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いつからだっけ、一段あがるのがこんなに難しくなったのは。
いつからだっけ壁に見えるようになったのは。

下校途中、よく寄り道をした神社、落ち葉、半ズボンの少年。
寄り道してすいませんなんてなけなしの5円玉でお参りしてから
西側に走る午前と追いかけあう。
あの日お賽銭を放り投げた場所への階段はどこまでも続いてる気がした。
息を切らすよう一歩ずつ、いつも通り草むらの夏の虫のように。

あれから何百回も地平線の向こうに午前は帰っていった。
少しだけ重たく、そして大きくなった身体、
行かなくなった神社、側溝に群がるダンゴムシ、向かいで嘶いている踏切。
久しぶりに訪れたそこはあの日より小さく見える。
なのにあの階段だけは行く手を阻むように立ちはだかる。
半分登ったあと諦めて引き返した。
少し太ったな、なんて声に出して。
振り返る神主を背にして少しだけ俯く。

両足をつかんで離さない責任と軽やかに歩むあの頃を
思い出してふと気づく。
明日で二十一度目の誕生日だと。
ひっくり返ったセミに抱く嫌悪感みたいな日常を
6月のページと一緒に丸めて捨てる。

いつからだっけ、一段を噛み締めるようになったのは。
いつからだっけ、少しだけ背伸びをすると向こう側を覗けることに気が付いたのは

2020_07_02_pm22:58

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