久保 康友 選手へのインタビュー ブレイバーズ通信 2022年4月号
昨季3位に終わった悔しさをバネに、開幕へ向けて必死に練習する若い選手たち。2月17日(木)の全体練習では、そんな若武者たちに混じって、一人で黙々と練習に取り組む久保選手の姿がありました。
NPBでは、ロッテで新人王を獲得。阪神では2010年に14勝。横浜では2014年に最多勝争いを繰り広げたという、輝かしい実績の持ち主でもあります。しかし、本人は自分の成績など、どこ吹く風といったご様子。飄々と野球を楽しむ久保投手の現在地を皆様にお伝えします。
久保選手へのインタビュー
「インターネットで見つけたブレイバーズ」
――数ある選択肢の中で、兵庫ブレイバーズへの入団を選ばれたのはなぜですか?
(久保)自宅から一番近かったので(笑)。僕の今の目標は海外でプレーすることです。ベストな状態でそこに行くことができるように、練習場所を提供してくれるチームを国内で探していました。あと家族との時間も大事にしたいので、参加は平日のみにさせてください!って。沖縄のチームには「その条件は呑めません」って断られました(笑)。
ブレイバーズの存在自体、それまで全く知らなかったのですが、ネットで調べて見つけました。僕から電話して「この条件で入れてもらえないですか?」って頼んだら、すんなりOKしてくれたので入団を決意しました。
――体の状態はベストなものに近づいていますか?去年6月の横浜スタジアムで行われた始球式では、140キロをマークしていましたが。
(久保)一進一退ですね。休日は練習できないので、その分も含めて平日の練習を必死にやっています!
実はあの始球式の時も、事前に結構練習していました(笑)。海外でまたプレーするために、最速で140キロ中盤ぐらいのストレートを投げることができる状態へと戻したいですね。
「海外に行く理由は新しい世界が見たいから」
――なぜ海外でのプレーにこだわるのですか?
(久保)面白いからです!未知の環境に飛び込むことが大好きなので。
僕が行った国の一つ、メキシコでは、給与未払いに文句を言った選手は、次の日にはクビにされていました。日本じゃ想像もつかないことが平然と起こっていましたから(笑)。警察官が恐喝したりするんですよ。
そういう環境に大半の人は恐怖を感じてしまうのでしょうが、僕は「おもろいな」って思ってしまう変わり者なんです(笑)。
一口に「海外」って言っても、それぞれの国に、それぞれ異なる野球の形があると思うんですよ。その全てを自分の目で直接見てみたいですね。日本の野球は十分満喫したので。
――では兵庫ブレイバーズでのプレーはあまり見ることができないのですか?
(久保)そんなことはないですよ。求められる場面があるなら、いつでも投げるつもりです。ただ、若い子たちが出場する機会を奪うようなことは絶対にしたくないですね。
「若い選手の出場機会は奪いたくない」
――若い選手たちとコミュニケーションは頻繁にとっているのですか?
(久保)結構話していますね。入団会見でも申し上げたように、僕をうまく利用してほしいです。質問してくれた若い選手たちには、色々なアドバイスを伝えています。
――そんなブレイバーズの選手たちの中でも、久保さんが特に有望だと思う選手はどなたですか?
(久保)具体的に誰、という選手はいないです。選手全員がプロ入りできる能力を持っていると思っています。
当然のことですが、ブレイバーズの選手たちにはプロと比べると、明確な弱点や粗削りな部分がたくさんあります。しかし驚くべきことに、彼らはそんな状態でも、自分のプレーを形にすることができています。このことは、彼らの秘めているポテンシャルが、とても凄いものであることを示しています。
プロと違って環境的には恵まれていない部分も多いですが、ちょっとしたきっかけさえあれば、その短所を改善することができると思います。そしたらプロ入りは十分可能でしょうね。そのためにも、若い選手たちにはもう少し一分一秒を大切にしてほしいです。「余裕があるなぁ、もっとやればいいのに」と感じてしまう部分もあります。
「スポンサーへ感謝する気持ちを持ってほしい」
――入団会見では「スポンサーに対する感謝の思いを、若い選手たちにも持ってもらいたい」と話されていましたが?
(久保)環境的には恵まれていないかもしれないけど、スポンサーの方たちは必死にやられています。川崎さん(球団代表理事)なんか、いつも色々な人に頭を下げていますよ。そういう姿を傍から見ていると、やっぱりブレイバーズの選手たちは、それに感謝しなきゃいけないなと思います。
僕が若かったときには、周りでサポートしてくれている人を気遣う余裕は無かったです。だからこそ、ブレイバーズの若い選手たちには、周囲へ感謝の気持ちを示すことができるようになってほしいですね。
――三田という街の印象はどうですか?
(久保)良いところです。僕の出身である奈良県橿原市もそうだったんですけど、緑が豊かですね。こういう落ち着いた雰囲気の町は好きです。空気も綺麗ですし。
「成績に興味は全くない」
――関西独立リーグでどれぐらいの成績を残したいですか?
(久保)特に目標は無いですね。自分の成績について、興味が全く湧かないんですよ。
――そうなのですか!?
(久保)変わっているなと言われてきたんですが、NPBの頃からそうでしたね。
「あと3勝すれば100勝なのにもったいない!」とか。「別に100でも97でも何も変わらないのに」って、逆に僕は思ってしまうんですけど。
――ブレイバーズは今年リーグ優勝を目指していますが?
(久保)正直、チームの勝ち負けにも、あまりこだわりが無いですね。
プロ1年目で日本一になったときは、めちゃくちゃ嬉しかったですよ。でも、それ以降は勝てない時期が続き、僕もそれにイライラして、自分のプレーにまで影響が出るようになりました。だからチームの勝敗についてのこだわりを捨てました。自分の力でどうにもならないことに、僕が一喜一憂しても仕方ないって。
でも2005年の日本シリーズでは投げてみたかったですね。あの時は、第5戦に先発する予定だったんですけど、阪神があまりにも弱くて4試合でストレート勝ちしてしまったんですよ。今でも恨んでいますよ(笑)。
「FAで横浜に行ったら『なんでこのチームに来たんや』って驚かれた」
――NPB時代はどのようなことが印象に残っていますか?
(久保)華やかではあった分、色々な制約が多かったですね。「プロ野球選手はこうあるべきだ」みたいな。僕はそういうのが苦手でしたね。
2013年オフにFAした時には、条件面でも待遇面でもかなり良かった阪神のオファーを断り、DeNAに入団しましたね。「新しい球団やし、なんか面白そう」という理由だったのですが、当時の高田繫GMには「なんでうちに来たんや…」って驚かれました(笑)。
「僕が大事にしているのは”面白さ”だけ」
――成績は気にしないとおっしゃられていましたよね。では久保投手は何を大事にプレーされているのですか?
(久保)“面白さ”だけですね。
僕の考えでは、新しい環境に飛び込めば飛び込むほど成長できるんですよ。自分の目を通して、未知なるものに触れる体験。慣れない環境で、手探りながらも一つ一つ課題を克服していく過程。
こういった世間からみたら憂鬱かもしれないことが、僕にとってはすごく面白く感じるんですよね。
――その「面白さ」を求めて、海外でのプレーを希望していると?
(久保)そうです。オファーがあれば、シーズン途中でも海を渡るつもりです。国によっても、求められるレベルの違いはありますから、まだ身体が動く今のうちに、メキシコみたいなレベルの高い国には行っておきたいですね。
――最後にファンの皆様へ一言お願いします。
(久保)こんな感じでやっているので、ブレイバーズのファンの皆様には「怒られるんちゃうか」と思っている所もあります(笑)。
ただ、今までやってきたように、所属チームのためにベストを尽くします。開幕をベストな状態で迎えることができるように、必死に練習していますので、これからも応援よろしくお願いします。
(このインタビューは2022年2月17日に行われました)