スターター統率者デッキから始めるEDH ~デッキの概要と低予算改造案~② イスペリア編
はじめに
前回に引き続きスターター統率者デッキ解説と改造案、第二弾はイスペリアデッキ(公式デッキ名:初めての飛行)となります。
先に言っておくとこのイスペリアデッキ、他の4種と比べると構築済み時点でかなり難がある代物となっています。
公式のデッキリストは以下リンク参照
デッキ解説
公式デッキ名の通り、デッキコンセプトは飛行特化となっています。低コストから高コストまで満遍なく飛行クリーチャーが投入されており、相手のブロッカーを掻い潜ってダメージを与えることに長けています。
ですが、悲しいことにデッキのコンセプトである「飛行特化」と統率者であるイスペリアの間に殆どシナジーらしいシナジーが存在していません。
基本的に統率者というフォーマットでは「統率者を生かす」デッキ構築が求められます。(いわゆる「競技的EDH」では統率者が機能不全に陥った際に動きが鈍らないように、デッキ全体を統率者シナジーありきの構成にするより、単体でアドがとれる統率者が好まれる傾向がありますがここでは置いておきます)
というのも、100枚ハイランダーのカジュアル構築では狙ったカードを引き込むのが難しくなっているため、デッキ全体で統率者を生かす構築にしたほうがより再現性の高い動きが可能だからです。
前回の記事で紹介した、アタルカデッキはアタルカとシナジーの有るドラゴンクリーチャーを多く採用することで、デッキのカードパワーを底上げしています。このデッキの統率者が仮にトヴォラーだとしたらどうなるでしょうか?おそらくドラゴンクリーチャーはデッキから抜けて狼や狼男がデッキに採用されますね。
さて、話をイスペリアデッキに戻しましょう。イスペリアと飛行クリーーチャーの間にシナジーは全くありません。強いて言うならブロックされにくい飛行クリーチャーでフルアタックした際に返しの殴り返しを受けにくいことくらいでしょうか。卓の全員がスターター統率者の構築済みホヤホヤの状態でならこのイスペリアデッキでも勝負にはなるでしょうが、今後のデッキ改造を考えると、飛行をテーマにした際の伸びしろが殆どないこのデッキではいずれ周りとのレベル差に苦しむことになります。
ならばどうするか?次のデッキ改造案の項目で改造案を提示していきます。
デッキの改造
先述したようにイスペリアを統率者に添えた状態でデッキを飛行テーマにしていくのはかなり厳しいと思われます。
そこで今回は
「飛行テーマというデッキ構成を変えずに統率者を変更した改造案」
「イスペリアを生かすためにデッキテーマそのものを変更した改造案」
の二種類のプランをお届けしたいと思います。
改造案1:カンジー飛行デッキ
この構築済みデッキの中にはいくつかの伝説クリーチャーが含まれており、その中でもひと際飛行と相性がいいカードが封入されています。それがこのカンジーです。
攻撃参加で飛行クリーチャーに全体パワー修正、ブロック参加で全体タフ修正と、飛行クリーチャーを並べて殴るというデッキの構築テーマに合致していると言えます。イスペリアを統率者から外し、このカンジーを統率者に添えることで飛行デッキとしての完成度は格段に向上します。
改造後のデッキリストは以下
デッキのページの検討欄にあるカードが構築済みから抜いたカードになります。
1 セイレーンの嵐鎮め
1 審判官の使い魔
1 幽体の船乗り
1 天球の見張り
1 極楽の羽ばたき飛行機械
1 泥棒スカイダイバー
1 雲の群れ
1 エイヴンの思考検閲者
1 忠実なドレイク
1 嵐の目、シアーニ
1 濠の大魔術師
1 翼の伝令、ドナール
1 天駆ける恐喝者
1 聖別されたスフィンクス
1 ドビンの拒否権
1 現実変容
1 秘儀の否定
1 遅延
1 高尚な否定
1 見張り番
1 静寂宣告
1 疾風
1 カーンの経時隔離
1 永劫での歩み
1 アールンドの天啓
1 偵察任務
1 沿岸の海賊行為
※全部合わせて約5000円程度となっております(2022年12月11日現在)
使い勝手に難のあった大型の飛行クリーチャーの大部分を廃止し、優秀な小型飛行クリーチャーを追加して小回りを良くしました。
小型でも横に並べばカンジーのパワー修正やデッキに搭載された各種飛行全体強化により高い打点を生み出すことができます。
デッキを横並びにシフトさせたことで相性の悪くなった全体除去を廃止、合わせて対戦相手の全体除去やエンドカードに対応するためにカウンターを増量しました。
本デッキの注目カードとしては「沿岸の海賊行為」などの戦闘ダメージ誘発ドロー群
これらのカードとブロックされにくい飛行クリーチャーの横並べとの相性は抜群で、飛行クリーチャー展開後にプレイすることで継続的に大量のドローを可能にします。
そして、エンドカードには「アールンドの天啓」などのターン追加カードが挙げられます。
ターン追加によって実質的な戦闘回数が2倍になり、上記の戦闘ダメージ誘発ドローエンチャントが場に置かれていれば、「展開した飛行クリーチャーで戦闘→大量ドローで追加ターンカードを引き込む→追加ターンカードをプレイして追加したターンで再び戦闘…」のループも可能になります。 前回紹介したアタルカとは違い一体一体は小柄ですが、コストの軽さによる小回りを生かした展開力、豊富な全体強化、戦闘ダメージ誘発ドローによるドロー能力の高さを軸に、絶え間なく攻められるデッキとなっています。
改造案2:イスペリアコントロールデッキ
こちらでは統率者を変更せず、イスペリアの能力を生かす改造案を提示します。イスペリアを軸に添えた構成にするにあたり、イスペリアの能力と相性の良いカードを考える必要があります。
イスペリアの最大の弱点は無視されることです。イスペリアの能力的には対戦相手が殴ってくれた方がありがたいのですが、イスペリアが置かれているのに意味もなく殴ってくる対戦相手がいるでしょうか?私なら殴りませんし、周りが殴ろうとしていたら「ちょっと待ってくれ」と止めると思います。
結果としてイスペリアが置かれている状況下では殴られる回数は激減します。が、EDHにおいては殴られる回数が減る=負けないことには直結しません。
EDHにおいてコンボデッキというのは極めて一般的です。数ターンをかけて3人殴り倒すよりもコンボで3人まとめて倒すほうが効率がいいからです。
そして、そういったコンボでは往々にして無限ダメージや無限切削、あるいは特殊勝利などで決着がついてしまうため、イスペリアの能力ではそれらを防ぐことができません。(一応無限トークンによる圧殺に対しては能力の都合上多少の抵抗はできます)
例で出した「デモコンタッサ」のような凶悪コンボはカジュアル卓ではあまり見られませんが、もう少し必要コンボパーツが多めの無限ダメージ、無限切削、無限ターンなどはカジュアル卓でも珍しくないため、それらに対抗できないイスペリアの防御能力はそこまで信頼できるものではありません。
殴り倒すこと前提のビートダウンデッキ相手であれば多少はマシですが、「イスペリアへの除去を引くまで一旦待つ」、「ドローされても一撃で沈められるくらいまで打点を強化してから殴る」、「あいつ殴るからイスペリアをどかしてほしい。等、他のプレイヤーに交渉して除去してもらう」等、取れる選択肢は色々とあり、そしてその選択権は殴る側にあるため、イスペリア側が不利な選択肢を基本的には選ばれることになります(MTGでは基本的に相手に選択権があるカードが弱い_参考URL:http://mtgwiki.com/wiki/%E5%B1%B1%E5%88%86%E3%81%91%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89#.E7.9B.B8.E6.89.8B.E3.81.AB.E9.81.B8.E6.8A.9E.E6.A8.A9.E3.81.AE.E3.81.82.E3.82.8B.E3.82.AB.E3.83.BC.E3.83.89.E3.81.AF.E5.BC.B1.E3.81.84.E7.90.86.E7.94.B1)
ではイスペリアの能力を生かすにはどうするか?それはイスペリアをコントロールしているプレイヤーを殴らざるを得ない状況にすることです。
デッキリストを以下に提示します。
デッキのページの検討欄にあるカードが構築済みから抜いたカードになります。
1 かき鳴らし鳥
1 ギルドパクトの密通者
1 ヴラーキスの勇者、ラエゼル
1 濠の大魔術師
1 灯の分身
1 深輝エイ
1 ジェイス・ベレレン
1 覆いを割く者、ナーセット
1 鏡映魔道士、ジェイス
1 ウルザの後継、カーン
1 ドビン・バーン
1 不動のアジャニ
1 卓絶のナーセット
1 思考を築く者、ジェイス
1 日没を遅らせる者、テフェリー
1 時の支配者、テフェリー
1 神秘を操る者、ジェイス
1 謎めいた指導者、カズミナ
1 エルミンスター
1 工匠の達人、テゼレット
1 求道者テゼレット
1 秘密の解明者、ジェイス
1 華やいだエルズペス
1 ウィル・ケンリス
1 太陽の勇者、エルズペス
1 時間の大魔道士、テフェリー
1 待機
1 流刑への道
1 ドビンの拒否権
1 現実変容
1 秘儀の否定
1 遅延
1 静寂宣告
1 脱出
1 テゼレットの計略
1 神の怒り
1 至高の評決
1 ウルザの殲滅破
1 時間のねじれ
1 カーンの経時隔離
1 告別
1 永劫での歩み
1 大群退治
1 テフェリーの誓い
※デッキコンセプトを大きく変更しているため入れ替えカードが多く、改造案1と比較すると、合計金額12000円程度と、やや高めとなっております。
もともとデッキに入っていた飛行クリーチャー群はほぼすべて排除し、青と白のプレインズウォーカー軍団を20枚と、大量投入しています。そう、イスペリアの能力を最大限に生かすためのカギはプレインズウォーカーです。
多人数戦であるEDHにおいてプレインズウォーカーは基本的には弱いカードタイプです。というのもプレインズウォーカーを殴ることができるプレイヤーが3人もいるため1対1の戦いよりもプレインズウォーカーの維持が格段に難しいためです。
しかしこのプレインズウォーカー特有の「殴られやすい」という悩みがイスペリアと非常にマッチし、同時にイスペリア特有の「対戦相手に選択肢がある」という弱点を補います。
殴らない選択を取ればプレインズウォーカーが戦場に定着し、逆に殴る選択を取ればイスペリアのドローが誘発するという非常にいやらしい二択を相手に強いることができるためです。
もちろんイスペリアが除去されればガラ空きになったプレインズウォーカーに敵クリーチャーが大挙して押し寄せてくると思われますが、マナを浮かせてカウンターを構えたり、全体除去で事前に戦場を掃除しておいてから出すことでケアは十分可能です。場合によってはイスペリアごと盤面を流しても良いでしょう。
他の追加したカードで特徴的なのは増殖を筆頭としたプレインズウォーカーサポートです。「かき鳴らし鳥」や「ヴラーキスの勇者、ラエゼル」などのサポートカードを使うことで忠誠度カウンターを効率よく増やすことができます
プレインズウォーカーはどれも強力ですが、その中でもEDHというルールにおいて「時の支配者、テフェリー」は非常に強力なカードとなっています。
相手のターンでもプラス能力でルーティングをしながら忠誠度カウンターを着々と増やし、殴られても小マイナス能力で自分の身を守ることができます。大マイナスもゲームエンド級の強力なものですが、プラス能力が対戦相手のターンでも使えることも相まって、盤面に定着さえすればあっという間に大マイナス能力が狙えます。
デッキ改造案1で説明した追加ターン系カードですがプレインズウォーカーカードとも相性が非常に良いため、数枚採用されています。隙を見て追加ターンをして忠誠度能力をガンガン使っていきましょう。
全体除去を切るタイミングの判断や、時にプレインズウォーカーを見捨てる選択も取らなければならないなど、やや難易度の高いデッキとなっていますが、プレインズウォーカーを並べて盤面を制圧したときの楽しさは他のデッキタイプでは味わえません。
ここからの強化方針
改造案1、2に共通しますが、財布に余裕があるなら以下のような青の強力汎用カードは投入すれば確実に役に立ってくれるでしょう。
改造案1独自の強化案では強力な高額低コスト飛行クリーチャーや、大規模バフカードを入れていくと打点を底上げできるでしょう
改造案2はモダンやパイオニアで活躍中の高額プレインズウォーカーを投入することで単体のカードパワーを補強できます。
土地は前回の記事と同様に、ペインランド、クラウドランドなどの手を伸ばしやすいところから少しずつ補強していくといいでしょう
まとめ
以上が構築済みイスペリアデッキ「初めての飛行」の解説、強化案になります。いかがだったでしょうか。
イスペリアデッキはアタルカデッキと比べ、構築済み時点の完成度が低く感じる部分が多いですが、その分、型にとらわれずに自分なりの構築を試せるデッキとなっています。
今回私が提示した改造案が正解というわけではないので、デッキ構築に自信のある方は自分なりの構成を模索してみてはいかがでしょうか。
次回は「ギサとゲラルフ」デッキ(公式名:「墓所の危険」)の解説と改造案の記事を予定しています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。