"桜は今年も咲く" 桜井広大コーチへのインタビュー ブレイバーズ通信2024年4月号
華々しい経歴の裏にあった苦労
―ブレイバーズでの1年目を終えた。昨季を振り返ってみると?
独立リーグからNPBに行く選手なんて、ほんまに一握りだと思うんですよ。厳しい世界なんで。その一握りになるためには、順位と個人成績が何よりも大事なはず。昨季はそれが伴っていないシーズンだった。だから選手たちには、もっと危機感をもってやってほしいですね。
―桜井コーチ自身は、PL学園から阪神に入団するという華々しい経歴の持ち主だ。
そんなことないです。こう見えても結構、苦労してますよ。だからこそ、ブレイバーズの選手たちには、夢を追いかけてほしいんですよね。諦めてないからこそ、ここで野球を続けるとことを選んでいると思うので。
―どういった場面で苦労したのか?
高校時代は入学から1年間、雑用ばっかり。野球はほとんどできず、生きるだけで精一杯でした。そういう時代やったんですよね。阪神タイガースでは5年間、ずっと二軍でした。金本さんやマートン、赤星さん…。高い壁に阻まれて、結果を残しても出られない日々が続きました。つらくて長かった。それでも野球が好きだからこそ、何とか続けてこられました。だから今の選手たちにも、自分が人生をかけられるような“好き”を見つけてほしいですよね。
それでも最高だった現役生活
―その苦労が実り、一軍でもチャンスを掴んだ。
絶対に二軍には戻るまいと、とにかくがむしゃらな日々でしたね。4万人ものファンが、自分の名前を呼んで応援してくれている。全員が自分のことを見てくれている。それに応えてサヨナラヒットや決勝ホームランを打つ――そんなやりがいのあることは他にないですよ。
―現役時代を改めて振り返ると。
苦しかったからこそ、良い現役時代だったなと思います。しんどい時間があるからこそ、幸せな瞬間というのがより輝くんですよ。悔しいと思うからこそ、もっと頑張れるんです。悔しくて眠れない日もあれば、逆に活躍した興奮で眠れない日もありました。
―PL学園のOBたちも今は指導者として活躍している。
同級生なんか楽天の監督ですよ(※今江敏晃さんのこと)。すごいよね。年明けに会ったときには、他のOBたちと一緒に応援しに行くって言いましたよ。
「これからも野球に恩返し」
―コーチとして、指導の際に心がけていることは?
長所を伸ばすこと。短所を直したいという気持ちも分からなくもないんですが、それはもうちょっとレベルが上がってからの話だと思います。他に比べて突き抜けている部分がないと、関西独立リーグの選手たちはプロに行けないですから。たとえ150キロ出ししたとしても、NPBに入るのは難しい。160キロ出さないと声はかからないんです。
―コーチとして見た今の選手たちは?
諦めがはやいですよね。情報がたくさんあるからだと思う。でもそれが悪いこととは限らないです。試行錯誤は大事ですし、僕のやり方が正解でもないので。ただもっと質問してほしいですよね。元NPBの指導者たちがいるのが、関西独立リーグの良いところだと思うので。チーム関係なしに、どんどんアドバイスを求めてほしいですね。
―今後はどういう道を歩みたいのか?
野球に支えられてきた人生なので、少しでも恩返しできたらなとは思っています。今でも、こうした形で野球に関わらせてもらっているのは、すごく幸せなことだと感じていますね。
取材後記
PL学園から阪神タイガースとスター街道まっしぐら、その桜井も気づけば40歳だ。「結構、苦労してますよ」と語ったその姿には、かつて満員の甲子園を沸かせた“選手・桜井広大”からの、時の流れを感じずにはいられなかった。しかし取材が終わると、「意外に良い話するでしょ」とニヤリ。いたずらっぽく笑うその表情からは、かつての野球小僧の姿が垣間見えた。
(このインタビューは2024年2月29日に行われました)
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