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「受験生の母の悩み」に答える

これまでnoteにあげてきた記事では,まず通信を載せて,最後にボクがどんな気持ちで,どんな状況で発行してきたのかを綴ってきました。
今回は
(1)まえがき
(2)実際の通信(B4判1枚)
(3)あとがき
と書いていきます。
 

(1)まえがき

 受験シーズンになると子どもたちは不安や焦燥にかられます。同時に,受験生の親もウロウロ,オロオロしてしまうものです。我が子に何かしてあげたくても,相手はただでさえ「思春期」「反抗期」の難しいお年頃。よかれと思ったことが裏目に出ることもしばし(むしろそちらが多い?)。子どもだけでなく親もまた悩みに途方に暮れるのが受験シーズンです。
 
昔ある新聞の読者欄にこんなお悩みが寄せられていました。
ここから ―― 
子どもが受験生です。親としても初めてのことなので,どうしたらよいか分 からずオロオロするばかり。勉強をしている様子が見えないときも,やんわり声をかけた方が良いのか,叱ってでも勉強させた方が良いのか。志望校は本人に決めさせた方が良いのか,親がどんどん進めた方が良いのか。受験生にはどんな言葉をかけてあげたらいいんでしょう。こんなことを大切にしろ,こんなしつけをしたらいいなど何でもいいので,我が子へのメッセージを教えてください。    
―― ここまで   (受験生の母さん)

さて,

あなただったら,「受験生の母さん」にどのような回答をしますか。ちょっと考えてみてください。 

(2)ボクの学級通信から

(●がお悩みへの回答です。( )内は回答者のペンネーム。→はボクのつぶやきです)
●答えは一つじゃないと思う。(略)(むらさきさん)
 →その通りですね。
●子供の自由にするのが一番いいと思う。(鮪さん) 
●黙っていた方がいいと思う (きゃりーぱみゅぱみゅさん)
●自分のことは自分でやるしほっておいていい。
 あとで後悔するのは自分やし。 (Mサイズさん)
●「親が何も言わないから自分は勉強しなくていい」なんて思う人なんて, 
 受験が近くなったらいなくなると思う。だから,何も言わない方がいい。                           (とくめいさん)
●私は今まで親に「勉強しろ」と言われたことがありません。逆に,親から「よく勉強したね,えらいね」とほめられたこともありません。(略)ほめられたくて勉強したけれど,まだほめられたことがありません。だから,もっと頑張ります。プレッシャーになるような言葉は必要ないと思います。
                        (とくめい希望さん)
 →大人だって,昔は子供。親にアレコレ口出しされて,うるさいと感じた
  経験はたくさんある。それでも,自分自身がしてきた後悔を,子供には
  させたくないと思うから,ほっておけない。つい「転ばぬ先の杖」を差
  しだしてしまう。その時ようやく,昔「うるさい」と感じたはずの親心
  が理解できるようになるのかも知れません。
 ●普段はあまり受験の話しはしない方がいい!自分も入試前とかは,あんま
 り勉強に関して話さなかった。終わった後の話をたくさんした。                          
                             (?さん) 
●いちいち口出さないでもらいたい,黙っていて欲しい。
 勉強のじゃまはしないで~。           (とくめい希望さん)
●おもしろい番組を見ていれば,子供が勝手に寄ってきて,自然と笑顔が弾
 む。家族との仲が良くなれば,子供も安心して勉強を出来る。        
                 (ポアンカレ&ピタゴラス伯爵さん)
●親は美味しいご飯を作って,子供が頑張れるような家庭を保っていればい
 いと思う。                         (?さん)
  → 「美味しいご飯を作ってあげてください」--ボクも,今年,電話で
   悩みを打ち明けてくれたあるお母さんに言いました(^_-)。親に出来る
   ことは,何より環境を整えてあげること。ボクが生まれ育った家はボ
   ロで狭く子供部屋なんてない。居間(リビング)にボクと姉の机が置い
   てある。そんな中でボクが受験勉強を始めると,家族の誰かがすっと
   テレビの音量を下げてくれた。みんなさり気ない行動で心づかいをし
   てくれた。無言の励ましを,毎日毎日受け取っていたボクは,今思え
   ば,幸せ者でした。
 ●ガンバレとか言ってもらうとうれしいけれど,言い過ぎるとムカツクか
 も。                    (とくめい希望(^^)さん)
●まず前提が間違っている。親が自分から何かを言う必要はない。子供から
 言われた時は,勿論,何か答えなければいけない。その場合の答えは自分 
 で考えなければいけない。自ずと言葉が浮かび上がってくるはずだ。
                       (わたしのお名前さん)
●私は,応援して欲しいけれど,プレッシャーはかけてほしくない,という
  複雑な思いの中で受験勉強をしていました。あなたのお子さんも,あなた
 と同じくらい苦しんでいると思います。悩みや思いを相談されたときは真剣
 に聞いて,冷たい言葉をかけなければ,それだけでお子さんは,少し安心す
 ると思います。          (ディズニーランドに行きたい!!さん)
 ●自分の受験の時の経験とか教えてあげれば良いんじゃないかな~   
                                                                                                          (?さん)
●「がんばって」と一言いう。そして,親の意見を言いつつ,子供の意見も
 聞く。                                                                             (とくめい希望さん)
●自分が後悔しないように頑張りな!! 自分なりに頑張れればいいじゃん。                           (ジョウカーさん)
●・緊張は友だちだよ。・悩む時間があるなら,勉強しろ。
 ・大丈夫,いつだって応援しているから。
 ・受験を受けること自体が,大人への一歩だからね。結果は後からだ。
                           (龍二さん)
  →「黙っていて」「見守るだけでいい」と言いつつ,本当にそれだけだっ
  たら,困るのは子供。素直には聞いてくれないかもしれないけれど,
  人生の岐路でもらった一言は,その後も生きつづけます。

 ●怒ったらダメだと思う。やる気を無くしちゃう。(略)(?さん) 
 →その気持ちよくわかるなぁ。

ところで,ボクにはこんな思い出があります。
―― 昔,成人式のパーティーに呼ばれたときのことです。ボクが中3で担任したクラスの学級委員Yくんが,すっと寄ってきました。
彼は進路決定を控えた三者面談で彼はお父さんと大もめ。
お父さんは,私立高校に進学させる経済的ゆとりがないからと安全圏の公立高校を勧めます。
しかしYくんは強情を張って,志望校を譲りませんでした。
ボクは,相当努力が必要なことを伝え,Yくんは「分かっている」ときっぱりと言い放ち,お父さんは引き下がりました。

ところが翌日,昼休みにYくんたちは校庭でボール遊びをしていて5校時開始のチャイムが鳴っているときに昇降口にいる始末。たまたまそこを通りかかったボクは彼を叱りつけました。「ふざけるな。お父さんに申し訳ないと思わないのか」「オマエの本気を見せてみろ!」。職員室から他の先生が飛び出してくるほどの最大音量でした。
その後,彼はめでたく第一志望の公立高校に進学していきました。

―― そして,卒業以来5年ぶりに会ったYくんはボクに言ったのです。
「ボクは,あの時先生に叱られて良かった」
 
ビックリしました。
思春期の子どもはむやみに叱ってもやる気をなくすだけ。
でも,叱ることで大人の本気が伝わることもある。
そんなことをYくんから学んだのです。
 
最初に紹介した(むらさきさん)の一言,「答えは一つじゃないと思う」。
ボクもそう思います。そして,あなたたちが一生懸命に回答を考えたように,「受験生の母(もちろん父)」も,我が子にどんなメッセージを送ろうかと,一生懸命に考えているのだと思います。
 
―― ボクの学級通信はここまでです。

(3)あとがき

 ここまで読んでくださってありがとうございます。ところで,あなたは読み進んでいるうちに何か違和感を覚えませんでしたか。
「受験生の母さん」のお悩みに回答を寄せてくれたのは誰でしょうか。
実は,バリバリの現役受験生,ボクのクラスの子どもたちなのです。
くわしい授業のやり方は省略しますが,この学級通信を発行する数日前にある授業をしています(道徳か学級の時間を利用)。
こんな展開です。
(1)「受験生の母さん」のお悩みを紹介。
(2)回答用紙を配布して考えてもらう。
(3)回収して全員分をよみあげる。ボクのコメントも少し入れる。
以上。という至ってシンプルな構成。
回答用紙を配布する時に,こんな言葉を添えます。
―― さて,自分が親になったとして,もし自分と同い年の子どもがいたとしたら,あなたはどう言いたいですか?思いつくままに書いてみてくれませんか。また,あなた自身が親に言われて嬉しかったことや,言われたかったことでもかまいません。
 
つまり,この学級通信に書かれているのは「現役受験生の心の声(こんなことを言われて嬉しかった。こんな風に接してほしい)」なのです。

帰りの会でボクがこの通信を読む間,みんな静かに聴いてくれます。一度授業で聞いた内容なのに,改めてふれることでもっと深く心の中に染み込んでいくようです。

どうですか,こんな授業。そして,こんな学級通信。

長くなっていますが,最後に一つだけ。
ボクは学級担任の大きなお仕事の一つは,
「クラスの子ども同士の心の橋渡し」をすることだと思っています。
そして,お家の人たちと子どもたち,
「親心と子心との心の橋渡し」をすることも大切なお仕事だ思います。

ラスの子どもたちが家に帰ってお家の人に学級通信を渡すとき,どんな気持ちだろうなぁ。
読んだお家の人は,その後でどんな気持ちで我が子を見つめるかなぁ。
親子で何か言葉が交わされる…そんなきっかけづくりになればいいなぁ。
学級通信を発行するときに,ボクは密かにそんなことも思っていました。

あなたはどんな気持ちで学級通信を子どもに渡していますか。

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