『ドイツで楽しむ日本の家ごはん』と、まほろば社ができた時の話
『ドイツで楽しむ日本の家ごはん』は2017年にまほろば社が初めて出した本です。まほろば社のさまざまな本を紹介するにあたって、先にこの本について語っておく方がよいと思いました。
この本の紙書籍版はお陰様で完売し、今は電子版でしかお届けしていないのですが、まほろば社にとって原点となる、とても大切な本です。
設立当時の話については、下のまほろば社のブログ記事が詳しいので、読んでいただけたら嬉しいです。
ここでも当時の様子を少しお話してみます。TwitterがXに変わるよりずっと前、今より平和で賑やかだったころの話です。ある日の晩、Twitter上でドイツ在住のいつもの仲間とワイワイと話をしていました。
仲間といっても、私自身はこの時点で実際にお会いしたことがある人は居なかったと思います。
でも、この頃は毎日のようにツイートしてたので、やり取りする人達の職業や人柄などをよく知っていました。TwitterのようなSNSというのは、短い時間直接会うよりも案外、性格など人物像が見えてしまうのですよね。
この時に会話に加わっていたのは、お馴染みの楽しい人達。それも、ドイツのあちこちに住んでいる日本人で、ドイツ在住歴も職種も得意分野も見事にさまざまな人達でした。
この日は、「ドイツ暮らしを楽しく豊かにする、まとまった日本語情報があればいいのに」という話になりました。
そして、そこから大いに盛り上がり、「こんなテーマの情報があったら便利だよね」などとアイデアをいろいろと話すうちに、「それぞれの得意分野を持ち寄って、本を作ろうよ!」ということになったのです。
そして、翌日には制作チームが出来上がりました。この時のスピード感、みんなで一緒に作り出そうとするエネルギーは、ワクワクして本当に楽しかったです。
そうして最初の本として出来上がったのが、『ドイツで楽しむ日本の家ごはん』。
今どきはドイツに住んでいても、お金さえ出せば日本の食材や食べ物はかなり手に入るもの。しかしこの本では、ドイツにある普通のスーパーで買うことができる食材で、いかに日本の味を再現するかということに重きを置いています。
外国に長い期間滞在していると、故郷と同じ食事をとれないことがけっこうストレスになります。人によっては慣れない食事に胃が受けつけなくなったり、さらには気持ちが落ち込んでしまうということも。
そうなってしまうと当然ながら、本来やるべき、仕事や学業、生活に支障が出てきます。慣れない環境で頑張る上で、食事は本当に大事なのですよね。
面白いものでこういう状況では、人によって対処や適応の仕方が異なってきます。おそらくどこの国でもそうだと思いますが、お金で解決する(できる)人たちや、現地の食習慣に適応してしまう人たちがいる中で、自分で一から何でも作り出す人たちが現れます。
海外在住経験者には料理を得意とする人が多いですが、それもこんな風に切実に日本食を求める気持ちがなせる業なのではないでしょうか。
『ドイツで楽しむ日本の家ごはん』の著者のお一人の豊田 裕さんは、「何でも作る人たち」の代表と言ってもよい存在。本業では主に料理の撮影をするフォトグラファーをされており、プライベートでも納豆や味噌、餡子など、いろいろ手作りしてしまいます。
そしてもう一人の著者は、『あたりのキッチン』『あやかしメルヒェン』など、人気作品を描いている漫画家の白乃 雪さん。白乃 雪さんもドイツ在住で、『白米からは逃げられぬ』では、ドイツで日本食作りに奮闘する様子も描かれています。
このお二人がレシピを作り、集め、詳細に検討して、出来上がったのがこの本。豊田 裕さんの美しい写真に、白乃 雪さんのイラストが加わって、実用的かつ素敵で楽しい本に仕上がっています。
どのレシピもおすすめできるのですが、とくに私が秀逸と感じるのは、「メットヴルスト丼」や「ルバーブの梅風ペースト」など、ドイツならではの食材で作り出す和の味のレシピ。これは本当に驚きのアイデアですよ!
本に掲載しているレシピはブログやSNSでも紹介していますので、ぜひご覧くださいね。
ちなみにこの本には、『ドイツをもっと。暮らしと旅の本棚シリーズ①』というシリーズ名がついています。実は当初から、暮らしに役立つさまざまなテーマについての本をシリーズで作るつもりでした。
これまでは「食」テーマに偏ってしまっていますが、今後はようやくバリエーションを増やして出していけるのではないかと考えています。