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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【5〜6月】

HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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現在、国内・海外を問わず空飛ぶクルマの「型式証明」取得に向けた動きが多くみられています。「型式証明」とは、民間航空機の型式が安全性及び環境適合性の基準を満たしていることを証明する国の認可のこと。

続々と実装に向けた準備が整ってきていることが分かりますね。

また、今月は空飛ぶクルマの実用化に向けたサービスの発表や企業立ち上げ、補助金の発表など、事業者が空飛ぶクルマを運行する上で便利になるような取り組みも多く見られました。

国内と海外に分けて、空飛ぶクルマに関する最新情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

1.JALと住友商事、空飛ぶクルマを共同運航。大阪万博を目標に(6/3)

2025年の大阪・関西万博での運航を1つのマイルストーンとして、法整備や機体の開発が進む「空飛ぶクルマ」。開催まで1年をきる中、新たな空飛ぶクルマ関連企業が生まれました。

日本航空(JAL)と住友商事は3日、「空飛ぶクルマ」を運航する共同出資会社「ソラクル」を設立したことを発表しました。

両社は過去数年の間、それぞれで国内での運航に向けた準備を進めてきました。

JALは機材を開発するイギリス企業「Volocopter」と国内での市場調査や事業参画を検討。住友商事は2018年からエアモビリティー分野における事業化を進めており、20年には無人機管制システムの開発企業に出資するなど、国内で市場開拓を行っています。

新会社のソラクルは、住友商事の航空業界におけるネットワークや事業ノウハウ、JALの安全運航のノウハウを融合させ、eVTOL運航事業を加速させることを目的としているとのこと。安全で安心な空飛ぶクルマの社会実装を目指し、地域を結ぶ交通ネットワークを構築します。

日本の空に携わる2つの大企業は、どんな空の移動価値を創造するのか注目です。

2.AirX、修学旅行の企業訪問を受け入れ。「空飛ぶクルマ」の最前線を紹介(6/11)

ヘリコプターや空飛ぶクルマなど、次世代のエアモビリティの供給源となるインフラを構築する株式会社AirX。30日、滋賀県の中学校に通う3年生11名を企業訪問として受け入れ、「空飛ぶクルマがもたらす可能性」や「挑戦することの大切さ」をテーマに授業を行いました。

未来を担う若者に、次世代モビリティをより身近に感じてもらうためだけでなく「現状ではできないことにも夢中に挑戦することの大切さを伝えたい」と、実施が決まった今回の訪問。

プログラムでは、空飛ぶクルマの挑戦と見据える未来に関するプレゼンテーションを行ったほか、学生はAirXの開発する「Eve Air Mobility」のVRを通して飛行を体験し、空飛ぶクルマやAirXのプロジェクトについて学習しました。

空飛ぶクルマについてだけでなく、AirX社員の働き方ややりがいに感じていることも紹介するなど、空飛ぶクルマに関わるキャリアとはどのようなものか学ぶ機会にもなりました。

エアモビリティが発展するにつれて、問題視されることが予想される人材不足。このような企業訪問は、未来を担う若手の育成にも繋がるでしょう。

3.AirX、淡路島と関西エリアを最速25分で結ぶ「ヘリコプター移動便」サービス開始(6/18)

AirXによる取り組みは、他にも。

AirXは18日、兵庫県淡路島をはじめ、西日本でホテルを展開する「ホテルニューアワジグループ」と連携し、淡路島と関西エリアを結ぶ「ヘリコプター移動便」の販売を開始することを発表しました。

2023年8月、AirXは兵庫県および神戸市が実施する「空飛ぶクルマ実装促進事業」および「神戸市空飛ぶクルマ社会実装促進事業」に採択されました。

兵庫県を「空の観光」の先進地とするため、エアモビリティを活用したさまざまなサービスの技術・サービス性を検証しており、今回の取り組みも空飛ぶクルマの社会実装に向けた知見の獲得と、基盤整備を目的としています。

販売を始めた「ヘリコプター移動便」は定員3名で、淡路島と関西エリアを最短25分で結ぶものです。

アクセスが飛躍的に向上し、観光客の利便性が大幅に改善されるとともに、地域経済を活性化させることが予想される「ヘリコプター移動便」。値段は片道1台400,000円〜とのこと。

1人15万円程度で乗れる未来の乗り物、皆さんはどんなシーンで利用してみたいですか?

4.SkyDriveの型式証明申請を、アメリカ連邦航空局が受理(6/14)

「空飛ぶクルマ」を開発する株式会社SkyDriveは14日、開発中の機体「SKYDRIVE(SD-05型)」についてアメリカ連邦航空局に型式証明申請を行い、本申請が受理されたと発表しました。

SKYDRIVEは創業当初から、世界中で多くの方々に愛されるモビリティを世の中に届けることを目標に開発を続けています。アメリカも例外ではなく、アメリカでの運航開始に向けては2023年に米国子会社を設立し、現地の顧客とともにユースケースの開発を行ってきました。

しかし航空機を商用運航する際には、各国の民間航空当局の規制に従い、適切な認可を受ける必要があります。そこで今回、日本の国土交通省航空局を通じてアメリカ連邦航空局への型式証明申請を行い、強度試験や飛行試験など、各種審査に向けた活動を開始しました。

SkyDriveは現在、日本でも型式証明の取得を進めています。

2026年以降に日本での型式証明の取得と商用運航を開始し、その後米国での型式証明取得を目標に取り組みを進めていくとのこと。SkyDriveの空飛ぶクルマが世界中の”日常的な移動”となる未来が楽しみですね。

5.国土交通省、空飛ぶクルマの商用運航の実用化を促進する取り組みを支援(6/13)

国土交通省は12日より、日本で「空飛ぶクルマ」を使った商用運航を実現するため「バーティポート計画ガイドライン(仮称)」の計画ガイドラインを作るための「実証事業費補助金」受給者を募集開始しました。

バーティポートは、空飛ぶクルマが離着陸するための場所。この補助金は、バーティポート計画ガイドラインの策定にあたる、整備の課題を抽出することなどを目的とし、バーティポートの整備に要する経費の一部に対して補助を行います。

バーティポートは世界標準の機能を有するとともに、既存の空港と同等の利便性を確保する必要があるといわれています。日本ではすでにEASA等の世界標準を参考とした「バーティポート整備指針」が策定・公表されていますが、設置や管理をする人々からは具体的な設計の参考が求められている状況です。

そこで国土交通省は、バーティポート計画ガイドラインの制定に向けて運用情報を集め、課題を整理することでガイドラインを作成することを発表しました。バーティポートの整備を支援することで、より良い空飛ぶクルマ社会を目指します。

【海外の空飛ぶクルマニュース】

6.広州でeVTOL展示会を開催。「空飛ぶクルマ」の商業化を後押し(6/6)

4日、中国広東省・広州市の天徳広場で、空飛ぶクルマの展示会が開かれたと新聞社「新華網」が報じました。

近年空飛ぶクルマの開発が急速に進む中国の中でも、広州市は空飛ぶクルマなどによる低空域飛行活動を推進している地域です。低空域のエアモビリティを活用した経済形態「低空経済発展実施方案」を発表するなど、公共団体を中心に取り組みが進んでいます。

今回の展示会は技術者が直接来場客に解説を行うほか、来場客が空飛ぶクルマのコックピットに乗車するなど、身をもって空飛ぶクルマを体感する機会となりました。一般の方にとっても、一層空飛ぶクルマを身近に感じることとなったのではないでしょうか。

7.Archer、eVTOL機「Midnight」が「移行飛行」に成功(6/8)

アメリカで空飛ぶクルマを開発する「Archer Aviation」は8日、eVTOL機「Midnight」が時速160km以上の速度で飛行し、ホバリングから翼飛行への移行を完了したことを発表しました。

Midnightは、飛行間の充電時間を最小限に抑えて迅速な連続飛行を実行できるよう、ホバリングから翼飛行への移行飛行を実現した、有人4人乗りの航空機。ホバリングから翼飛行への移行は、業界では非常に困難なマイルストーンとして知られており、世界でもほんの一握りの企業しか達成していない偉業です。

チーフエンジニアのジェフ・バウアー博士は、こう語ります。

「Midnightは、移行を達成した史上最大のeVTOL機の1つであり、エアタクシー事業を成功させるのに十分な乗客を運ぶことを目的として製作された最初の機の1つであると考えられています。2世代の実物大機でこのマイルストーンを達成したArcherのチームを非常に誇りに思います。」

Midnightは現在、型式認証プログラムの最終段階にあり、航空機の運用準備状況を実証するための模擬商用ルート飛行や高率飛行操作を実行し、商用環境で使用される追加の飛行操作をテストするとともに、速度と飛行持続時間の飛行範囲を拡大し続ける計画です。

有人飛行テストは、今年後半に開始される予定とのこと。海外での機体開発状況にも注目です。

8.オーストラリア政府、水素燃料eVTOL機やドローンなどの開発プロジェクトに計1,350万ドルを支援(6/14)

オーストラリア政府は14日、航空産業を支える新たな航空機技術を開発・導入するため、水素燃料eVTOL機やドローンなど12の開発プロジェクトに計1,350万ドルを支援することを公表しました。

今回の取り組みは、国が"Future Made in Australia "というコミットメントのもと、プログラムを通じて産業界と提携し、オーストラリアの地方、農村、遠隔地の地域社会に真の変化をもたらすことを目的としています。

eVTOLやドローンに支援を行うのは、革新的な航空技術の開発が製造業や農業におけるデジタル技術利用を拡大し、全国的なサプライチェーンとの地域的なつながりを強化するからです。

特に注目されているのは、地域や遠隔地のファースト・ネーションズ(先住民族)コミュニティの支援です。支援金の対象には人道的な航空活動や災害復旧活動、先住民族コミュニティへの健康製品の輸送に使用するドローンへの投資なども含まれており、先住民族による農業や製造業がより大きな成果をあげることが期待されています。

アンソニー・チショルム地域開発・教育担当大臣補佐官は「地元の技術革新と製造業に投資することで、現在そして将来にわたって、地域により多くの機会を創出することができる」とコメント。

エアモビリティは業界内での盛り上がりだけでなく、さまざまな企業自治体との連携によって外にも影響をもたらすことが分かります。

9.サウジアラビア、自動飛行の中国製「空飛ぶタクシー」実用化へ。巡礼者向けに計画(6/18)

サウジアラビアで、イスラム教徒の「ハッジ」のために自動飛行の空飛ぶタクシー(エアタクシー)を実用化する計画が明らかになりました。

ハッジとは、世界中のイスラム教徒が年に1度、西部のメッカにある聖地を訪れる大巡礼のことです。サウジアラビアでは、毎年ハッジによる二酸化炭素の排出や大量の廃棄物、水やエネルギーの消費により、環境問題が深刻になっています。

そこで注目を浴びているのが、電動エアタクシー。エアタクシーを導入すれば、巡礼者はサウジアラビア第2の都市・ジッダとイスラム教最大の聖地であるメッカを20分以内で移動できるようになるとのことです。

このプロジェクトにおいて、車両は中国EHang(イーハン)のeVTOL「EH216-S」を使用することが予定されています。12日には実用化に向けた試験飛行が行われ、運輸・物流サービス大臣のほか副大臣やGACA社長、関連団体の代表者などが見学するなど、実用化に向けて着々と準備が進んでいます。

サウジアラビアは、自動運転をはじめとする先進技術を積極的に取り入れることで知られている国。巡礼のための自動運転エアタクシーの取り組みは、世界でも前例を見ない革新的な取り組みです。

少し意外な目的で使用されることとなった、自動運転エアタクシー。実用化はいつになるのか、引き続き注目していきたいところです。

10.イスラエル・AIR、物流市場向け無人eVTOL機「AIR ONE Cargo」を発表(6/19)

イスラエルで設立された空飛ぶクルマの製造メーカー・AIRは19日、新しい無人飛行機「AIR ONE Cargo」を発表しました。貨物運搬に特化した機体であり、250kgの荷物を運ぶことが可能です。

AIRはすでに個人向けのeVTOL「AIR ONE」の最初の貨物機を納入しており、予約台数も1,170台を超えています。「AIR ONE Cargo」も昨年から複数の契約を獲得しており、2024年から2025年前半にかけて、引き続き受注を続ける予定です。

AIRのCEO・ラニ・プラウト氏は「この機体がさまざまな用途に対応できる」とコメントしています。

プラウト氏:550ポンド(250kg)のペイロードを搭載しながら垂直に離着陸できる全電気式のAIR ONE Cargoは、1回の充電でエアワンの有人旅客型に匹敵する速度で実用的な長距離飛行が可能です。

個人用eVTOLですでに注目を集めている空飛ぶクルマ開発会社「AIR」。商用機体でも受注を集め、成功をおさめることができるのか注目が集まります。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

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HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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