タイトルと次回予告
幼い頃からテレビアニメやマンガが大好きで、小学校からの帰り道は16時15分から始まるアニメの再放送に目掛けてダッシュで帰宅したり、土日は早朝にやっているアニメのために学校へ行く日よりも早起きをするし、18時からのアニメのために自分だけ夕飯の時間をずらしたり、アニメ中心の生活を送っていた。我ながら凄まじい執着だったなと思う。(田舎だったので娯楽が少なかったのは事実)
アニメの主題歌をリアルタイムで流れる歌詞のテロップを見ながら、テレビの前で歌って覚えた。次回予告までしっかり見て、次回のタイトルから内容を思い描いて1週間を過ごした。月500円のおこづかいで毎月発売のコミック本を買い、1ヵ月間何度も何度も読み返していた。
そんな20数年前に比べて世の中はずいぶん便利になったもので、アニメもマンガも音楽も、いつでもどこでもスマホ1つで、好きなときに好きなだけ味わえるようになった。「逃す」ということがなくなったし、時間に縛られることもない。今や、リアルタイムで放映しているアニメもすぐにストリーミングにUPされ、追っかけてみることができる。
ある時、たまたまついていたテレビで、ストリーミングで見ていたアニメの最新話が始まった。そこで流れたオープニング曲が良すぎて、思わず泣きそうになってしまった。そう、わたしはこのアニメのオープニング曲を知らなかったのだ。なぜなら、ストリーミングの機能でスキップしていたから。よくよく考えると、ストリーミングでは次の話がスタンバイされ自動再生されるので、次回予告なんてものは意味を成していなかった。
その瞬間、はっと我に返った。便利に溺れてしまった結果、大切な何かを失ってしまったような気がして、すごく恥ずかしくなった。
友人とお茶をしていたときに、「○○ってこの間テレビでやってたアニメ見た?」という話になり、「見たけど、なんかあんまりピンとこなかったな。」と答えた。友人が言うに、テレビの放映枠に合わせて、シーンをいくつもカットされていたそうで、それだけでとてもつまらないものになってしまった、ぜひノーカットで今度見てほしい、作品にカットしていいシーンなんてないんだよ、と言った。
ああ、そうだよね。テレビにかじりついていた幼い自分に思いを馳せた。
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