異なったものにしたい場合も多く、バトル前とバトル後に複数キャラクターのマテリアを付け替えることは多大な手間を伴います。また、周回プレイ時には既に分かっている効果的な組み合わせを再現する単純な作業となることも多いため、マテリアの付け替えに補助機能が無い現状ではその作業自体に無駄な印象を受けることも少なくありません。
そこで、こうしたケースの支援策として一度作った武器防具・マテリア装備の組み合わせをプリセットスロットに保存しておける機能を追加するべきです。
この機能が実装されればマテリアと武器・防具の組み合わせを幾つかのパターンに分類し、それらを切り替えることで根本的な付け替えの手間から開放され長時間メニュー画面に向き合う手間からプレイヤーを開放することが出来ます。
また、"ふと思いついた変なマテリアの組み合わせ"を試す"など、全てを付け替える億劫さから躊躇してしまう遊びの探求も支援することとなり、エンゲージメント時間も長くなる筈です。
プリセット保存段階で所持していた防具やマテリアがリコール時に失われている場合は欠落した状態が復元されるなどあまり親切な設計でなくとも構わないのでリメイクプロジェクト3作目では各人3つ程度のプリセットスロットを用意して頂けるとプレイは非常に快適なものになることと思います。
武器防具とマテリアの組み合わせをあれやこれやと思案することはオリジナルのFF7と変わらずリメイクプロジェクトでも醍醐味であることは間違いありませんが、私が指摘したいのは『決まった組み合わせを再現する』という機械的な作業がプレイ中に何度も起こり得る現状は好ましくないということです。
グラフィック
前作では気にならなかった瞳孔の作用が『探索』を主眼に置いたREBIRTHでは億劫な要素に
人間の目は明るい場所から暗い場所へ移動すると瞳孔を自然に拡大し、より多くの光を取り入れようとします。この時、最初は周囲が非常に暗く感じますが、徐々に目が慣れてきて物が見えるようになります。逆に、暗い場所から明るい場所へ移動すると瞳孔は急速に縮小し、光の量を抑えます。最初は眩しくて目がくらむように感じますが、時間が経つにつれて周囲が見やすくなっていきます。
これを暗順応・明順応と呼びますが、前作REMAKE及び本作ではこうした瞳孔の作用がゲーム内で再現されており、暗い場所から明るい場所へ飛び出すと暫く周囲の景色が白っぽくなり、その後徐々に本来の見え方に戻っていくという処理が確認出来ます。
REMAKEではこうした凝った表現を驚き喜んだのですが、マップが広大になりワールドレポートやチョコボストップを求めて彷徨うことがゲームの主たる目的の一つとなったREBIRTHでは移動中に光量の異なる場所を行き来し、先が見える様になるまでほんの数秒でも待たなければならない状況に遭遇する度にストレスを感じる様になりました。
丁寧な映像表現は肯定的に評価したいところなのですが、探索が行われるマップに限ってだけは先が見えることを優先した処理がなされるなどの妥協があった方がいいように感じました。
乗り物ごとにバラつきのあるディテール
本作には複数の乗り物が登場し、オリジナルのFF7と同じ様にそれらに搭乗し自ら操作することが可能でした。基本的には良かったと思うのですが、乗り物ごとに多少作りにバラつきを感じる点もあり、作り込みが足りないところが気になりました。
具体的には、コレルエリアで操作出来るバギーのディテールはサスペンションの動きなど見ていて関心するほど素晴らしいものでしたが、相対的にタイニーブロンコは動きの現実感の低さや動作原理の不明瞭さなどからおもちゃっぽく見えてしまいました。こちらは水に浮いているというシミュレーションの難しい要素が関係していることは理解していますが、バギーやウィリーの完成度が高いだけに劣って見えてしまいます。
次回作でハイウインドの扱いをどうするかは野村哲也氏のインタビューで何度か話題に上っていますが、もしプレイヤーが操作することを可能にする場合、折角ジュノンで感じたあの感動を壊さないようにギミックやテクスチャーを可能な限り丁寧に作られることを願います。
ミニゲーム
モグはうすが全くの別物に
オリジナルのFF7に存在したゴールドソーサーのモーグリゲームといえば幼いモーグリの成長と旅立ちを描き、更に後ろで見ていた男性が感動しGPを分けてくれるというクリア後のやり取り込みで記憶に残る印象的なミニゲームでした。
REBIRTHではこのミニゲームがモーグリ・コープに置き換えられたことで育成ゲームという形式のまま本格的なものにアップデートされることを期待していた私は肩透かしを喰らいました。
『モーグリ・コープ』及び『ラン・ワイルド』ミニゲームの不快感
これらは基本的な構造が似ていて、クラウドやレッドXIIIを操作してモーグリ及びボールを押し、所定の場所まで移動させるというゲームです。ところが、どちらも非常にストレスの溜まる内容で端的に言えば不出来だと感じました。
モーグリ・コープもラン・ワイルドも基本的に同じ問題を抱えているのですが特に問題を感じたラン・ワイルドについて感じたところを詳しく申し上げます。
本作はレッドXIIIを操作しボールをドリブルしたり蹴り出しながら広いフィールドを駆け巡りNPCよりも多く所定の枠内にゴールを決めるという、枠組みだけ聞けば爽快感に満ちたゲームです。未プレイの方はこの説明を読んでRocket Leagueを連想したかもしれません。
ところが実態はそうなっておらず、絶えずカメラを操作し周囲の状況(障害物の位置やNPCの動き)を見回しながらボールの転がる方向を予測、レッドXIIIの立ち位置を細かく修正し状況が混乱しない内にシュートを放ってスコアを稼ぐ神経質なゲームになってしまっています。勿論Rocket Leagueとは似ても似つかず、あの様なおおらかで派手な爽快感に満ちたゲーム体験とは真逆の出来です。
通常のサッカーゲームであれば一度ボールを保持すれば相手から奪われない限り左スティックの操作だけで意のままにボールを操ることが出来るのに、ランワイルドの場合は妙に物理原則に則した形をとったため、NPCとの駆け引きやシュートを打つ際のゴールに対する位置取りがポイントになることよりも間違った操作をしてボールが意図しない方向に転がらないよう気をつけるばかりのストレスフルなゲームになってしまっています。
また、ラン・ワイルドはハイスコアを達成した場合得られるアイテムがその時点でバトルの役に立つものである為、メインストーリーとバトルを楽しもうとしているプレイヤーにとっては完全に無視するのも難しく、ある程度時間を費やすことになります。こうしたミニゲームの賞品設定はバトルに影響しないだいじなものなどの称号アイテムに留めるべきです。
数多くのミニゲームを含んでいたオリジナルのFF7で最も人気を博したのはスノーボードでした。元々はアイシクルロッジから絶壁の麓へ滑り降りる為に物語上必ず経由するミニゲームですが、後にゴールドソーサーでプレイ可能になり、メテオ発動後物語を進めることそっちのけで熱中したプレイヤーも多い筈です。
何故多くの人があのゲームに魅せられたかといえば操作が単純かつ直感的、下手なプレイヤーでも繰り返し遊びたくなる爽快感があったからではないでしょうか。ハイスコアを記録したところで大きな見返りがある訳ではないのにも関わらずFF7プレイヤーの大半がスノーボードゲームにのめり込んだ思い出話が出来るということがあのゲームが傑作であったことの証左であると言えます。
見返りのレアアイテムは無いものの、『神』や『変』などといった異様に達成条件が難しい称号が用意してあることも相まっても何時間もタイムトライアルに費やしたという方は多い筈です。
ラン・ワイルドもこうした単純かつ爽快感を重視したゲームにすることだって可能であった筈ですが、そうではないものになってしまったことは残念です。
バギーシューティング
コレルエリアイベントの最後を飾るバレットの射撃ゲーム『バギーシューティング』も似た問題を抱えています。照準の動かし難さや小ささがストレスとなっている上、リロード要素や右スティックを使用する爆撃からの回避操作など一度に要求されることが異様に多く、バトル難易度にEasyを設けた上Classicモードまで搭載しアクションに苦手意識を持つプレイヤーに配慮した作りとなっているゲームが課す物語上の必須課題と考えるとやり過ぎであるように思います。
さらに言えば、ストーリー上必ず経由するミニゲームというだけでなくダインとの一対一の決闘という物語の盛り上がりを感じたまま駆け抜けたい箇所でもある為、トードエボルブとの戦闘はともかく折角の感情の高まりを出来の悪いミニゲームで水を差すべきではありません。それはダイン、パルマー、タークスらを上手く動かし大きな盛り上がりを作り出したストーリーチームへの冒涜でもあるように感じます。
こうした『操作が難しいことで難易度が高いミニゲーム』はストレスや理不尽さを感じやすく、出来ることなら二度とプレイしたくないと思ってしまうものです。もし『難易度の高いミニゲームをここに設置したい』という意向が初めにあるのであれば『操作が簡単な代わりにクリア条件となる高得点は狙い難い』というバランスを選択して頂きたいという思いがあります。
例えば、コレルエリアのエンシェントマター入手に関連するミニゲーム『サボテンノック』が好例です。
このゲームはユフィやエアリスを操作して物理攻撃に弱いぶつりテンダーや魔法攻撃に弱いまほうテンダーを倒しスコアを競うというものですが、攻撃ボタンを連打するだけで大量のサボテンダーに攻撃が命中する爽快感が得られるものの、正しい攻撃方法を選択する状況判断能力や一団を倒し切ってから次の一団に向かう手順を最適化する事前の計画能力が無ければハイスコアは狙えない難易度の高さがあります。
『プレイしていて簡単に爽快感が得られ、手応えも感じる。しかしスコアを向上させるのは難しい。』というのはミニゲームとして理想的なバランスです。何故なら何度もプレイすることが苦にならず、プレイしている最中は楽しい。攻略方法を考えながら何度かプレイしていると段々とスコアも上がってゆく、という満足感と爽快感が得られるからです。
ドルフィンスプリントの減速時視点移動
アンダージュノンでプレイ出来るミニゲーム『ドルフィンスプリント』では減速時クラウドが騎乗するイルカにカメラが接近する演出が為されています。
レースゲームにもこの様な仕様のものはありますが、普段フィールド上を操作している際の感覚ともチョコボレースの感覚とも異なるこうした演出は慣れるまでに時間を要するためターゲットタイムの達成に新たな障壁を作ってしまっています。
こうした要素はゲームの内容とは切り離しプレイヤーが自由に変更出来るようにするか妙な脚色は行わず視点は固定とするべきです。
そもそも多くのレースゲームはプレイヤーによって『バンパービュー』『ボンネットビュー』『コックピットビュー』『チェイスビュー』など複数の視点から自由に選択可能なタイトルが多く、更にチェイスビューではカメラが車体の進行方向を常に向くよう固定出来たり旋回時車体の側面が見えるようにカスタマイズすることが可能なタイトルもあります。
これ程視点のカスタマイズにリソースが割かれている理由はプレイヤーによって好みが異なることや人によっては特定の視点ではプレイ不可能になるほど視点選択は"人それぞれ"であることが理由でしょう。レースゲームの主たる目的は他車との競い合いや0.001秒を競り合うタイムトライアルにある訳ですから、それ以外の面はプレイヤーが快適な環境をカスタマイズ出来るように補佐するのは当然と言えます。
とはいえ、あくまでもRPG内のミニゲームの一つに本格的な視点変更オプションを求めるのは酷であることも確かです。したがって、普段クラウドを操作している時と同じ様なチェイスビューで固定することが妥協案として望ましいのではないでしょうか。
コンドルフォートミニゲームがプリセットに
前作、REMAKE INTERGRADEのINTERmission中に登場したコンドルフォートミニゲーム。オリジナルのFF7に存在したゲームを再構築したもので、物語を進めることなく長く熱中した方も多かったのではないかと思います。
今作は物語上コンドルフォートが置かれていたエリアを通るということで勿論再度登場するだろうと発売前から期待していましたが(当のコンドルフォートは立地場所が変更となり本作では遠くから眺めるだけに)、特性の異なるボードに好きなユニットを設定するメタゲーム要素の高かったINTERmissionでのプレイ体験から、プリセットのデッキを選択して部隊をどう運用するかというプレイングを競うゲームに変更されてしまいました。
クイーンズブラッドやガンビットギアーズの様に高いカスタマイズ性を備えたミニゲームが新たに追加されたことでゲーム性が似通っていることから調整されたのかもしれませんが、INTERmissionで自分なりの戦略作りにのめり込んだ者としてはこの変更は残念極まりないものでした。
競馬(競チョコボ)要素が無くなる
FF7にはゴールドソーサーで開催されているチョコボレースの勝者を予想し的中すればアイテムが貰えるという競馬(競チョコボ)ミニゲームが存在しました。今作ではこれをアップデートしプレイヤーの予想を上回るチョコボの競馬ミニゲームが搭載されるのではと考えていましたが実現しませんでした。
FF7ではコレルプリズンからの脱出を巡って初めてチョコボレースに挑戦することになりますが、このイベント以降クラウドらがチョコボレースに参加出来るのはメテオ発動後。チョコボファームでグリングリンがチョコぼうを貸してくれるようになり初めてレースに出場する側に立てるのです。
勿論、プレイヤーの願望としては早くチョコボのレースゲームをプレイしたいという欲求の方が強いであろうことは予想が付きます。限られた開発リソースをそちらに注力することも当然であろうと思いますが、FF7に用意された競馬ミニゲームは出走するチョコボの名前から能力が予想出来る様になっていたり、シンプルながら拘りが感じられました。
このミニゲームが現代的なリメイクを経た場合どのような物になるのか関心があったのですが、期待が実現しなかったことは残念です。
ユーザビリティ
チョコボの搭乗のし易さが仇になるケースも
本作のチョコボはキャラクターが徒歩で走りながらでもR1ボタンで呼び出すことが可能且つ速度を落とさずともクラウドの近くに現れてくれる為、走りながらチョコボに触れることでスムーズに騎乗することが可能です。
ところがこの搭乗のし易さがマイナスな側面を生み出していることもあります。それは目的地ギリギリの位置でチョコボを降りた場合に対象物とクラウドの位置関係を調整しようとすると降りたばかりのチョコボに触れてしまい意図せず搭乗状態に移行してしまうことがあるのです。ストレスの無い搭乗方法として現在の様な仕組みを選択したことは妥当であったと思いますが、それが別の不利益を生み出していることが放置されてしまった点は少し残念です。
しかし、これはチョコボから降りる際チョコボ側が自動で数歩離れるよう修正を加えることで解決出来る問題に思えます。ゲーム全体で見れば大したことではありませんが、折角のよく考えられたチョコボ周りの設計を更に良いものにすることが出来る余地です。次回作では修正されることを望みます。
空チョコボの移動とカメラ操作は分けるべき
コスモエリアに登場する空チョコボは滑空中、左右のスティックが滑空操作に割り振られるため右スティックでの視点移動が出来ません。
視点を変更し周囲を見渡しながら探索することが多くなるワールドマップの探索要素を考えた場合、滑空時の右スティックによるカメラ操作は切り分けられるべきでした。
会話中の選択肢が縦並びではなくなったことによる悪影響
本作は会話イベント中に現れる選択肢が縦並びではなく左右にも割り振られるようになりました。ところが同時に制限時間ありの好感度変化が伴う選択肢イベントが導入されたことでこの変更がプレイに有害な変化をもたらしています。
DualSenseの方向キーは入力に対する感度が高く、下キーを押しているつもりでも横入力を感知して意図とは異なった動作をすることが少なくありません。このハードウェアの問題が選択肢イベントにも悪影響を及ぼし、悩みながら焦って方向キーを操作した末に意図しない選択肢を選んでしまうなどREBIRTHの名物イベントであるゴールドソーサーのデートイベントに妙な障害を作ってしまっているのです。
因みに、左スティックでの入力がこうした用途に向かないのは言うまでもありません。
会話中断の仕組みに救済策必要
REMAKEと共通する要素として本作でもフィールド移動中にキャラクター同士の会話が行われていることがあります。ところがこの時何らかの操作を行い会話が中断するとその先を聞けなくなることがあります。
直前のセーブデータをロードして会話を見直すことは可能ですが、プレイ中に何らかの救済策があってもいいように感じました。
音楽
長時間の探索プレイでは音楽の遷移が気になるように
REBIRTHはチョコボ騎乗時に音楽が専用のものに切り替わるも暫くするとフィールド固有のものに戻ってしまうという仕様がありますが、これはチョコボ騎乗時は同じ楽曲をループする方が良かったのではないかと感じました。以下にその理由を記述します。
第一にオリジナルのFF7はチョコボ騎乗時の音楽はCinco de Chocoboで固定だった為、原作オマージュという視点で考えるとそちらの選択の方が自然に感じること。
第二に大半のFINAL FANTASYシリーズ共通の要素として"チョコボに乗っている"という実感を作るのはチョコボのテーマが流れていることにあるということ。
第三にREBIRTHのインタラクティブミュージックの良さはプレイヤー自らの行動に反応して音楽が切り替わることにあります。それは『エリアを移動する』『戦闘を仕掛ける』『イベントを発生させる』などがそれです。ところがチョコボ騎乗時に一定時間が経過するだけでエリア固有楽曲に戻る(プレイヤーの行動がトリガーになっていない)という動作はこうした法則に反している為ゲーム全体の統一感を考えた場合不自然な印象を受けます。
数時間程度のプレイでは気にならないものの、ワールドマップで目的を達成出来ずチョコボを利用し彷徨っている最中にこの仕様に違和感を感じる様になりました。
恐らく次回作でもチョコボ騎乗の要素は継承されると考えられるため、修正されることを望みます。
Trap, Drumstep, Complextroなどのジャンルの浮き方
生楽器による音楽と比較するとエレクトロニック・ミュージックの高域の密度というのは不自然なほど高く、特に高域の減衰が大きいオーケストラ編成の曲を聞いた後にこれらの楽曲を聴くと非常におもちゃっぽく聴こえる傾向があります。
本作ではこうした楽曲が調整不足で他の楽曲との並びで馴染んでいない印象を受けました。
また、これら”ストリート”の色合いが強いジャンルをゲーム音楽に取り入れた際にはプロダクションの面で『嘘っぽさ』を感じることが多いのですが、残念ながら本作でもそうした印象を受けました。
ゲーム音楽の仕事を請け負うのは基本的に職業作曲家の方なので、普段現場の"アーティスト"が主導しているこれらのジャンルを真似て作った場合『綺麗にできてはいるが何か偽物っぽい』ものが出来がちです。十分な時間を費やしてそれぞれのジャンルを研究すれば『嘘っぽさ』を払拭することも可能かもしれませんが、納期に追われる作曲家に一つのジャンルの研究に膨大な時間を費やすよう求めるのは間違いでしょう。で、あれば専門分野を最大化することに集中して編曲のバリエーションを広げた方がサウンドトラックの評価は高くなるように思います。
Cinco de Chocoboを基としたチョコボ騎乗時のテーマが存在しない
ミニゲーム『ピアノ演奏』にこそ実装されているものの、REBIRTHのチョコボ騎乗時はFF7でチョコボ騎乗時の固定音楽であったCinco de Chocoboを聴くことが出来ません。
チョコボスクウェアでFiddle de Chocoboが流れるように、グラスランドエリアで初めてチョコボに騎乗した瞬間にはCinco de Chocoboを基とした楽曲が流れた方がFF7プレイヤーの感動を呼んだことでしょう。
FINAL FANTASYシリーズにはFF2のチョコボのテーマを基とした別編曲が数多く存在しますが、その中でCinco de Chocoboは5/4拍子を基調とした特殊な例です。エレクトリックピアノのピアノリフとドラムによるスウィングするリズムにクラリネットの鋭いメロディーが乗る軽快な前半とストリングスとバッソンがリードをとる雄大な後半という構成が特徴で、スペイン語で”5”を意味するCincoをタイトルに冠している通りJazzのスタンダードナンバーであるTake Five(ポール・デスモンド作曲)を彷彿とさせながら6/4拍子と5/4拍子を行き来する箇所が存在するなど独特な要素も多く、この編曲は歴代のチョコボのテーマの中でも異彩を放っています。
新しい楽曲を適用したいという意向があるのであればグラスランドエリア以外で実行することが出来る為、リメイクプロジェクトで初めてチョコボに乗った瞬間はオリジナルのイメージを大切に扱うべきでした。
※2024.11.05更新: 誤字修正。『武器防具・マテリアの装備状態はプリセットスロットに保存可能とするべき』『Cinco de Chocoboを基としたチョコボ騎乗時のテーマが存在しない』を追記。