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開歌-かいか-「花歌-はなうた-」制作ノート②

昨日の続きの後編です。

あ、アルバムはここから購入できます(大事)。
開歌-かいか-「花歌-はなうた-」

「赤い靴」

秋の歌ですが、「さふらん」が秋の入り口の曲なら、深まった秋の歌が「赤い靴」です。「生ピアノがあるアコースティックライブでの新曲披露」というテーマから、やりたかったピアノ伴奏のみの、いわゆる「合唱曲」を作ることにしました。すいません、いわゆるアイドルソングの機能性を放棄して、ただ秋の夕暮れの音楽室から聴こえてきてほしい曲を作りました。だって、十代のシンガーたちに自分の書いた「合唱曲」を歌ってもらう機会なんて、なかなか無いと思うので、思い残すことの無いように。

伴奏のピアノは一度打ち込みで作ったものを、カメダタクに生ピアノアレンジで弾きなおしてもらってます。音源も生ピアノです。あとは楽器は何も無い分、各メンバーの声の魅力とかも生っぽく聴こえるんじゃないかと思います。

僕、子供の頃はテレビで流れるJ-POPにピンと来なかったんです。周りの早熟な子供たちとかは、小学校中学年くらいからグレイとか小室ファミリーとか聴き始めて口ずさんでる頃、自分はまだポップスとかわからなかった(のちに洋楽経由してポップスにたどり着くまでだいぶ遠回りしました)。それで音楽って興味なかったんだけど、学校の音楽の先生が合唱の指導でわりと有名な人で、その先生に「あなた声が良いから、ソロパートを歌いなさい」と言われて、初めて人前で歌を歌った記憶があるんです。その先生が地元の合唱団を持っていて、「見学に来なさい」と言われて見に行ったりとか。協調性無いんで合唱団には入らなかったけど、合唱という構造自体は凄く魅力的に感じました。合唱ってエゴが無いのが、純粋に音楽的なんですね。その合唱団は今でも世代交代を繰り返して発表会とか開催しているはず。あの先生に「赤い靴」聴いてほしい、とか、色んな合唱団にも「赤い靴」歌ってほしいとか、あります。いつか合唱のアルバムを作りたいという夢もあります。個人的な話ばかりになってしまいました。

こういう曲を作れるのは開歌だからこそだし、この機会をもらえて本当に良かった。

「ゆびさきに向日葵」

昨年の夏、TIFで披露された曲です。夏の「シングル」的な意識で作りました。自分的な完成度って意味では、「良く出来た」という印象の曲です。サクライさんの微熱感あるトラックも素晴らしいです。↑この映像にも出てくる、マジ嘘みたいなくらいの青空と6人のパフォーマンスが思い出されます。

最初にサビが出来て、制作チームに投げたら「あ、これ良いね」という感じになって、そのあと全編を作り、最終的にAメロはサクライさんにいじってもらいました。「ゆびさきに向日葵ってどういう意味ですか?」ってたまに言われるんですが、書いた自分も知らないんです。パッと思い浮かんで、イメージとしては「指差した方に夏が宿っていくみたいで良いな」という事でした。

この曲のアレンジはかなり限界ギリギリで、サクライさんのスタジオで朝まで作業していた記憶があります。「どこまで派手にするか」という切り詰め方が難しく、リズムとかはかなり削ぎ落としたんじゃなかったかな。最終的にちょっと不思議な、フワッと浮き足立った感じにまとまって面白いと思います。

ちなみにこの曲、「佐々木のストーリーパート」というのがあって、お気付きの人も多いと思うんですが音源では佐々木が歌う「ストーリー」というソロが無いんです。音源の熱量の流れを考えて、ここは余白にしてるんですが、ライブで楽しんでもらいつつ、佐々木ファンは脳内補完したり、または自分が佐々木になったつもりで歌ってもらえたらと思います。

総じて、「良く出来た」という印象です。お気に入りです。

「ポプラ」

アルバムの最後の曲は、リード曲でもある春の歌「ポプラ」です。
制作的にも一番新しい曲なんですが、この曲は紆余曲折を経てこの形になりました。

まず、歌詞。
実はデモの段階では「ポプラ」というタイトルはまだなく、もう少しだけ内省的でシリアスな曲をイメージしてました。
ただ「春に出るアルバムのリード曲」「どんな年代の人にも聴いてもらいたい」という発注があって、サクライさんのトラックも爽やかでポップだったので、そこにハマるように歌詞を書き直すことにしました。しかし、なかなか元の雰囲気を超えられない。半ば「無理です〜泣」と諦めかけた時に、ふと「ポプラ」という言葉が思い浮かびました。
春に花をつけて、春の終わりに綿毛を風に乗せるポプラと、グループの姿が重なった時に、「待ってたのは、これじゃない?」と思いました。で、書けました。あれは吉祥寺の喫茶店だったと思うんですが、あの時の「ポプラ」という言葉で「わたしたちはどこから来てどこへ行くんだろう」「さつきの空」「まっ白な風」「らららの歌」、それまで断片的だった言葉たちが一気に目を覚ましていくような感覚。ポプラという植物がこの世に存在してくれて有難う〜と思いました。結果的により開歌らしくポップになって、良かったと思います。

そして、楽曲。
この曲の最大の特徴は、基本的にAメロ→サビの繰り返ししか存在しないことです。たぶん結構珍しいんじゃないかと思います。今や、泣きのBメロ、Dメロはポップ音楽の基本です。実はBメロもDメロ(大サビ)も、可能性としては作ったんです。でも「無くても良いね!」となりました。逆に言えば「Aとサビだけで、曲になった」と言っても良いかもしれません。たとえば「上を向いて歩こう」ってメロディがほぼ2パターンしか出てきません。日本を代表する曲を引き合いに出してますが、その強いリフレインの中にストーリーがあればポップ音楽として成立するんじゃないか、という挑戦でもあります。

最後に、歌。
ポプラのもう一つの特徴が、1曲通して6人のユニゾンだということです。これはパターンを書き出すのも大変なくらい、本当にあらゆるパターンを試しました。歌詞のストーリーに効果的なように、ロジカルに歌割りを考えることもしました。でも理屈じゃなく、6人が同時に歌うのがもっとも感動的でした。これは、満場一致で決まりました。

ポプラの最後のサビの前には、歌が途切れる長めのブレイクがあります。
最初、ここは「こたえは見つからないままだけれど、〇〇」という歌を何か入れようと思っていました。そこだけ思い浮かばなかったので、ひとまず空白にして仮歌を録ったんですが、そのデモを聴き直したらここの空白が凄く良かったので空白で決定稿にした、ということもありました。

書いていて気づいたんですが、自分たちの意思というより、曲自身がそう求めていたところに、風に乗るようにたどり着いた、という曲だという気がします。
結果的に、「なんてことのない歌」が響いていた日々が、いまだに返ってこない世界になってしまったり、別に予言めいたことを言う気は無いんですが、今生まれるべくして生まれた歌なのかも、と思います。

というわけで制作ノートはここまでです。言葉足らずの部分もありますが、それでもだいぶ長くなりました。長々と読んでくれて、ありがとうございました。
「花歌-はなうた-」を、ぜひ楽しんでください。
そして2年目の開歌-かいか-も期待&応援してもらえたら、と思います。

最後に「ポプラ」の歌詞を載せておきます。ちなみに英語表記は「POP-LA」です。

「ポプラ」

なんてことのない 歌なんだ 世界に響いたのは 
泣いているのは誰? これは きみの歌だ

わたしたちはどこからきて どこへと向かうんだろう
こたえは 教えて くれないの 誰も

アスファルトを撫でた風が 街路樹の緑ゆらし
溶けてく みたいに さつきの 青い 空へ

ポプラ真っ白な風になろう こころがもとめるまま
はじまり告げるような らららの歌うたおう

なんてことのない 歌なんだ 世界に響いたのは
泣いているのは誰? これは きみの歌だ

腕に抱かれて見上げてた 花びら舞う風の中で
あなたが 優しく ほほえむ 遠い 記憶

あなたに会えて良かった 100年だって飛びこえて
そこにも ポプラの 風は 届く きっと

ポプラ真っ白な風になろう こころがもとめるまま
思い出つなぐような りりりの鐘鳴らそう

なんてことのない 歌なんだ 世界に響いたのは
泣いているのは誰? これは きみの歌だ

わたしたちはどこからきて どこへと向かうんだろう
こたえは 見つからない ままだけれど



ポプラ真っ白な風になろう こころがもとめるまま
涙もはらうような るるるの風になろう

なんてことのない 歌うたおう 世界に響かせよう
きみのその手を取った それがわたしなんだ

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髙橋表裏/タカハシヒョウリ
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