【おこるでしかしぃ#19】箱根祭り伝説(1)
あれはなあ、わしが20歳ぐらいのことや。
大学の部活で、毎年夏になあ、箱根で合宿しとってん。なんの部活かははずかしいから聞かんとってな。
箱根で合宿させてもらうていうことはやなあ、地元の青年団とかとも仲ようせんならんっちゅうこっちゃ。8月の頭にな、芦ノ湖の湖水祭りゆうんがあるんやわ。せやから、わしらみんなでそれを手伝っとってん。
なに手伝うっていうたら、湖に流す灯籠を作ってそれを売ったりしとってんけどな。まあ、ええ加減なもんで、1000円で売って願いを書いてもらうんやけどこっそり1000円札抜いたりしとってやな。「願い事書いてみろや」言われたから、思わず「千人切り」って書いて「へっ、マジかいや、おのれ」言うて、金八先生のパート1に出てくる、「血みどろ」だか「ちび黒」だとかの暴走族のヘッドみたいな青年団長にびびられたりしてたんやけどな。
まあ、それはええとしよ。
湖で花火上げて終わんねんけど、そういうとこの地元の青年団ゆうたらもう、「ここぞっ」とばかりにアホみたいに飲むやろ。そやからもう打ち上げで飲まされる、飲まされる、死ぬほど飲まされるんやわ。
最後に大関のワンカップを一気して、「もう逃げて寝よう」て思たんや。ほんでな、なんか観光協会っちゅう謎の建物で飲んでてんけどな、隣りに物置ゆうか倉庫があってん。そこに入ったらな、中に押し入れがあってちょうどふとんもあったもんやから、ドラえもんみたいに「そこの二段目で寝よ」思って、がああって寝てもうてん。
ふっと気づくと朝やわ。でもな、なんか様子がおかしいねん。
コンクリの上でうつ伏せになって寝てるんやわ。
「どうしたんやろ」思てな、よいしょって起き上がったらな、なんかコンクリートに血がついとってんな。なんか顔がパリパリしてんなあって思て、とにかく顔だけ洗おかあって洗面所に歩いてってん。そしたらな、なんか廊下ですれちがったおばちゃんが
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ」
って叫ぶんやわ。「へっ、どないしたん?」て思いながらトイレの鏡の前に立ったら、顔中血まみれや。
ぜんぜん覚えてへんけどな、寝たまんまな、押し入れの二段目からコンクリに落ちてたらしいんやわ。
その日に地元の病院行ったら「鼻ヒビいってるわ」って言われてんけど、東京で病院行ったら医者に「折れてんで、これ」って言われてん。
って、
鼻の骨折れとんのやったら、起きんかいっ、ぼけえええええええええええええ。
寝てる場合ちゃうやろがああああああああああああああああああああああああ。
たまには自分に暴言吐いたった。
まだつづく。